料理を盛りつけするときに、確認の意味で、「盛り方決まっていますか?」とか「どういうふうに盛りますか?」と、作った人に聞くときがあります。すると、「決まってないよ」とか「自由でいいよ」という答えが返ってくることが多いです。

 「自由」といわれるのが、いちばんわかりにくいと思います。自由といわれたからといって自分のやり方で盛りつけると、たいていは直されます。盛りつけをした側からすると、「自由って言ったじゃないですか」という気持ちになりますが、仕方がありません。

 

 自由といっても、相手のものさしの範囲内かどうかが問題なのです。相手のものさしから外れないなかでの自由だということです。

 料理の盛りつけに決まりはないですし、基本的には自由だといえます。料理がおいしそうに見えればそれでいいのです。しかしこれは建て前であって、決まりというかルールはそれなりにあります。暗黙のルールというか、いちいち言わなくてもわかるでしょ、みたいな感覚です。いまの時代にいちばんそぐわないもので、なくしたほうがいいのかもしれません。

 

 盛りつけのときに「自由でいいよ」と言われたら、器の中心に寄せて、高さを意識して盛るといいと思います。器の真ん中にすべての食材を持ってきて、重ねるように盛ると立体感がでて、きれいに見えます。

 いろいろな食材が近くに寄っていることになるので、色合いもしぜんによくなります。器の真ん中に盛りつける方法は、かんたんで、見た目のよさもわかりやすいので、盛りやすいと思います。

 

 盛りつけでむずかしいのは、平面的に、ランダムに並べたりするような方法です。この盛り方は、成功すればモダンアートのようで美しいと評されますが、失敗すると料理じたいが貧弱にみえるので、わるい印象をあたえてしまいます。

 平面的に盛るときは、食材の色の数が多いことが大事です。それこそ絵を描くような感覚で、色の配置を考えていくといいと思います。

 

 色のほかには、切り方や食材の形を工夫することです。ひとつの皿の中に、いろいろな切り方の食材があると、料理のなかに「動き」がつけられます。同じ切り方ばかりだと整っているようにはみえますが、おもしろさはありません。切り方を変えて食材の形に変化を加えることで、皿の中がにぎやかになってきます。

 

 特徴のある形の食材を使うのも、変化をつけるのには好都合です。オクラやアスパラガスは似ている食材がなく、一目でわかる特徴的な形をしています。色もきれいなので、料理の見栄えをよくするのにいい食材だと思います。