職場にある自動販売機には、レッドブルが入っています。一本の値段が200円で、たいへんお買い得な商品であります。近所の安売りス-パーでも税込み205円ですし、コンビニではもっと高くなります。190円で売っているレッドブルは見たことがないので、おそらく、いちばん安いレッドブルかと思われます。

 

 自動販売機の商品は、定期的に入れ替えがありますが、レッドブルがなくなることはありません。それなりに人気があるからいつもあるのでしょうが、実際にレッドブルを飲んでいる人を見たことがない気がします。飲んでいる人を見たことがないのですから、買っている人なんて見られるわけがないといえます。

 ゴミ箱のなかがレッドブルの空き缶で埋まっている、という状況もありません。そこから考えると、レッドブルに、それほど需要があるとは思えないのです。

 

 それなのに、レッドブルがつねにあり続けるのは。会社からのメッセージなのかも、と思っています。どんなに忙しくて、つらくなったとしても、レッドブルがあるから大丈夫。レッドブルから翼をさずけてもらって、ますます仕事に励め、というニュアンスだと思います。

 

 私は、仕事を手伝ってもらったりしたときに、相手へのお礼としてレッドブルを買ってもっていくことがあります。そうすると、相手からはだいたい、「レッドブル飲んで、もっと働けってこと?」と皮肉のような冗談をいわれます。

 私がレッドブルを選ぶ理由は、ほかのジュースよりも値段が高いからです。そこに私の『想い』があるわけですが、あまり届いてないようです。

 

 エナジードリンクや栄養ドリンクは、もらっても、あまり喜ばれないものなのかもしれません。もらったものが、お酒やジュースなら、「おいしく飲んでね」とか「ゆっくり休んで」みたいな素直な気持ちを受け取ることができます。お酒やジュースは、ただ、「おいしい」だけで、そこでおしまいだからです。

 

 エナジードリンクや栄養ドリンクを、リラックスするために飲むことは少ないように思います。それを飲むときは、そのあとに何かやらなければならないことがあるときです。燃料補給のようなものですから、「もっと働け」という意味合いが出てしまうのは、仕方がないことだといえます。

 

 私も、レッドブルをあげるときは深い意味はありませんが、もらうときは「もっと働け」といわれているように感じてしまいます。だから、職場の自動販売機にレッドブルがあり、しかも安いという事実をみると、「もっと働け」という意味なのかと、裏読みしてしまうのです。

 耳障りのいい言葉やスローガンは理想や建て前であって、結局最後は「気合いと根性」なのが、飲食業の宿命のようです。自動販売機のレッドブルを見るたびに、そう思っています。