お刺身でエビを使うとき、頭を素揚げにすることがあります。そのままつけておくのではなく、「揚げる」というひと手間をかけることで、ふだんのお刺身とはちがう印象をあたえることができます。

 食べる部分は、頭の内側の部分です。いちばん外側を覆っている殻はかたいので、揚げたあとに半分くらいはずしておいて、、内側の部分を食べやすいようにしておきます。

 外側の殻も揚げると食べられないことはないのですが、たくさん噛まないといけないので顎が疲れます。内側の部分は比較的やわらかいので、無理なく食べられます。

 

 カリカリに揚げたエビの殻は香ばしく、甲殻類特有のうまみもあります。たくさん食べたいとは思いませんが、料理のアクセントとしての効果はあると思います。

 エビやカニといった甲殻類は油と相性がいいので、おいしさが増す揚げるという調理法は適しています。ただ、難点なのは、揚げ油が汚れることです。揚げ物をすれば油が汚れるのは当然なのですが、エビやカニはほかの食材よりも汚れるのです。とくに殻付きで揚げると、破壊力がちがいます。油の価格はかなり上がっているので、油を使う回数は増やしたくないのです。

 

 甲殻類のうまみ成分や香りが油溶性なので、揚げ油によく溶けるのです。うまみ成分は糖類ですから、溶けだしたものが高温の油によって焦げたようになるのかもしれません。

 甲殻類をゆでたときも、お湯がすごく汚れます。お湯が黒っぽくなって、甲殻類のエキスが充満しています。うまみたっぷりの甲殻類なのですから、おいしい出汁が出ていてもよさそうな気がするのですが、そうはならないのです。

 

 甲殻類の殻の主成分はキチンという多糖類です。多糖類は、単糖が10個以上つながった炭水化物のことを指します。

 多糖類は、デンプンや寒天と同じです。ですから、とろみをつけるとか、ゼリーのように固めるといった特性があります。とろみをつけるものと同じだといわれると、油や水が汚れるのもわかる気がします。とろみや粘りがあるものは焦げやすいといえるからです。焦げやすいということは。それだけ油を汚す可能性も大きくなるということです。

 

 油が汚れると同時に、甲殻類のにおいがつくのも気になります。新しい油で甲殻類を揚げると、一瞬で甲殻類の風味がついてしまうのです。

 そうなると、野菜などは揚げられませんし、てんぷらを揚げるのも迷うところです。見た目は新しいきれいな油なのに、甲殻類のエキスが染み込んでいるのです。甲殻類のエキスは強力ですから、そのあと何を揚げてもエビやカニの風味がついてしまいます。エビやカニはあまり揚げたくないと思うのが本音です。