調理師になりたてのころは、仕事で作った料理をを家でも作っていました。ひとりでいちから作ってみないと、料理の成り立ちや食材の特徴を理解することができないからです。調理師が仕事で料理を作るときは、その料理の一部分であることがじつは多いのです。

 魚や肉の下処理をし、加熱調理できるように切り分ける係はブッチャーとよばれます。ブッチャーからできてきた食材を加熱し、ソースを仕上げる係や、付け合わせの野菜料理を担当するもあります。ほかには、サラダなどの冷製料理全般をあつかう係などがあります。

 

 呼び方はその職場によって多少のちがいがあると思いますし、厨房の人員によっても、係の分け方は変わってきます。人が多ければ、さまざまな係に割り振ることができます。逆に少なければ、担当係を重複することになり、仕事もその分多くなるといえます。

 仕事が多くなることはマイナスにみえるかもしれませんが、料理に関われる部分が増えるともいえます。関わる部分が増えることは、覚える仕事と作業も増えるわけですから、仕事の能力を上げるには良いことといえる面があります。

 

 著名なホテルや多展開しているレストランなどの大きな企業は、多くの従業員をかかえることができます。人が多いと、係の中の人も多くなり、その分ひとりでする仕事は少なくなります。仕事の内容も、その係のものという限られたものになるので、料理を作っているという感覚がなくなってしまう場合があります。

 ホテルの宴会場では、料理提供するゲストの数が多くなります。そうすると、用意する食材の数も多くなり、食材をを切り分ける人は切るだけの作業、肉や魚を焼く人は焼くだけの作業のみ、ということもめずらしくはないのです。

 ひとつの仕事を突き詰めて覚えることができる点は良いかもしれませんが、料理のなかの、そのほかの仕事を覚えづらいところがあります。

 

 個人経営のレストランでは、調理師をたくさんかかえることはむずかしいので、少ない人員で、多くの仕事をこなすことになります。仕事の量は多いかもしれませんが、内容はそれだけ濃いともいえ、やりがいのある仕事といえそうです。

 仕事の量が多くなると、目の前の作業をただこなすことに懸命になってしまうことがあります。多くの仕事をこなすことは時間との戦いを意味しますから、とにかく急がなければ、という気持ちになります。急ぐと、それだけ作業が雑になったり、細かいところを気にしなくなります。

 

 細かいところというのは、食材の切り方や料理の見た目だけではありません。食材の質や衛生面に関することも含まれます。人が口にするものですから、料理の味や見た目よりも大事なところともいえます。作業を急ぐあまり、衛生管理などがおろそかにされるのは問題発生につながってしまいます。

 大きな企業で働くのと個人店で働くのとではちがいがあり、それぞれに長所と短所があります。どちらがいいかを一概に決めることはむずかしいといえそうです。