春に旬をむかえる食材は、出回っている時期が短いように思います。菜の花やフキノトウは、4月を過ぎると手に入りにくくなります。春の食材を代表する山菜類は、若芽やつぼみが可食部位です。ですから、大きく育ってしまうとかたくなってしまい、食べられなくなります。

 山菜類が食べられる期間は、その年の気象条件によって変わってきます。気温が上がる時期が早く、晴天がつづくと、植物も成長が早くなるので、食べられる期間は短くなってしまいます。

 逆に雨が多ければ、食材としての質が落ちてしまいます。質の良いものが出回らなくなると、しぜんに出荷量も少なくなります。日本列島は南北に長いので、気候に幅があります。

 

 西日本で出荷が終わると、北日本で採れたものが出回るのです。それによって、春の食材は、ある程度長い期間、供給されることになります。それでも、ほかの食材にくらべると、期間限定であることには変わりなく、そこが山菜類の付加価値でもあります。

 フキノトウはとくに、おいしく食べられる期間が短いと思います。フキノトウは、小さいつぼみのものがやわらかく、苦みも少なくなるので、食べやすいといえます。つぼみが開いてしまうと、大きく成長し、かたくなり、苦みもクセもつよくなってしまいます。

 フキノトウの花の部分を包んでいる、ガクのようなものは苞(ほう)葉といいます。苞葉も小さいものは食べやすいですが、大きく育つとかたい葉になり、食べるのには適さないものになります。大きくなったフキノトウは、そのままでは食べにくいので、加工、調理します。

 

 フキノトウを使ったフキ味噌は、ごはんにぴったりの料理です。大きく育ったフキノトウはアクがつよいので、いちど湯がいてから使用します。湯がいたフキノトウは細かく刻んで、油をしいた鍋で炒めます。油をしくのは、苦みがつよい山菜類との相性がよいからです。うまみやコクが増し、苦みもやわらかくなります。

 焦げないように、中火で炒め、しんなりしてきたら、味噌とみりんと酒を合わせたものを加え、加熱していきます。水分がなくなり、全体が味噌でまとまれば完成です。好みによっては砂糖を加えてもいいと思います。

 フキノトウがもつ、クセのある苦みと味噌がうまく調和し、特徴的な味に仕上がります。フキ味噌は、肉や魚にのせて、焼き物とすることもあります。同じ春の食材であるタケノコを焼くときにも、フキ味噌はよく合います。

 

 このほか、フキ味噌といちばん合うのは、なんといっても白いごはんです。フキノトウのほろ苦さと味噌のうまみが、ごはんの淡い甘さと合います。油を使っているので、ボリューム感もあり、フキ味噌だけでもおかずになります。

 春のはじまりを告げるフキノトウは、印象的な見た目が、いちばんのセールスポイントであることはたしかなことです。加工されて見た目が変わっても、つよい個性を発揮して、春を感じさせられる、価値ある食材です。