私の記憶ちがいだったのかどうかわからないのですが、キウイフルーツは7面で皮をむくと聞いたことがあります。ほかの調理師に聞いてみても、それは聞いたことがない、といわれるのですが、私の頭の中にはずっと『キウイは7面』と刻み込まれているのです。

 いつ、どこで、教わったかは忘れてしまっていて、言葉だけが残っています。だからといって、ふだんから7面になるように皮をむいているかというと、そうでもないのが事実ではあります。

 

 西洋料理では、シャトーむきといって、ニンジンやジャガイモを6面に面取りして、ラグビーボールのような形にすることがあります。日本料理でも、サトイモやカブは六方に、6面でむきます。

 6面は左右対称でおさまりがよく、きれいに成形されているようにみえます。ですから、7面に皮をむくというのは、ほかに例がなく、どうしてキウイフルーツだけ7面になるのか、私も不思議に思います。

 

 実際、キウイフルーツを7面にむくと、アンバランスな感じで、自分でやったにもかかわらず、やりなおしたくなります。キウイフルーツの大きさからいうと、7面に皮をむくことは、やりやすい気はします。

 6面でむこうとすると、1面の幅を大きくしないといけないので、その分、包丁を大きく、深く入れないといけないのです。包丁を深く入れると、皮があつくなり、可食部分を取ってしまいます。むきやすさの点から、キウイフルーツは7面にむけばいい、と私は教わったのでしょうか。

 

 キウイフルーツの皮むきについてネットで調べると、意外なむき方がありました。それは湯むきです。湯むきするものといえば、トマトが思い浮かびます。フルーツではモモを湯むきにしたことはあります。

 しかし、キウイフルーツを湯むきにするのは、はじめて知りました。おもしろそうなので、早速、キウイフルーツを買ってきてやってみました。

 やり方はトマトの湯むきといっしょで、まず、沸騰したお湯の中に入れます。しばらくしたら、取り出して、氷水で冷やしてから皮をむく、という手順です。キウイフルーツの皮は薄いですが、固そうなので、どれくらいお湯に入れておくのかがポイントです。

 

 長い時間入れておいてもいい気がしますが、火が通ってしまったら意味がありません。最初は様子見で30秒くらいお湯に入れました。しかし、30秒では足りなかったようです。きれいにむけず、すこしだけしかむけませんでした。

 これはけっこう入れておいて大丈夫だな、と私は思って、つぎは1分くらい入れっぱなしにしました。すると、今度は、入れすぎだったようで、皮に実がくっついてむけました。そのため、キウイフルーツの表面はザラザラになってしまいました。

 トマトでもそうですが、湯むきはお湯の状態や、食材の熟し具合によって、うまく仕上げるには時間の微調整が必要です。

 スルッときれいに皮はむけませんでしたが、キウイフルーツを湯むきできることはわかりました。かたいキウイフルーツのほうがやりやすいように思います。なめらかな表面で、まんまるにむけたキウイフルーツは新鮮で、見栄えがすると思います。