どんなジャンルの料理であろうと、日本にいるかぎり、白いごはんとはなれることはできないと思います。営業するかぎり、毎日ごはんを炊く業務が存在します。

 白いごはんは、とくべつ大きくメニューに載っているわけでもなく、値段が高いというものでもありません。料理のなかで、白いごはんをいちばん期待しているお客様も、いないのではないかと思います。

 だからといって、白いごはんをないがしろにしていいかというと、そうではありません。むしろ、白いごはんに対するお客様の目はきびしいといえます。 

 

 ごはんは身近な食べ物ですから、味や品質を計るものさしを、お客様一人ひとりがもっているのです。それぞれものさしが違ううえに、独自のこだわりもありますから、白いごはんでお客様を満足させるというのは、意外とむずかしいことだと思います。

 そのようなことから、毎日ごはんには気を遣い、つねに良い状態のものを提供できるように、厨房の調理師は準備しています。

 宴会場はともかく、レストランでは、お客様の来店人数は日別で変化します。厨房では、その日の予約数や、人の流れを予想して、準備するごはんの量を決めます。お客様が急に何組も来店され、ごはんが足りなくなった、ということがないように、多めに炊いておくことが必要です。ごはんは5分や10分で出来上がるものではないですから、前もって準備しておかないと間に合わないのです。

 

 ですから、ごはんは毎日あるていど残ってしまいます。たとえ1人分であっても、ごはんが足りないとなると、迷惑をうけるのはお客様です。お客様を不快な気分にさせないために、多少のムダは仕方がないと思います。

 ムダといいましたが、そのまま廃棄すると、ほんとうにムダになってしまいます。残ったごはんは冷凍して保存し、まかないで食べたりします。しかし、まかないだけで、すべて食べきれるわけではありません。

 そのため、ごはんを再利用するアイデアが必要となります。そのまま温め直して、白いごはんとして提供することはむずかしいと考えます。百歩譲って丼のごはんとしては使用できるかもしれませんが、できればやりたくはありません。

 

 洋食では、炒めてしまうのがてっとり早い方法です。チャーハンやドライカレーにすると、味もプラスされ、かんたんにおいしくできます。ごはんをケチャップで炒め、オムライスの中身にすることもあります。オムライスがきらいな人はあまりいないので、ランチのメニューに入れると、うまく消費されます。

 オムライスからもうひと手間かけると、ドリアが作れます。ドリアはケチャップライスのほかには、ベシャメルソースとチーズがあればいいので原価も高くはありません。原価も食材も少ないですが、見た目のはなやかさやボリューム感があります。みんな大好きなグラタン味ですから、失敗はないと思います。

 

 ケチャップライスの上をベシャメルソースで覆い、その上にチーズをのせて、オーブンで加熱すれば出来上がりで、めんどうな作業もありません。ベシャメルソースをカレーにすれば、カレードリアにすることができ、アレンジがきくのもおもしろいと思います。

 ドリアは宴会プランなどの、最後の食事としてメニューに加えると喜ばれます。湯気があがり、チーズやベシャメルソースがクツクツとしている様子はシズル感満点です。

 こうして考えると、アイデアしだいでごはんの可能性はまだまだ広がりそうな気がします。ごはんとは、切っても切れない絆を感じてしまうのでした。