日本語というのはすごい言葉で、どんな外国語も、すべて日本語で表記できてしまいます。しかし、外国語で発音された言葉を、日本語の文字におきかえるときに、聞き取り方によって、使われる文字にちがいがあらわれることがあります。
料理に関する言葉でいうと、ブッフェがそれにあたります。ブッフェはそれぞれのホテルやレストランによって、表記され方が異なるのです。
ブッフェはbuffetで、英語もフランス語も同じスペルのようです。辞書をひくと、日本語ではビュフェ、ビュッフェと書かれています。
ブッフェといえば、ホテルがイメージされるので、それぞれのホテルがどう表記しているのかみてみることにしました。
日本では、歴史あるホテルを御三家と称しています。ブッフェが輸入されたであろう明治のころに、実際の現場であったホテルたちですから当事者であるともいえます。ですから、御三家のホテルが、なんと表記しているかは影響が大きいと思うのです。
各ホテルのホームページから、buffetをどう書いているか見ていきました。帝国ホテルはブフェ、ホテルオークラはブッフェ、ホテルニューオータニはビュッフェ、と見事に三者三様分かれました。これは偶然なのか、どうなのかわかりませんが、おもしろい結果だと思います。
うちの近所の、地方のホテルをみてみると、ブッフェとビュッフェのどちらかに分かれるようです。数にかたよりがあるようにもみえなくて、半々という感じです。
buffetの表記の仕方のちがいで、オークラ派かニューオータニ派か、二種類に分かれることが判明しました(笑)。表記のちがいで、どちらのホテルにルーツがあるかがわかる、ということはないと思いますが、どちらか二つに分かれるというのは興味深いと思います。
帝国ホテルだけがブフェ、と表記されているのは気になります。帝国ホテルは唯一無二の孤高の存在、というのが、ブフェの表記にも表われているようです。
ブッフェの表記に関連して、外国語を日本語で書くときに使われることのある『ヴ』についても調べました。ブッフェをヴッフェと表記しているところはなかったのですが、ブとヴで使い方がちがうのかが気になったのです。
調べてみると、外国語のV音を表現するときに、ヴを使うようになっていることがわかりました。もともとは『バ行』で表記すると決められていたのですが、1991年に国語審議会によって、ブでもヴでもどちらでもよい、と変更されました。ちなみに、新聞ではヴは使わないことになっているそうです。
外国語を日本語にするとき、V音をヴと書けばいい、と最初にいった人は福沢諭吉先生です。
明治になり、西洋文化が入ってくる場面には、いたるところに福沢諭吉先生が現れます。調べていて、この名前がでてきたときは、すこしうれしくなりました。