地物のアスパラガスが出回りはじめました。十分な太さで、身がつまっている感じは、旬の野菜であるという自信がみなぎっているように思われます。

 アスパラガスの持ち味である、甘みと苦味の調和のとれた味からは、食材として完成度の高さを感じます。クセはあるともいえますが、それほど強いわけではないので、どんな料理にも合わせられます。

 ゆでると緑色がよりあざやかになり、サラダなどによく合います。味が強く、食感もいいので、アクセントになるからです。

 

 ほかには、そのまま焼いて食べるのもいいと思います。いまごろの、太く、りっぱなアスパラガスは、下のほうだけ皮をむいて、直火で焼くのに最適です。

 表面は乾いた感じで、パリッとしますが、中はみずみずしいままで、ジューシーです。太さがあるので、中心は蒸し焼きのように加熱されるのです。

 焼くことで、適度に水分の抜けたアスパラガスは、うまみが凝縮され、イモ類のようなホクホク感も生まれます。甘い香りと香ばしさもプラスされ、素材のもつ力を存分にあじわうことができます。

 

 アスパラガスの良いところは、味のほかにも、見た目の良さがあります。表面は、さわやかな緑色で、中は白というコントラストは美しい切り口を見せてくれます。

 独特の形をした先端は、ほかの野菜にはない、アスパラガスの強力な武器であり、魅力といえます。

 あの先端の姿があるからアスパラガスなのであり、皿の中で、躍動感を表現してくれる食材として、重要な役割を果たしているのです。

 その穂先をすべてのお客様につけたいと思うと、ひとりに一本のアスパラガスを使う必要があります。アスパラガスのネックはそこなのです。

 ひとりに一本をつけると、一皿の原価が上がる、かといって穂先を半分に切ったりすると、価値観が一気に落ちてしまいます。

 

 アスパラガスの下ごしらえを大量に行うと、つい乱暴になってしまうときがあります。一本一本皮をむいて、がくを包丁でとって、とやることが多いのです。急いで、手際よく、こなさなければ、いつまでたっても終わりません。

 そうして、アスパラガスを乱雑に扱うと、穂先が折れたり、先端だけが取れてしまうことになります。アスパラガスの穂先が傷つくと、しまった・・・と、気持ちが急に暗くなります。

 先端の形が崩れたアスパラガスは、それだけで使い物にならなくなってしまうのです。あの穂先は自然が創った造形美なので、修正することもできません。折れたら最後で、どうすることもできないのです。

 アスパラガスは高級品で、長持ちする野菜でもないので、注文するときに予備をたくさん用意できません。そのため、ひとつの失敗のダメージが大きくなります。そして、そういうときにかぎって、宴席の人数が増えたりするのです・・・。

 アスパラガスはぜひ、積極的に品種改良していただきたいと思います。先端の房のようなところだけ、たくさんできるようにしてもらえると、たいへん助かります。