台千三十一話 | 台所放浪記

台所放浪記

料理とか随想とか

超売れっ子時代小説作家だった池波正太郎は、本業の時代小説の

他に色々なエッセイを書き残していて、有名なのは料理や食事

についての文章ですが、易学による人生論に関する事柄で、自分

が昔読んで覚えているものをいくつか紹介しようと思います。

 

問いかける形式の文章になってしまって、イラっとくる人があっ

たら申し訳ありません。読者の皆さんは、一般論として人間の

する善い行いと悪い行いで、結果が早く現れるのはどちらだと

思われますか?自分は後者、悪い行いの方が早く結果が現れて、

善い行いというのは目立たなかったり結果が現れにくいものでは

ないかと考えるんですけど、池波先生の易研究によると、これは

逆なのだそうです。すなわち、善い行いというのはわりと早く

結果が出て、周りの人間や自分にも早く影響が及ぶ。一方で、

悪い行いというのは、善い行いと比べて結果が現れるのがずっと

遅く、結果が出る時にはもう取り返しがつかなくなってしまって

いる場合が多いので、気をつけなければいけないのだそうです。

 

池波先生が易学と彼や周囲の人間の行動を照らし合わせてみた

ところ、悪い星に乗った時に我欲が出たり悪い行いをしてしまう

人が多いらしく、抽象論として、人間は我欲を持ってそれに固執

すればするほど幸福からは遠ざかるのだという趣旨の文章を

書き残しています。

 

この我欲に固執するというのが、台所が直近回に書いた内容と

かぶっていて、学生の頃にこういう易学からの教訓のような文章

を読んだ際は、まあまあ理解はできるし、一般論としてもそう

言って差し支えないでしょう。ぐらいに思っていたんですけど、

その後色々な見聞や体験を経てからこの話を思い出してみると、

これは確実にそうだわと。読んだ当時の自分の経験ではそこまで

読み取れませんでしたが、深い重い話だったんだなあと納得して

いる今日この頃です。温故知新。