超売れっ子時代小説作家だった池波正太郎は、本業の時代小説の
他に色々なエッセイを書き残していて、有名なのは料理や食事
についての文章ですが、易学による人生論に関する事柄で、自分
が昔読んで覚えているものをいくつか紹介しようと思います。
問いかける形式の文章になってしまって、イラっとくる人があっ
たら申し訳ありません。読者の皆さんは、一般論として人間の
する善い行いと悪い行いで、結果が早く現れるのはどちらだと
思われますか?自分は後者、悪い行いの方が早く結果が現れて、
善い行いというのは目立たなかったり結果が現れにくいものでは
ないかと考えるんですけど、池波先生の易研究によると、これは
逆なのだそうです。すなわち、善い行いというのはわりと早く
結果が出て、周りの人間や自分にも早く影響が及ぶ。一方で、
悪い行いというのは、善い行いと比べて結果が現れるのがずっと
遅く、結果が出る時にはもう取り返しがつかなくなってしまって
いる場合が多いので、気をつけなければいけないのだそうです。
池波先生が易学と彼や周囲の人間の行動を照らし合わせてみた
ところ、悪い星に乗った時に我欲が出たり悪い行いをしてしまう
人が多いらしく、抽象論として、人間は我欲を持ってそれに固執
すればするほど幸福からは遠ざかるのだという趣旨の文章を
書き残しています。
この我欲に固執するというのが、台所が直近回に書いた内容と
かぶっていて、学生の頃にこういう易学からの教訓のような文章
を読んだ際は、まあまあ理解はできるし、一般論としてもそう
言って差し支えないでしょう。ぐらいに思っていたんですけど、
その後色々な見聞や体験を経てからこの話を思い出してみると、
これは確実にそうだわと。読んだ当時の自分の経験ではそこまで
読み取れませんでしたが、深い重い話だったんだなあと納得して
いる今日この頃です。温故知新。