台八百七十八話 | 台所放浪記

台所放浪記

料理とか随想とか

「くらいよー、せまいよー、こわいよー」というのは、

漫画【うる星やつら】の登場人物・面倒終太郎の台詞で、

閉所と暗所の恐怖症であるものの、女性と一緒にいる時だけは

大丈夫という設定になっていました。

誰しも恐怖症のようなものがあると思いますが、自分の場合は

暗所、これは大人になってからは怖くなくなりました、

と高所恐怖症で、高所の方は今でも苦手です。先日放送の

【ダーウィンが来た!】で、ハヤブサの狩りの模様をNYの

高層ビルから撮影した映像を見ていたら、両腕に鳥肌が立って、

足は両ももの外側がじんわりと冷えるような感覚のすくみを

覚えたので、あ、こっちはやっぱり治ってないわと。怖かった。

 

童話で暗所が苦手なのは【モチモチの木】の主人公の豆太君

ですが、史実では2・26事件の理論的指導者として死刑になった

北一輝(1883-1937)も暗所恐怖症で、夜中に起きて厠へ行く際

に、夫人に付いてきてもらわないと行けなかったという話を、

本当か嘘か不明ですが、何かの本で読んだ事があります。

この逸話が、面倒終太郎の設定の下敷きになっている可能性も

ありますね。

 

【モチモチの木】の作者は斎藤隆介(1917-1985)で、この人の

【ベロ出しチョンマ】という童話を、小学生の時に読んで

悲しかったのですが、大人になってから、これは作者が創作した

話だと知って、とても嫌な気分になりました。主人公のチョンマ

(長松の音訛)が、父の直訴に連座して、母や幼い妹と共に磔刑に

される際に、怖がる妹を笑わせようとしたという内容ですが、

大人になってから読むと、これは読者の子どもに長松の優しさを

伝える話というよりは、国のような権力への無意識の反感を

植え付けようとする意図のある物語だという気がします。

本当にあった事実を歴史として語り継ぐというのならともかく、

作り話までしてそんな。こういう作り話で子どもを騙して

自己都合で誘導しようとする大人になってはいけませんという

例として、後代にきちんと伝えていきたいと思います。