11月14日にJASRACなどの著作権団体が新たな保証制度の創設の提言を行った。それに関する資料は以下のところからダウンロードできる。
そもそもの発端はその資料にもあるが、昨年いわゆる東芝裁判で最高裁が「録画補償金制度はアナログ放送を録画源とするものであるから、デジタル放送のみ録画する当該レコーダーは特定機器等に該当せず補償金の対象とはならない」という判断を下したことによる。

この結果JASRACの受け取る私的録音補償金と私的録画補償金の額は大きく減ってしまったというのだ。そのために新たな補償制度を提案したのだ。その提言は以下の通り。

ちょっと読むと意味がよくわからないかもしれないが、複製機能を持ったものは機器であろうと、媒体であろうと、サービスであろうと補償の費用を上乗せして、その機器や媒体、サービスをする事業者から払ってもらうようにしようというものだ。
上にあげた補償金の徴収額の推移を見てみると、録音や録画の補償金がここにきて急に減りだしたのではなく、録音は2001年をピークに、録画は2010年をピークに減ってきているのだ。録画に関しては確かに2012年の東芝裁判の最高裁判決の影響が大きいようだが、録音に関してはそれ以前から減少傾向にあったことがわかる。
その収入減の対策として出されてきたのが、上に示された提言ということになる。
これに対してはさっそく「ふざけるな」という話を以下のところで言っている人がいる。
上のブログでも言われているように、「複製機能があるものはすべて対象」というのはどうも乱暴な話である。たとえばハードディスクを例にとっても、著作権のある音楽や動画を入れているというものは比較的少ないのではないだろうか。特に会社で仕事で使用しているハードディスクには入っていない。そんなものまで著作権に関連しているということでお金を取られるのはどうも腑に落ちない。
一方、複製機能があるもの(機器、媒体、サービス)をつくっている事業者からいうと、どうして事業者が自分たちに直接関係のない著作権料を集めないといけないのかという問題もある。コンテンツがないと複製機能があるものは売れないでしょうという話もあるが、逆に複製機能があるものがないとコンテンツも売れないのだ。事業者は複製機能があるものを提供しても利益が必ず入るというものではないのに、著作権者は損することなく確実に著作権料が入ってくる。
コンテンツを作っている著作権者、複製機能があるものを造っている事業者、そしてコンテンツを利用している消費者のいずれもが納得のいく著作権料の徴収というのはなかなか難しい。海外でもそれぞれの国によって取り扱いは異なるようだ。
今のデジタル時代には、デジタルのコンテンツを購入しないで単にコピーするというのは誰でも簡単に行えてしまう。コピーするときに著作権料を支払わないとコピーができないようにするという方法が見つかればいいのだが、それはなかなか難しい。機器を造るメーカー側からはDRMを使用した方法が提案されているが、これも完全な対策とは言えない。
世界的に見てもコピー(複製)するしないにかかわらず、複製機能があるものに著作権料を上乗せするというのは議論のあるところで、導入されない方向に向かっているようにも見える。そして今回の提案も東芝裁判の結果からみると導入は難しそうだ。
しかし、著作権料を正当に支払う良いやり方が考え出せないと、しかるべき著作権料が著作権者に渡らなくなってしまう。これはコンテンツを作成する著作権者の意欲をそぐことになるので問題だ。良いコンテンツを作成して、それで(多額の)著作権料を稼ぎ、その金を使ってまた次の新しいコンテンツを作成するという循環が回らなくなってしまうのだ。
いまのところコンテンツを複製したときに著作権料をきちんと取るという完全な方法はないと思われる。今までも抜け道がある状態で運営されていたわけで、100%完全に著作権料を取るというのではなく、「ある程度は抜けがあってもやむを得ないがそこそこは取れる」、という形で3者で折り合いをつけないといけないと思うのだが。