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同僚達が、恨めしそうに窓から空を見上げている。
大粒の雨。
せっかくの満開の桜が散り散りになってしまう。
週末の花見バーベキューの幹事がため息をつきながら呟く。
「ま、当日に晴れてくれればいいんだけどさー」
そうだねぇ、と笑いながら返事を返す。
電話が鳴る。
メール返信をする。
企画書の作成に集中する。
そうして日々は過ぎていく。
あなたがいなくても。
日々は過ぎていく。
同僚達とランチに行く。
ちゃんとお腹が空いている。
午後も仕事に集中する。
眠気が差してコーヒーを飲む。
15分だけ残業して、会社を出る。
雨は上がったけれど、風はまだ強い。
冷たいような暖かいような南風。
雨に叩かれ地面にへばり付く無数の桜の花びら。
黒い地面に描かれた桜色の銀河。
あの日見た流れていく花びらの帯。
初めてのあの日、花びらの帯の行方を知る事は出来なかったけれど。
初めから、結末は決まっていたのだ。
だから、待たなかった。
何を?
あなたが私の全てを受け入れてくれる事を。
全ての時間と、全ての事柄を。
二人でいられる時間に、ただ向かい合う事。
それだけしか寄る辺がなかったから。
何も期待せず、ただ二人で時間を漂った。
それだけで良かった。
桜の帯を踏み散らしながら駅までの道を歩いていると、久しぶりの影が私を呼び止めた。
続く