純はゲームセンターを出たあと、隼人に言われたことを考えながら、家への帰り道を歩いていた。
「好きだけじゃあどうしようも……ん?あそこでなにやってるんだろう?」
見ると、歩いている道の先に人だかりができている。どうやら、路上で何かやっているみたいだ。
「あれって、蒼太くん?」
よく見てみると、人だかりの真ん中に蒼太と真矢が立っていた。
「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。今から、パフォーマンスショーの始まりやで!!よっ、そこの兄ちゃん姉ちゃん見ていかへんか?」
「弓瀬、バナナのたたき売りじゃねぇんだから。ほら、始めるぞ」
「そうやった。ほな、ミュージックスタート!!」
そう言うと真矢は、音楽プレイヤーのスイッチを入れた。スピーカーからは、軽快な音楽が流れ、それに合わせて二人はダンスをしていく。誰かが手拍子をやり始めると、だんだんと伝染していき次第に大きくなっていった。
そんな大勢の人の中で、純は蒼太たちの姿を黙って見ていた。
「みなさん、ありがとうございました。」
「おおきに。また来てや」
二人は立ち止まってくれた人たちに、お礼を言いながら一礼した。
「蒼太くん」
純は二人に近づいて行った。
「おい純、今まで何やってたんだよ。待ちくたびれたぞ」
「え?」
「いや、弓瀬がさ、俺たちのダンス見れば純も良さを分かってくれるだろうって」
「もしかして、ずっと道でダンスしてたの?」
純は驚いた。確かにこの道は帰り道だが、帰る時間は不規則で、学校で遅くまで残っていることもある。今日だって、隼人に誘われていたので、学校から真っ直ぐ帰ってきたわけではない。
そんないつ来るか分からない純の為に、蒼太たちはずっと路上でパフォーマンスをしていたのだ。
「俺もさぁ、最初はいやいやだったけど、やってみたら超楽しくてさぁ」
「蒼太くん、確かに楽しそうだった」
「純は?楽しくなかったのか?」
「僕は……楽しそうとは思ったよ」
「じゃあ・・・・・・」
「でも、無理だよ。僕、運動出来ないし、性格も暗いから……」
純がまた、俯きながら答えた。
「だから、何やっていうんや」
横でやり取りを聞いていた真矢が、純に向かって言った。
「そら、運動出来たり、性格は明るいに越したことはない。でもだからって、ダンスをせえへん理由にはならへんはずや。大事なんは、好きかどうかってことちゃうか?」
真矢に続いて、蒼太も口を開いた。
「純。俺さ、今まで色んなことやってきたけど全然続かなかったんだ。それって本当にやりたい事じゃなかったからだと思う。俺のやりたかった事ってやっぱりダンスだったって、この前気付いたんだ。だから、お前も自分の気持ちに素直になったほうがいいと思うぞ。」
「自分の気持ち……」
「明日の朝、屋上で待ってるから、絶対来いよ」
そう純に告げると、蒼太は帰って行った。
次の日、蒼太と真矢は屋上に居た。
「おい、蒼太。昨日あのまま帰って良かったんか?」
「言いたい事は言ったし、俺は純を信じてる。」
すると、屋上の扉が開き、純が出てきた。
「純!!」
純は蒼太たちに近づいて行くと、ゆっくりと話しだした。
「……運動出来ないし、ネガティブなことも言うかもしれない。勉強もあるから、放課後も毎日は練習出来ない。それでも良いって言ってくれるなら、僕も蒼太くんたちと一緒にダンスさせてほしい!!」
今まで弱々しい言葉しか言わなかった純から、初めて力強い言葉が出た瞬間だった。
「って言ってくれてるけど、どうするんや、蒼太?」
「勿論、大歓迎だって!!」
「ありがとう!!」
三人の顔は自然と笑顔になった。
「よっしゃ、これで三人やな。せや、まだちゃんと挨拶してなかったなぁ。B組に転入して来た弓瀬 真矢や。」
「A組の早乙女 純です。よろしく、弓瀬君。」
「さぁ挨拶も済んだし、練習すっぞ」
そう言うと、三人は朝の練習を始めた。