冬
ユニフォームが完成した。
超カッコいい(^.^)
両肩のワッペンと、赤と白のバランスがバッチリで、ようやく私がメジャーリーガーになるときがきた。
ワッペンにはウイリーする天ちゃんのモチーフと、チームのオーナーである山口鉄也氏の背番号47がデザインされている。
ウイリーズというチーム名前は、私が命名したのだが、そもそもの由来は私達が高校2年になろうとしていた2000年の2月に遡る。
その日、天気は快晴だったものの、冬特有の霜がグラウンドを覆いつくし、球場での練習が出来なくなった私達は、学校から程近い根岸の森林公園へとトレーニングに出かけた。
グラウンド使用が不可能な時は、この森林公園か
[港の見える丘公園]
へと走り込むのが通例となっていた。急な坂がある丘公園に行くのと比べて、森林公園ははるかに近く、明らかな妥協メニューだった。1つ上の主将が森林公園行きのメニューを発表すると、私達は主将や先輩にバレないように握手をしたり、小躍りして喜びを分かち合っていた。
この日もいつものようにチンタラチンタラ森林公園へ走り、そこで簡単な筋トレやダッシュなどをしたあと、上級生は順次学校へと戻っていったのだが、私達下級生には主将から集合がかかり、主将を中心に半円になって話を聞いていた。
主将はいつになく真剣な眼差しで、
・この一年間、私達下級生がよく頑張ってきたという総括
・もうじき新入生が入ってくるが、先輩になる自覚を持って努力してほしいという戒め
・最後の夏を迎える上級生のサポートを今まで以上に協力してほしいというお願い
主将はこの3つについてを、実に理論整然とした口調で語った。
「このデブチンの一体どこにこんな才能があったんだろう。」
私達は主将の話に引き込まれ、ツラい一年を思い出しながら涙ぐんでいるものもいた。
皆が青春を感じていたその時、主将の遥か後方をチャリでのんびりチリリンと走っていた部長の天ちゃん先生が、いきなりウイリーしてひっくり返ったのである。
[何の障害もない平らな道で突然のウイリー]
という劇的な奇跡を目の当たりにし、私達は吹き出しそうになった。しかし主将は尚も熱い語りを繰り広げているため、皆は必死に笑いをこらえ、下を向いたり、咳込んで誤魔化したりしてその場を凌いだ。天ちゃんを背にして話をしているので主将はその事には気づいていなかった。
年が明けると、あのウイリーから10年目の冬を迎える事になる。
SMAPの言葉を借りて、
「あの頃の未来に僕らは立っているのかな?」
と質問してみれば、殆どの人間が思うような自分になれていないだろうし、変わっていった部分も多々あるのだろうと思う。
しかし仲間で集まって酒を飲めば、かならず天ちゃんのウイリーの話で爆笑となるこの関係は、いつまでも変わることはないのだと、私は確信している。
チームの結成に伴い、山口オーナーにはヘルメットやバットなどの道具一式を揃えて頂いた。
「一億…か。」
現実離れした数字に皆ため息をつきながらも、次は遠征用のバスをおねだりしようと、私達は考えている。


