“ 新・切り裂き魔 ”  ムアンタイ・PK セーンチャイムエタイジム | R I N G C H E C K !

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打撃系格闘技の練習や試合についてのブログでしたが、
現在は海外ボクシングとムエタイの記事が中心です。
知り合い・近親者向けに書いています。




我々の世代にとって “ 切り裂き魔 ” といえば

カチャスック ( パーサタン ) オーエンジャイなのですが ^

ナタを振り回すかの如き猟奇的な肘であったカチャスックとは全く違う、

最新の軍用タクティカルナイフのような機能美溢れる肘を搭載した、

最新型フォルムの “ 新・切り裂き魔 ” こそ、本記事の主役、

ムアンタイ・PK セーンチャイムエタイジム !!








以前も少し書きましたが

改めてムアンタイの肘の凄まじさについて。

一昨日のカイムックカーオ戦での戦慄の肘葬、

加えて過去の試合も研究しながら見てみましょう。






▼ ムアンタイ vs カイムックカーオ









▼ ムアンタイ vs ペットパノムルン









▼ ムアンタイ vs タクシンレック









▼ ムアンタイ 肘打ちハイライト 1









▼ ムアンタイ 肘打ちハイライト 2





一気に通して見ると本当に凄まじい …

恐るべし “ 新・切り裂き魔 ”

一瞬の斬撃でバッタバッタと斬り捨て、

次々と強豪を倒していくその姿は衝撃以外の何物でもありません。



映像を見ても分かる通り、ムアンタイの肘はノーモーション。

ムエタイの肘打ちの基本で使われる、大きく肩や腰を回して、

横あるいは斜め上から打ち下ろすような肘はまず打ちません。

軸を見ても腰の中心回転はほとんど使っておらず、

同一方向の上肢下肢を連動させた二軸動作を上手く用いています。

なので放つ肘が右か左かによって、それこそ

『 ナンバ歩き 』 のように細かくスタンスをスイッチさせています。

肘を放つ際のクイックネスの伝導は、敢えて大枠で言ってしまうと、

ジャブのように同一方向の上肢下肢を連動させている訳です。

( 実際ジャブのクイックネスの伝導感覚で縦肘を

ミットやサンドバッグに打ってみると分かります )



そしてこれはムアンタイの肘のもう一つの特徴でもあるのですが、

実はムアンタイの肘は相手をカットして流血させること以上に、

一撃で相手を倒す事を目的とした肘なんです。

( ここに来て本ブログ記事の題名を自ら完全否定 ^ )

カット目的で 肘の尖った部分を擦るように廻して打つのではなく、

最も硬い部分全体を用いて、

上記要領のモーションの小さい二軸所作で相手の顎を打ち抜き、

一撃で相手を倒す事を目的とした縦肘こそムアンタイの主武器なんです。



ムアンタイと相対する選手は誰もがムアンタイの肘を警戒する。

それでも ムアンタイは肘で相手を破壊して倒してしまう。

これだけモーションが小さい肘でも、

これだけ高い確率で相手を倒し切る訳ですから、

上記の縦肘用のノーモーションを作る二軸所作のみならず、

長年にわたりムエソークとして歴戦を重ねていく中で、

肘に特化した特異な当て勘を養っていったのでしょうね。



倒される相手選手のほとんどは、ムアンタイの肘の軌道が見えず、

何が起こったのかも分からない状況で倒されているという印象です。

( なので実際は “ 切り裂き魔 ” というより、音も立てずに殺す、

“ 暗殺者 ” といった方が言い得て妙なのかもしれません )



ムアンタイはパンチに関しても脇や肘を上げたムエタイ式ではなく、

二軸のノーモーションで打つことが多く、

蹴りに関しても肘に繋げるために腰を大部分残し、

フォローをほとんど作らない蹴り方をします。



なので 単純にナックムエとしても特異な形の選手であるし、

ムエソークとして見ても、カチャスックとも、ワンロップとも、

ナムサックノーイとも、ペットナムエークとも違う、

唯一無二、最新型のムエソークと言って良い存在なのだと思います。










そんなムアンタイですが、もちろん負ける事もあります。

ここからは ムアンタイを攻略した選手の内、二人の選手を紹介します。

まずは、現代のスーパーフィームー、センマニー・ソーティエンポ。


▼ ムアンタイ vs センマニー




今年初めのサムイ島での試合では滑る野外リング上で

足を使ったアウトボクシングが難しい状況に立たされ不覚を取りましたが、

スタジアムでの試合では何度試合をしてもムアンタイに接近すら許しません。

ムアンタイを相手にしても毎回綺麗なイケメンのままリングを降りてます ^










そして、より完璧にムアンタイを攻略した選手といえば、

現ラジャダムナン・スタジアム認定ライト級王者、梅野源治選手。


▼ ムアンタイ vs 梅野源治




梅野選手はムアンタイがライケンを取ろうとする中間距離で

チョンチョンとティープを挟んで簡単には接近を許さない。

それでも強引に入ってライケンを取ろうとするムアンタイの

両腕の隙間にアッパー、フックを矢継ぎ早に捩じ込ませて効かせる。

ムアンタイはライケンのポジション取りを優先させるので

ガードが疎かで梅野選手のパンチを貰い続けてしまう。

梅野選手はパンチを当てた隙にジャップコーなど

ムアンタイが肘を打てないポジションを先に取り、

更にはムアンタイよりも先に肘を当ててみせる !

“ 切り裂き魔を逆に切り裂く ” という離れ業を敢行 !!

そして全ての局面で為す術が無くなったムアンタイに対して、

最後はパンチをまとめてKOするという …

ムアンタイを相手にして、こんな事出来る選手、

世界中を見回してもそうは居ません。

絶え間ない努力と研究が齎す卓越した技術と戦術。

なるべくしてムエタイ王者になった選手なのだと改めて思います。










… ラストは梅野選手の話題になってしまいましたが …

本日は “ 新・切り裂き魔 ” ムアンタイについての記事でした。

駄文、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。