目が見えづらくなって、名古屋市総合リハビリセンター(以下リハセン)へ行こうと考えたのは、スマホやパソコンが、今までのように使えるようになって、社会とのつながりを維持したいと思ったからだった。

これらの訓練は、ICT訓練と呼ばれ、Information and Communication Technology (通信技術を活用したコミュニケーション)の頭文字をとっている。

視覚障害者は画面を見る事に障害があるので、ヴォイスオーバーという読み上げ機能を使って操作する方法を覚える事になる。

リハセンへの通所を開始した当初は、まだ引っ越し荷物に入っているパソコンが届いていなかったため、最初にスマホの操作訓練をお願いした。

使用するスマホは、帰国後に購入したiPhone11を使う事にした。

Appleは、アクセシビリティの選択で、ヴォイスオーバーを使用出来るように最初から設定されており、多くの視覚障害者が使用している。

iPhoneは以前から使用していたので、操作を覚えるのにイメージしやすかった。

それでも、今までは目で見て、該当するボタンを押していたが、ヴォイスオーバーでは1本、2本、3本の指を使い分け、且つタップとスワイプを使い分ける。だから全く異なる操作方法を覚える必要があった。

訓練を受け始めた時は、色々なボタン操作を覚える事が出来るか不安だった。

指を使った操作を覚えていく過程で、文字入力の訓練で、先生があまりに速く入力するのに驚き、自分も同じくらい速く打てるようになりたいと競争心に火がついた。


しかし文字入力の操作は、結構大変だった。

ヴォイスオーバーでも日本語の入力方法には、かな入力とローマ字入力がある。

最初はかな入力で試みたが、目が見えていた時でも速くは入力出来なかったので、目が見えなくなると、なおさらうまく出来ない。

そこで外人が両手の親指を使って入力していたのを思い出し、ローマ字入力する方法に切り替えた。パソコンの入力では、ローマ字入力をしていたので、スマホ上で小さくなったキー配置に、指の動かし方を慣らしていった。

もう1つ慣れなければならない事があった。

それはタイプしたい原稿を頭に置いて文字入力を進めると同時に、ヴォイスオーバーから流れる音が正しい文字かどうか確認しながら、入力していく事だった。


ある程度入力ができるようになったところで、先生からツイッターを始める事を勧められた。

自分が視覚障害者になり、気づいたことを知ってもらおうと思っていたので、この勧めは、文字入力を習得する意欲を一層引き出してくれた。

そして、今ではこのようにブログまで書けるようになった。

本当に先生の指導には感謝している。


よく「視覚障害者は目が見えないのに、なぜスマホを使っているの?」と言われることがある。

でも視覚障害者にとって、これ程便利なツールはない。

電話やメールなどのコミュニケーションとして、またネットサーフィンからの情報入手はもちろんだ。

電子書籍をボイスオーバーを使い、朗読を聴くことで読書も出来る。

LINEのビデオ通話を使い、その相手に行きたい方向を指示してもらったり、家電製品のボタン操作を助けてもらうことも出来る。

そして視覚障害者用のアプリを使い、紙に書かれた文字を確認することもできる。

これからは、スマホを介して信号も確認できるようになっていく。


あと10年もしたら、スマホもしくは同じような機能をもった道具が、もっと視覚障害者の生活を助けるだろう。

私はその利便性を最大限に活用出来るように、若い人と同じように使えるように、頑張っていきたい。