水色の街 からの続き

 

 

電車の中で、僕は2年ぶりに顔を合せた息子カイトと並んで座り、ポツリ、ポツリと話を続けました。

 

 

幸いこの日は、途中でカイトの友達や知り合いが声をかけてくることもなく、僕はカイトが学校のある駅に着くまで、10分ほどカイトと会話を交わすことができました。

 


時間は限られています。

 

 

僕はカイトに、誰が何を言ったとしても、僕はカイトのお父さんなんだということ、そしてずっとカイトのことを探していたし、ずっとカイトのことを忘れたことなんかなく、ずっとずっと会いたいと思っていたことを手短に伝え、それからずっとそういう重たい話を10分続けて、カイトを朝から落ち込ませたりショボーン、混乱させたりガーンしたくないと思い、カイトが今好きなゲームの話に話題を変えました。

 

 

ゲーム機、何持ってるの?

 

3DS?

 

ソフトは?

 

 

僕らは、僕のスマホでゲームのサイトを開いて、どのゲームを持っていて、どんなゲームが好きで、今何か欲しいゲームがあるか、といった話をしました。

 

 

ゲームの話は話しやすかったのか、カイトも明るい表情ニコニコになり、自分が好きなゲームや、何で遊んでいるかを、車内ということで小さな声でしたが、笑顔で話してくれました。

 

 

そして僕が、

 

 

「今度ゲームを買ってくるからカイトにあげるね。また来てもいい?」

 

 

と尋ねると、こくん、と頷きました。

 

 

 

学校のある駅までついたので、僕は一度カイトと一緒にホームに降り、カイトに、

 

 

行ってらっしゃい、またねウインク

 

 

と声をかけました。

 


カイトは黙って頷くと、そのままタッタッタッと早足で改札に消えていきました。

 

 


普通に話せて良かった・・・笑い泣き

 

 


安堵で座り込みたいような気分でしたが、ラッシュアワーの時間帯でホームに座り込むのは命がけですしw、実際僕自身も会社に向かわなければなりません。

 

 

そのままやってきた次の電車に乗り込むと、電車に揺られながら、僕はぼんやりとカイトのことを考えました。

 


今日は話せて本当によかった。

 

 

元妻ユリが面会交流拒否の理由として、カイトが僕を嫌っていて面会に行こうとすると泣いて嫌がったり具合が悪くなったりするムキーというのは、今日のカイトの様子を見ている限りとても信じられない。

 

 

2年間顔を見ていなかった僕が、突然朝電車の隣の座席に座っていたことで、かなり驚いてはいたけれど、だからといって泣き出したり顔色が悪くなったりすることはなく、むしろ普通だった。

 

 

それに、「俺がカイトのお父さんなんだよ」と言った時も、全否定するわけでもなく、その後もゲームの話を笑顔で続けられたし、また来てもいい?と聞いた時にも頷いていた。

 

 

 

とりあえず今日のところは、それだけでも素晴らしい成果があったとしよう。

 

 


さて、問題は僕がカイトに勝手に会いに行ったことがユリにバレるかどうかだ。

 

 

 

 

バレるのかな・・・?

 

 

 

 

・・・バレた。

 

 

 

 

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ポールの陰から からの続き

 

 

というわけで、勝手に面会交流リベンジ。

 


2016年2月某日。

 

僕は再び、息子カイトの通学時に、カイトに会いに早朝からカイトの住む町まで向かいました。

 

 

 

 

前回と同じく、カイトが電車に乗り込み、また座席に座ります。

 

 

僕はタイミングを待ちました。

 

 

もしまた友達が乗ってきたら、また話せないかもしれない・・・。

 

チャンスはそう何度もない・・・。

 

 

最初離れて立っていた僕でしたが、少しずつカイトの近くまで移動し、ついにカイトの前に立ちました。

 

 

カイトは下を向いたまま、僕に全く気付きません。

 

次の駅で、カイトの隣の席に座っていた男性が立って降りていきました。

 


これは千載一遇のチャンス!

 

これを逃したらもうありません。

 

僕は何食わぬ顔をしつつ、必死で空いた座席に座りました。

 

 


・・・ふーっ、緊張する滝汗

 

 

 

僕が座った時点で、カイトが降りる駅までは10分程しかないことはわかっていました。

 

 

少しでも言葉を交わさなければ・・・。

 

 


僕は、トントン、とカイトの肩を軽く指でつつきました。

 

 

「カイト、ダディだよ」

 

 

一瞬、何だろうというきょとんとした表情をした後、頭の中の記憶の僕と、目の前の僕の顔が一致したのか、カイトは大きく目を見開きました。

 

 

僕はもう一度言いました。

 

 

「ダディだよ。覚えてる?」

 

 

カイトはこくんと頷きます。

 

 

「ずっと探してたんだ。もう、ずーっとだよ。

 

ずーっとカイトに会いたくて、ずっと探してたんだ。

 

元気そうだね?」

 

 

カイトはまた黙って頷きました。

 

 

「ダディも元気だよ」

 

 

・・・こくん。

 

 

「2年近くもずっと探してて、やっと見つけたんだ。カイト、かっこよくなったじゃん」

 

 

やっとちょっと笑顔を見せるカイト。

 

 

「カイトが引っ越しちゃって、それからずっとカイトを探してた。忘れた日は一日もないよ」

 

 

ばーっと色々と言いたい言葉は浮かんできましたが、僕は学校にこれから向かうカイトに、必要以上に重たい話やストレスを与えたくないと思っていました。

 

言葉は冷静に選ばなければいけない。

 

 

それでも、どうしても伝えておきたいこともありました。

 

 

「カイト、ダディってカイトの何だか知ってる? どんな関係の人だか」

 

 

「知らない」

 

 

小さな声でカイトが答えます。

 

 

「ダディがカイトのお父さんなんだよ。本当だと思う?」

 

 

「どうかな~」

 

 

カイトはちょっと小首をかしげました。

 

 

しかし、ずっと元妻ユリから、

 

 

本当のお父さんは不倫格上げ旦那のユウヤウインク

 

僕は家族に嫌がらせをしてくる嫌なおっさんゲロー

 

 

と教え続けられているカイトなので、

 

 

「そんなわけないだろ!ムキー

 

 

という答でなかったことだけで、僕は少しホッとしました。

 

 

 

まあ、もしかしたら、まだ8歳といえども、本人が自分で多少は母親の言葉を、

 

 

ちょっとおかしいんじゃない?キョロキョロ

 

 

と思うこともあるのかもしれないし、単に僕に話を合わせただけかもしれない。

 

わからないけど・・・。

 

 

続きます

 

 

 

 

 

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打破 からの続き

 

 

2016年1月某日。

 

 

僕は早起きして、早朝からカイトの住む町に向かいました。

 

僕の家からカイトの町までは、電車で約1時間。

 

事前に探偵の調査で聞いていた時間、電車、乗車位置を確認し、カイトを待ちます。

 

 

・・・来た!

 

 

ホームで待っていたところ、大きなランドセルを背負ったカイトが現れました。

 

 

(これはイメージですw)

 

 

ずっと会いたくて会いたくて、苦しい想いで再会を望んできた息子が目の前にいる。

 

 

色々な思い出や想いが頭に浮かび、離れてただ姿を見ているだけで、僕は胸がいっぱいになってきました。

 

 

そんな僕に全く気付く様子もなく、カイトはそのまま機嫌よさそうに爆  笑、弾むようなステップでやってきた電車に乗り込みました。

 

 

ああっ!!

 

 

ただうっとり眺めていたら、はぐれる!びっくり

 

 

僕も慌てて後を追いました。

 

 

 

カイトは上手く座席に座れたようでした。

 

僕は少し離れた位置に立ち、カイトをじっと見つめます。

 

 

最後に顔を見てから2年近くが経過していました。

 

 

元気そうだな、カイト。

 

大きくなったな。

 

 

話したいこと、言いたいことはたくさんありましたが、カイトを驚かせたり気まずい思いをさせたりしたくはありません。とりあえず僕はそのままそこに立って、様子をうかがっていました。

 

 

しばらくすると、同じ制服を着た友達らしい女の子が、同じ車両に乗ってきました。

 

女の子に気づくとカイトは立ち上がり、彼女に席を譲りました。

 

 

おおっ!!

 

さすが、俺によく似た紳士じゃないか!ニヤリ

 


楽しそうに女の子と話を始めた息子を眺めつつ、友達と一緒にいるときに突然声をかけるのはよそう、と僕はその日はそのまま撤収することを決めて、カイトが降りる駅までずっとカイトの姿をただ見守りました。

 

 

カイトの明るい笑顔や元気そうな様子、女の子に席を譲る優しさ、などなど、少しでも実際に見ることができたのは本当によかった。

 

 

でも、ずっとこうしてポールの陰からずっと眺めているだけでは、何にもならないのも事実です。

 

 

焦らず、辛抱強く待てば、チャンスは訪れる。


僕は次のチャンスを待つことにしました。

 

 

続きます

 

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