世界選手権の総括としたエントリー記事の下書きは、昨日の清々しい会見を見て没にしたのですが、今日の夜にBSの再放送で冬季五輪バンクーバー大会の女子シングルSPの完璧な仮面舞踏会を拝見したら、現地バンクーバー入りしてからの公式練習や6分間練習で、あのお気の毒に散々練習の邪魔をされた事や沸々と怒りにも似た感情を当時感じたことを思い出しました。


やはり世界選手権ヘルシンキ大会の総括として書いておこうと言う思いに至りました。






日本男子フィギュアスケートにとって、世界選手権に於ける金・銀と言う快挙と共に来期の冬季五輪出場の3枠獲得が決まり最高の結果となりましたが、女子シングルは続いた3枠から2枠へと減少しました。


ペア、アイスダンス共にフリースケートへは進めず、今回の世界選手権での出場枠の獲得はなりませんでした。ペア・アイスダンスは年内9月に行われるネーベルホルン杯に出場権を掛ける事になります。



バンクーバー冬季五輪当時、高難度のジャンプ構成を取り入れるプログラムの評価について議論となった事は、その後の男子シングルの4回転時代へと向かうエポック・メイキングで象徴的な出来事だったと思います。


世界選手権のヘルシンキ大会で優勝争いをした羽生結弦選手と宇野昌磨選手の真の強さについて、日本スケ連の強化担当としての立場に胡座をかく元スケーターは、4回転の本数や種類について語りますが、僕はその意見に全く同意できません。

お二人の強さを語る上で不可欠な事。それは、二人とも3AをFPに二本取り入れ然も殆ど失敗しない事、そして二人ともそのコンビネーション・ジャンプを3A-1Loからの三連続ジャンプにして後半に飛ぶ所に真の強さを感じます。宇野昌磨選手に至っては三連続ジャンプの3つ目に3Fを飛ぶと言う鬼の様なジャンプ構成です。


その高難度のプログラムを高い完成度で熟さないと表彰台にも上がれない厳しい争いとなったのが先日の世界選手権の男子シングルでした。





他の数ある採点競技に比べてフィギュアスケートの採点について語る虚しさをバンクーバー冬季五輪の男子シングル、取り分け女子シングルで嫌という程身にしみて感じた訳ですが、敢えて今回の世界選手権の感想として述べさせてもらうと、、


一時期、男子シングルに於いてSP・FPで300を超えるなど考えもしなかったわけです。少なからず以前より4回転ジャンプの種類や本数が増えたので、納得する事は可能です。



2002年のソルトレーク大会でのジャッジ同士の取り引きによる不正採点が表沙汰になりそれ以降採点方法は、

「各演技要素の評価基準を数値化し絶対評価により審判による恣意的な運用を限りなく排除する事を目的に大幅に改訂されました。」(当時のルール改訂を主導したISU幹部ドレの会見での談話です。)


四年をかけて試験運用と試行錯誤をしながら2006年のトリノ冬季オリンピックでは、基本的な評価基準も固まり大幅なルール改訂で運用も上手く行くものと当初は思われていました。


トリノ大会以降も様々な細かいルール改訂が行われ、女子シングルは2006年のトリノ冬季五輪以来、2AのFPに於ける本数規制だったり、ステップから直ちにジャンプするとか、スピンのエントリーに対する規制と評価、ステップシークエンスの評価基準など、演技構成について細かな変更がありながらもSP・FPともにジャンプ構成の本数やコンビネーションジャンプの本数などは変わりませんでした。


変わったのはジャンプ以外で、トリノ冬季五輪当時のFPでは現在と違いステップシークエンスが2つだったり、演技構成にスパイラルが1つあったりして、ジャンプを含めた演技構成はスピンの3つを含めて全部で13項目でした。


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✳︎因みに上記は、トリノ冬季五輪時の荒川静香さんの演技構成





現在では、ステップシークエンス1つとスパイラルが無くなった代わりに統一レベルのChsp1(コレオグラフィック・ シークエンス)を統一した基礎点による加点での優劣の評価にし、ジャンプ・スピンの構成を含めると全部で12項目の演技構成プログラムとなっています。


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✳︎上記は2017世界選手権の時のメドベデワ選手の演技構成




何が言いたいのかと言えば、あくまで個人的な見解と前置きしておきますが、ジャンプ構成に複数種類の4回転ジャンプを取り入れ難度が格段に上がった男子シングルに比べて、数十年も前から得点源であるジャンプ構成の難度がほぼ代わり映えしない中、演技構成が1つ減ったにも関わらずSPで70、FPで140と合計でその難度に見合わない200点を超えた不思議さだけが、バンクーバーから今回の世界選手権までの女子シングルで際立って見えてしまうのです。



今回のメドベデワ選手のFPのジャンプ構成は5本を1.1倍の後半に組み込んでいるとは言え、3連続ジャンプは2Aからでルッツジャンプは1本のみです。

2位のオズモンド選手も3連続は2Aからでルッツジャンプは1本で、Loが苦手で2回転になってしまうミスもありました。


そして、3位のデールマン選手はルッツジャンプは2本構成ですが、冒頭コンビネーションジャンプはSP・FP共に3T-3Tとやや他の上位選手に比べ見劣りします。彼女の演技を見ると、何の恨みもありませんがバンクーバーを控えたオリンピックシーズンに変わらない演技構成でありながら、突然メダル争いをする程の評価になったロシェット選手を思い出します。




表彰台の3選手に比べ、FPのジャンプ構成だけを見れば、FPで4位の三原舞依選手の構成の方が明らかに高難度のジャンプ構成となっていました。


3Lz-3Tと3Lz-2T-2Loと二本をとりいれ、三連続は後半。ジャンプの難易度とミス無くこなした完成度からして、優勝したメドベデワ選手と比較しても全く見劣りはしません。


少なくとも、FPに於いて細かいジャンプミスがあった上位選手の2人より評価が低いのは全く理解出来ません。SPのステップからの単独トリプルジャンプが2回転の採点無しになったものの、優勝したメドベデワ選手とSP・FPのトータルで35点以上の差があった事も理解に苦しみます。


「SPでの最後の3Fの失敗がなく、同じ最終グループで滑っていたなら、FPの評価ももう少しよかったはず。」よくフィギュアスケートに携わる連盟の関係者やコーチ達が口にする言葉です。


「演技要素に基礎点を設け絶対評価による数値化したルールによる恣意的運用の排除を目的とした大幅なルール改訂」にしたのは一体何だったのか。最終グループでないから評価が低いのならば、それは絶対評価ではなく昔の様な審判ごとに評価を順位付けした相対評価そのもの。



以前のブログにも書いた様に、三原舞依選手はジャンプ構成の難度を更に上げる余地はあります。2Aを1つ外して3Lzと3Fを2本ずつのジャンプ構成にする事は現ルール上可能です。






名前も見たくないので敢えて当時のジャッジスコアは出しません。バンクーバー冬季五輪で優勝したあのお気の毒のジャンプ構成は、得意なルッツを2本組み込んでいながらもコンビネーションジャンプの3本全てを前半でこなし、2Aからのコンビネーションジャンプが2本に、2A単発を1本の計3本の2AをFPに組み込む(バンクーバー大会当時は2AはFP3本可能でした)ジュニア選手並みのプログラム難度に、出来栄え点が全ての要素に2点の加点付き、コンポーネンツスコアは全て9点後半。


FP(150.06)、SPとの合計で(228.56)と、当時の歴代最高で、全く感動も有り難みも実力も伴わないオリンピックチャンピオンとなりました。



僕にとっても長年フィギュアスケートを愛してきた多くのファンにとってフィギュアスケートの女子シングルで現在ここまで実際の演技構成と採点が乖離してしまった象徴的な大会は、やはり2010年のバンクーバー大会だったと改めて思い知らされました。





カナダは最近ずっと女子シングルの枠は二枠でした、今回2人が表彰台に上がり平昌オリンピックの出場枠は三枠になった訳ですが、バンクーバーで持ち上げられたお気の毒なあの人の優勝に対する返礼かと穿った見方をしてしまいます。1番の悪者は韓国以上に、1番の癌はISUを牛耳るカナダ陣営です。


羽生結弦選手のコーチである、ブライアン・おっさん、失礼オーサーコーチの拠点場所であるクリケットクラブの実質オーナーとして、当時ISU会長のチンクワンタと共にソルトレーク大会での一件以来、関係者を処分刷新し現在のルール改訂に当初から関わり、これを機にISUの副会長兼任フィギュアスケート部長にまで登りつめ連盟内の人事を掌握してきたデイビット・ドレが昨年亡くなりました。


チンクワンタも長年の会長職から退き、ISU内部から少しは浄化されるのかと期待をしたものの、今回の世界選手権の各種目の結果を見ると、以前より更にカナダ色が強くなった気がするのは気のせいでしょうか。


チンクワンタとドレを中心としたカナダ陣営に韓国サムスンを加えたパワーバランスがカナダ陣営の内部の別の派閥へ移っただけの様に感じます。サムスン地元の韓国平昌冬季五輪に向けて、韓国人スケーターに有望選手が居ない中、どの国の選手にスポンサーとして着くのかでパワーバランスの移行先が分かるかもしれませんね。それは女子シングル選手とは限りません。





バンクーバー冬季五輪後に行われた、イタリアトリノでの世界選手権で当時のISU会長のチンクワンタ氏と当時サムスンの李健煕会長の娘婿が隣り合って観戦していた際に、演技中の高橋大輔さんのブレードがはずれプログラムを中断した姿を二人が笑っていた場面が場内のモニターに映り、バツの悪そうな顔がオンエアにのった事を今でも鮮明に覚えています。




来年、冬季五輪への日本女子シングルの参加枠が二枠に減った今回のヘルシンキ大会。そして、カナダによる、カナダの為のカナダバンクーバー冬季五輪のフィギュアスケート競技。


改めて来年の韓国平昌での冬季五輪を控えた今、カナダと韓国とサムスンと電通とお気の毒と言うキーワードがどうしても頭を過ってしまうのです。


ただし、北朝鮮が暴発したりせずまともに冬季五輪が開催されたらの条件付きではありますが、、、、、、













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