財政健全化目標の指標としてのプライマリーバランスと財政収支の違い(各主要国の財政収支とGDP)


プライマリー・バランス(基礎的財政収支)とは、税収・税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の支払いにあてられる費用)を除く歳出と収支のことを表し、その時点で必要とされる政策的費用を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標。


財政収支とは、国の歳入と歳出の差のことをいい、 これは世界各国で発表される経済指標であり、歳入が歳出を上回る場合を「財政黒字」、歳出が歳入を上回る場合を「財政赤字」と言う。





アメリカ、ドイツ、英国では、名目成長率回復が財政健全化に寄与※The copyright of the article and the photograph belongs to the delivery origin. (引用記事の著作は配信元に帰属します。)
(内閣府ホームページより引用)

諸外国においても、リーマンショック以降、政府債務残高対GDP比は上昇している。OECD諸国の2009年~2012年の名目経済成長率(平均)と、当該期間の政府債務残高対GDP比の変化幅の関係を描くと、名目GDP成長率の高い国の方が、政府債務残高対GDP比の変化幅が小さい傾向がみられる。

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次に、リーマンショック後、主要国の中で比較的早期に経済の回復傾向を示したアメリカ、ドイツ、英国について、名目経済成長要因(実質GDP要因とGDPデフレーター要因の合計)の政府債務残高対GDP比の変化幅への累積寄与(2008年から2012年にかけて)を我が国のそれと比較してみよう。ドイツを除く日本、アメリカ、英国においては、基礎的財政収支の悪化により政府債務残高対GDP比が、それぞれ30%ポイント弱、35%ポイント程度、25%ポイント程度上昇している。また、名目経済成長要因をみてみると、我が国においては、政府債務残高対GDP比を5%ポイント強上昇させているのに対し、アメリカ、ドイツ、英国については、いずれも政府債務残高対GDP比を低下させており、その寄与は、アメリカで10%ポイント弱、ドイツ、英国でそれぞれ6%ポイント程度となっている。

こうしたことから、基礎的財政収支を改善するとともに、名目経済成長率を引き上げることが財政健全化に有用であり、デフレ脱却と成長戦略の着実な実行が必要である。

ーーーー以上内閣府ホームページより





以下は、参議院予算委員会での西田昌司議員と財務省主計局官僚とのやり取りから


主要国は、財政健全化目標の指標として日本が採用しているプライマリーバランス(基礎的財政収支)ではなく、利払い費を含めた財政収支を用いている。


財政収支とは、前期に比べて借金の残高が今期増えればその間は赤字であった。借金の残高が減ればその間は黒字であった。とする概念で、


プライマリーバランスとは、今年の行政サービスを今年の税収で賄えたかと言う概念なので、逆に言えば過去の借金を利払い分までは借金を増やしても良いとする基準。

したがって昨年度より今年借金が増えていても今年の利払いの範囲内であれば黒字と見なす基準である。



簡単に言えばプライマリーバランスと言うのは利払い費を入れていない指標で、財政収支の指標は利払い費を入れている。その違いがある。

いわば借金の利息分を含めた返済金額も入っているので指標としてはプライマリーバランス(基礎的財政収支)指標より他の主要国が採用している財政収支指標の方が厳しい指標と一般的に言われている。

「財政収支を採用している欧州より日本のプライマリーバランスのほうが緩いのか」と思われがちだが実は違う。それを表すのが下のグラフ。



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※The copyright of the article and the photograph belongs to the delivery origin. 
▪️主要国の財政支出額の推移と名目GDP比率(上から英国、米国、フランス、ドイツ、日本)


1990年を100とした場合に日本は財政支出は減って、予算も減少。GDPも減っている。他のG7主要国は財政出動をして予算額を増やして名目GDPも増えている。日本よりも厳しい指標である財政収支の基準でやっているのに、何故日本よりも財政拡大ができるのか。


欧州諸国に於いては、最近、一時的要因を取り除いて構造的な財政収支に着目するようになっている。一時的要因とは景気状況により税収が減少したり、失業保険が出たり、公共事業による公的資金の支出を除くなど、所謂、景気にやる変動要因など短気的な要因を除き、毎年恒例になっている収支ベースとなる構造的な財政収支に着目すると言う考えになっている。

財政収支を財政健全化目標の基準とすると言いながら、欧州の一部先進国は構造的な財政収支を指標として、更に長期的な着目を取り入れ臨機応変に弾力的な財政出動をしている。つまり日本の様に短気的なガチガチな厳しいルールで、やっている先進国はいないのである。


ーーーー以上、西田昌司議員と財務省主計局とのやり取りから





今まで財務省の主計局は、表立っては日本より他の主要国の方が厳しい指標である財政収支を取り入れていると言ってきたが、実際には他の主要国より日本の財政健全化目標の基準にしているプライマリーバランス指標がより厳しいものとなっているのが実際である。



他の主要国は、構造的な財政収支を財政健全化の指標にしている。税収が減少すればその分の予算額を増やす、公共事業や公共投資は財政収支からは外すなど弾力性を持たせた仕組みにしている。



プライマリーバランス(基礎的財政収支)の弾力的な取り入れ方をするにあたり問題になるのは、今日本が目標にしている、2020年のプライマリーバランス黒字化目標である。日本の累積債務のGDP費を低減し現状を把握することも必要。先ずは累積債務がプライマリーバランス指標で減少していく経済状況を作っていく事が重要。


財政健全化指標のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の数値だけを改善するばかりで、実体経済が伴わないと意味がない。例えば、来年度予算を半減すればプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化は簡単に可能だか、そのよく年から国の行政サービスが破綻するのでは元も子もないと言う事。


菅義偉官房長官は、1月26日午前の記者会見で、

「大事なことは数字合わせのためにプライマリーバランスを一時的に改善させることではなく、経済を成長させて税収を上げていくことが重要」と話しています。



いよいよ次回は、総括で日本の経済政策を提案して終わります。










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