チケットのやりとりから、とても親切にしていただいて、新年からほわんとした気持ちにさせていただけた今回のお芝居。
「夢も希望もなく。」
タイトルと、FBだったかを見たときは全く予想がつかないお芝居で。
直也さんが、「普段はやらないような役をやっています」と行っていたのも気になっていて。
今回も、私の主観の元に書いておりますので、あしからず。
正直、娘の頃に通っていた下北沢は、本多劇場中心で、行ってもザ・スズナリだったので、駅前劇場とoffoffがこういう立地条件でたっていることを今回初めて目にして色々納得した訳です。
月刊「根本宗子」さんのお芝居を拝見するのはもちろん今回が初めてで。
自分の平日休みを有意義に生かして、女性割2800円という破格な価格で拝見した今回のお芝居。
ご挨拶状には、テレビや映画じゃ観られないものを作りたくて、お芝居をやっていると書かれている根本さん。もちろん、自分が客として観にゆく場合はお金を払って観にゆくわけだから、他では観られないものを見たいと思って劇場へゆくとも書かれていました。
小劇場はこうあるべき!と思えるようなパッケージの駅前劇場www
舞台の上には1DKというよりは、6畳1間と言った感じのアパートの部屋が左右に2つ並んでいます。上手の部屋はどことなく生活感の満たされた雑然とした部屋で、下手の部屋は、若い女の子の部屋なだろうなーと思わしき、比較的片付いたお部屋。見てくうちに解るのですが、下手の部屋の住人の、10年後が上手の部屋の現在という、過去と現在を行き来しつつ、3人の女の子と男の子の生活が描かれていくお芝居でした。
主人公の阿部ちひろ(ちーちゃん)は女優を目指し、同じように看護師を目指している幼馴染で15年来の親友でもある橋本絵津子(えっちゃん)と上京して一人住まいを始めます。劇団に所属し、20才を過ぎた頃小さいながらもその劇団の主演として舞台に上がれるくらいにまではなっていたし、大きなオーディションにも通る様なっていた。ただその頃、知り合った作家志望のちょっと神経の細い、デリケートな少年、新井優一くんのことを好きになって、彼のそばにずっといたいと思う様になった頃から、えっちゃんとの関係がギクシャクしてゆきます。
サラリーマンと思しき彼氏のいるえっちゃんには、ちーちゃんが好きだという優一がどうしてもダメな男に見えて仕方がなかったから、ちーちゃんのタメを思って忠告をします。何どもします。
「本当にちーちゃんのことが好きなら、ちーちゃんの夢を壊したりしない。一緒に夢を叶えようとするものだよ?」
そして、結果的にちーちゃんは、えっちゃんと絶交し、優一くんとの暮らし選んで、女優になる夢を捨て、普通のOLとして働き始めます。
30才を目前にしたクリスマスも目前のある日、もうひとりの友人というか、かつてのバイト仲間だった二木杏奈が大きなお腹をしてやってきます。こんなにおおきなお腹をしていても、恋人に妊娠したことを告げられない杏奈の彼は、杏奈よりも年上のバンドマン。バンドだけでは食べていけないバンドマンを杏奈は自分の営むカレー屋の収入で食わせている。要するに、ちーちゃんと、杏奈ちゃんは戦友みたいなものなのです。好きになった男を自力で食わせてゆく仲間として日々戦って生きてきたのです。
かつて、もう何年も前に自分の夢を捨ても、作家になるという優一の夢を叶えたいと思ったちーちゃんとその思いとても良くわかると言って、自分を部屋から追い出したバンドマンの彼のここが好きなんだと言って、自分のために作ってくれた曲をテレコでかけて、ベッドの上で飛び跳ねて歌った杏奈。
杏奈は、やっぱりバンドマンとしてライブをやってる彼のことが好きで堪らない。彼が作って杏奈が歌う曲
…あなたが好き。10年たっても同じ様に好きな映画を手を繋いで見にゆきたい。10年経っても同じものを同じように好きでいたい。あなたが好き。(←といった内容だったと記憶しています)…
この曲を聴きながら、私、この舞台を観ていてこの曲の歌詞の部分に一番共感して号泣してました。
そんな時期を乗り越えて。
一番最初のクリスマスに、切り株の形をしたケーキを金がないからかってやれなかった優一は、今夜もPCで、クリスマスのチキンの量を知ろうとぶつぶつ言いながら検索をかけたりしています。でもちーちゃんは、明日も仕事に出かけるので早く寝てしまいたいのです。ケーキもチキンもどうせまた自分で用意するのです。それには働かないといけないのです。深夜バイト(バラン工場)を初めてくれた優一の夢を叶えるために…。
そして、そんな折、杏奈が泣きながら電話をかけてきます。
妊娠したことを告げると、結婚しようって彼が言ってくれて貯金も300万ある通帳を見せてくれた、そしてちゃんと働くと約束してくれたらしい。
よかったねと言って電話を切って、そのことを優一に告げると、「そんなことで夜中に電話してくるなんて迷惑な話だね」と苦言を呈してから、「そんなことより、クリスマス、やっぱりケーキ買おうよ!やっぱり、切り株のケーキがいいかな?でも、ふたりじゃそんなにたべきれないかな?」と無邪気に話しかけます。
これがちひろが10年一緒に住んでいる自分の彼氏です。
日永ゴロゴロして、自分とすれ違いにバランをつくる工場に働きにゆく彼。
彼は一体いつ夢を叶えて、自分を幸せにしてくれるのだろう。杏奈の彼のように…。
ある日、疲れて帰ってくると、部屋の様子がちょっとおかしなことに気づきますが、素知らぬ振りでやり過ごそうと思っているちーちゃんの部屋に、見知らぬろロリータ娘が忘れ物を取りに来ます。折角クリスマスのプレゼントに買って頂いたカチューシャわすれちゃった。と言って微笑む少女に、さすがのちーちゃんもキレてしまいます。
プレゼントはいつも私からで、ぬいぐるみ1つももらっただけで、後はなんにももらったことなんかない。私はいつにあなたに幸せにしてもらえるの?
その時初めて優一に言われたことば
「だって、ちーちゃんなんにも欲しがらないじゃない?」
「は?」
そこに割り込んでくるロリータ娘
「男は、そこそこ女にあれ買ってこれ買ってっていわれて、買ってやることで、自尊心をくすぐられる女を可愛いと思うんですよね…」
あくまでもマイペースな彼女を追い出した後で、もう優一との関係を続けるのは無理だと悟るのですが、別れようと切り出したのは、優一でした。もう、早くから自分には才能が無いと思っていたのに、自分よりも才能に恵まれていた女が少し羨ましくてした意地悪を真に受けて、自分の夢を捨ててまで、俺は俺の夢にかけてくれと言ったことなんか無いと…出ていった優一を見送りひとり残された部屋で、ちーちゃんはかつての親友だったえっちゃんに電話をします。泣きながら。
電話は思った以上にすぐつながって。電話の向こうのえっちゃんは昔と変わらず明るい声で話かけてくれます。
「どうしたー?別れたかー?」
「うん、今別れた」
えっちゃんは、もしちひろが電話をしてくるときは、別れた時だろうと思っていたと。そして、いまからそっちに行くと、部屋のドアを開けた絵津子はすがりついて泣くちひろに別れてよかったと言いながら、自分の身の上について話出します。
あの時の彼と結婚して、子供も2人いる。もちろん看護婦としてもちゃんとやってる…。
そこへ、大きなお腹を抱えた杏奈が走り込んでくる。彼が300万あった貯金を全部スってしまって、有り金持って逃げていった。そして、子供が産まれそう!!!
「仕方がないから、私が取り上げる」と絵津子。
ちひろにお湯を用意させ、ベッドに杏奈を横たえさせると、いきむ杏奈に絵津子はチクリと文句をいいます。
「こんな時になんだけど、私昔っからあなたのことはあんまり好きになれなかった」
無事に生まれてきた杏奈の子供。
その子を抱いたそのどたばたの最中に、ちひろはかつて自分の家から優一の元へと同棲を始めようとしたあの日の自分の思いを思い出す。
たぶん私は、きっとこの先なにがあっても自分で決めたこの瞬間を後悔なんかしないだろう。
キラキラした顔で微笑む若かったちひろ。
ひと仕事終えた杏奈はベッドの上に仁王立ちで、若かった頃の自分とGJと言わんばかりに親指を立てる。
あの日、ちひろに絶交を言い渡され、とぼとぼと帰り道を歩く若い日の絵津子をお前は間違ってなんかなかったよといわんばかりに、優しく抱き締める10年後の絵津子。そこで、終演となる訳ですが。
最後のシーン。
三人三様に女として生きて来た10年は決して無駄に生きてきたわけじゃないような気持ちにさせてくれるそんなお芝居でした。
正直、女の子と恋愛絡みの芝居が苦手な私が、ここまでのめり込むように見れたのは、やはり話の作り方の上手さと、それぞれが持つキャラクターでしょうか。
ちひろはどうみても生活に追われて疲れちゃてて、もう恋愛どころじゃなくなってる。
杏奈のアバンギャルドさは、やはりバンドマンを彼に持つ故のもの。
絵津子は見本のような女の幸せを手に入れた他人から見ればリア充な訳で。
男の子もそう。若くて自分には甘い優一は、ずっとそのまま体だけ大きくなったが、男としては何も成長してこない。それはそのままの彼を好きになったちひろの責任もあるよね。
この人は私が支えてあげなくちゃダメになるっていうのは、実はその人の思い込みで、いくらダメでも、叱ってもくれないその環境は男にはただ逃げ場のない地獄なのかもしれないと思ったり。
私も女としては、時々何かをねだったりしたほうがいいのかもしれないと、色々気づかされた作品でもありました。
1/16 下北沢 駅前劇場