アイルランドと聞いてパッと頭に浮かぶのは、サッカーよりなにより、U2の「Sunday Bloody Sunday 」と、北アイルランド紛争。そのくらいの知識しか元々持ち合わせていなかった訳ですが(後はアイリッシュダンスとか…)千秋楽を迎えるにあたって、ちょろっと見てみた感じでは、まあ、当たらずとも遠からずなイメージでした。>アイルランド。
公式では、1969年のアイルランド、ベルファストでのサッカー少年と、そのガールフレンドたちとのお話、となっています。
真ん中に一段高くなっているだけのセンターステージ。そこがまるでサッカーのフィールドでもあるかのように、そこを見下ろす形で両サイドにスタンド席のようにある客席。その間にある通路も、上の方にある回廊席にもキャストは所狭しと駆け回り、歌いかけます。回廊と、ステージの上下にはTVモニターがいくつかあって、本当の紛争時の?ニュース映像みたいなものも流れたりして。今回、席にはお友達の協力もあり、とても恵まれていて、両方のサイドから1回ずつ観れたのはラッキーでした。
本当に違った、いろんな風景が見えてきました。
アイルランドでの紛争が、政治と宗教と根深い部分にあるため、八百万の神様を祀る日本人の私には、同じ民族間で起こる紛争の本当の哀しみは理解できないのかもしれないのですが、それでも、親しい人を他意でも、故意でも失う辛さや悲しみの欠片を感じとることは十分にできたと思うのです。
観劇が終わって、一概に、「楽しかった!」とは言いにくい内容だったのですが、見れば見るほど、そこにいるみんなの心情にジワっと近づけるような感じがして、初日終わりにみんなが回数増やしたくなるって言っていた意味が解った気がしました。現に千秋楽に近づくにつれて、チケットが入手困難になっていったようですし…。今回、平日にあったアフタートークでポツポツ出てきたお話に色についての考察があり、ジョン役の馬場さんのユニホームが白緑なのに対して親友のトーマスのmasaが着ていたユニフォームが少し黒っぽかったりするのは、平和と暴力?みたいなものの表れなのかと(緑、白、オレンジを基本にキャストさんが着ている衣装の色、黒や、赤や、それが持つ意味?)考えたりしていて、その辺りも演出の妙かもしれません。
まあ、相変わらずmasaを中心に観に行っていた今回の「The Beautiful Game」なので、ずっとトーマスばっかりみていた訳ですがソロというか、トーマスとジョンの掛け合いの曲は音階がとても難しそうで、なかなか歌詞が聞いているこちらに入ってこなかったのでちょっと苦戦しましたが、えっとこれはくまでも主観なので申し訳ないのですが、ジョンとトーマスは親友という大前提でも、相手の初夜のその晩にわざわざ自分と彼女のどっちをとるか?みたいな電話かける~???
まあ、百歩譲って、その時は何も起きなかった。でも結果的にジョンはその一件でプロサッカー選手への道を閉ざされた訳で。
歌詞の中のヒーローはジョンで、チンピラはトーマスのことだと思うのです。
ジョンはいつでも一番光っていて、トーマスはその影に甘んじているように見えて仕方がなかった。試合でも、神父に言われて汚れ役になって、結果ヒーローはジョンに…。それでもいいと自分の役割を思っていたのは、きっとジョンがトーマスの隣にいたからなんじゃないのかな? 悪く言えば、その場所を奪っていったのがメアリーであり、サッカーであったとしたら、居場所のなくなったトーマスが、身の置きどころをIRAに求めたのもなんだかやるせなくて仕方ない。
二人の最後のシーン。
回を重ねるごとに、トーマスの中の揺れる気持ちが深くなって言ってるのか、なんだか不安そうで親友に救いを求めても良いものか、すら、まよっているかのように見えて。あそこで、自分の手は汚さずに引導を渡すジョンの選択は、トーマスにとっては、とても絶望的だったように思えたのですが、ジョンのセリフ「今のお前は殺せても、昔のお前は殺せない…」っていうのは、果たしてどっちの免罪符だったんだろうと思えて…。
10代の青年たちが、自分たちでは抗えない社会の流れの中で自分の身の置き所を探すというのは、もしかしたらいつの時代でも主題になりえる問題なのかもしれません。
2/2、6 新国立劇場 小劇場