今週も本を読み上げました。
読んだのは「吉村昭」の「海の祭礼」です。
一言で云うと幕末のペリー来航時に通訳を務めた男たちの物語です。
長く鎖国を続けていた日本が開国へと至る道を、なくてはならない存在でありなから、
その役割にゆえに注目を集めることのなかった通詞(通訳)の半生を通して描いた作品です。
前半は、インディアンとの混血児ゆえアメリカ社会で道を閉ざされたマクドナルドが、
日本に強い憧れを持ち、遭難を装って日本に渡った。
その後、長崎で通詞の役人として勤めていた森山栄之助の出会いと交流が描かれます。
後半描かれるのは、マクドナルドとの交流によって英語力を高めた森山が、
ペリー来航からハリスとの折衝などを経て開国へ至る会談で上位の通詞として活躍する時期、
つまり日本にとっては大きな江戸末期の激動の期間です。
ずっしりとした読み応え。
幕末を扱った小説の多くがその時代の英雄的人々の熱情を描く中では異色といえると思いますが、
とても興味深い視点と内容でノンフィクションの印象すらある歴史小説です。
わくわく、どきどきとはいきませんが、読んで良かったと思います。
「吉村昭」の作品で同じく通詞を書いた「黒船」が在ります、これも読んで観たくなりました。