アマゾンプライムで『グリズリーマン』という映画を見ました。

 

 

ちょっとだけ情報を載せておきますね。

 

 

 

 

~あらすじ~

 

12年間にわたってアラスカグリズリーの保護活動をしていた男、グリズリーマンことティモシー・トレッドウェルの姿を描いたドキュメンタリーである。

トレッドウェルは、後に発表するつもりで自らの活動を細かくハンディカメラに記録しており、本人は2003年10月5日カトマイ国立公園でガールフレンドと共にグリズリーに襲われて死亡したが、莫大な映像が残された。本作は基本的に、その残された映像、つまり生前の彼自身が監督・出演しているセルフドキュメンタリーフィルムによって構成されている。

トレッドウェルが熊に襲われた時も、ハンディカメラはキャップがついたまま作動していた。そのため、熊に食われていくその過程がリアルタイムに音声記録として残された。ただし本作では、監督がその音声を聞き「もう消した方がいい。絶対に聞いてはいけない」と遺族につぶやく姿を映すのみに留められている(Wikipediaより)。

 

※画像はAmazonさんからお借りしています。

 

 

 

 

 

 

普段は映画を見たら、映画情報サイトに感想を書くのですが、そのサイトにはこの映画の情報はありませんでした。アマゾンプライムでしか公開されてないからでしょうか? 以前書いた『ナチ狩り』や『ジブリの本棚』もそうで、仕方なく(書いて消化したいという思いがあるので)こちらに感想を書こうと思います。

 

また私の表現がいささか適切でない(過剰に批判要素を含む)場合がありますが、不快な思いをさせてしまったら申し訳なく思います。気をつけて書こうと思います。

 

 

 

~感想~

 

ヴェルナー・ヘルツォーク監督の名前で視聴しました。

 

ヘルツォーク監督の作品は2作品しか見ていませんが(フィツカラルドとアギーレ)、どちらも非常に素晴らしかったです。その監督が何やら『グリズリーマン』という熊大好き人間のドキュメンタリーを撮っているとわかったので、たまらず見てみることに。

 

『グリズリーマン』はティモシー・トレッドウェルという環境活動家についてのドキュメンタリーです。

 

あらすじにも書いてあるように、彼は熊に襲われて亡くなりました。

 

しかし彼はそれまで100時間ほどにも及ぶ映像を撮り続けていて、そこには驚くべき映像が残されていました。

 

ティモシーは熊の生息域まで行き、手を伸ばせば触れられる距離まで近づいて、熊とコミュニケーションを取ろうと頑張っていました。

 

いつ襲われるか分からない状況で、です。

 

これは非常に素晴らしいことだと思います。彼は熊それぞれの顔や性格を覚え、いろんな名前を付け、名前で彼らに呼びかけます。

 

熊はのそりのそりと、餌を探している格好ですが、明らかに彼を意識しています(それでも仲良くべったりと遊んだりはしませんが)。

 

彼はこういった活動を10年以上続けました。

 

 

 

彼は映像に自分の姿を映します。

 

そして視聴者に向かって語りかけます。熊を紹介したり、自分のことを紹介したり、どうすれば熊と仲良くなれるかといったことなど。

 

彼は「熊を守らねばならない」 「ぼくが熊を守る」といった発言を繰り返しています。

 

しかし専門家の統計によれば、熊の生息数は常に一定をキープしているとのことです。アメリカにおいて密漁は非常に少なく、多少の狩猟も生息数を減少させたりはしないとのことです。

 

ティモシーはそのことを知っていたのか、あるいは知らなかったのか、孤高の戦士と称して熊を守るといった趣旨の活動を続けます。

 

彼はカメラを回して、自分が熊とコミュニケーションを取っているところを視聴者に伝えようとします(取れているかどうかはわかりません)。

 

 

 

お気づきになったかもしれませんが、これは単純な環境保護のドキュメンタリーではありません。ティモシーの人間性を賛美する映画でもありません。

 

ティモシーとは何者だったのか? それがドキュメンタリーの焦点になっているのです。

 

ティモシーの過去も語られていきます。彼は中流家庭の生まれで、優秀な学生でしたが、大学に行って悪い仲間と付き合うようになり、飲酒中毒者になってしまいます。マリファナにも手を出していたようです。

 

彼自身も映像で、自分自身の飲酒癖について語っています。

 

ティモシーは途中で名字を変えています。また自身の出身を隠そうとしています。オーストラリア出身ということにし、訛りを覚え、キャラクターの作り込みのためにわざわざ現地へ行ったりしています。

 

ティモシーは映像で語ります。「以前まではどうしても禁酒できなかったが、こうして荒野で熊や動物たちと暮らしてみると、きっぱり酒をやめることができた」

 

 

 

この映画のほとんどはティモシーの映像によって占められています。ティモシーは熊の保護を訴えておりますが、同時に自分自身の探究も行っているようにも見えます。

 

熊と生活することが、自分自身にどんな影響を及ぼしたのか、熱心に語ろうとしてきます。

 

それを見て、「自己顕示的で、程度の低い人間だ」という趣旨の感想を抱いた方もいらっしゃると思いますし、実際にそういう趣旨のコメントも書き込まれていました。私もちょっとそういう感じは抱きました。

 

ほとんどの映像にティモシーが映り込んでおり、ヘルツォーク自身も、彼がいないときの映像の自然の美しさについて言及していたりするので、完全にティモシーのあり方に同意しているわけではないことが分かります。

 

 

 

ただ彼自身の過去からも分かりますが、彼は不安定な性格の持ち主だったことがだんだん分かってきます。

 

社会に自分の居場所がないと思っていたようです。彼は直接的に社会を批判したりもします。

 

挙げ句には国や法と戦うことを宣言したりと、いささかエスカレートしやすい性格だったかもしれません。

 

ただ、それでも彼に近しい人々は、彼のことを「とても優しい人だった」と形容しています。

 

 

 

私自身も、彼のように自撮りをすることもなく、自分語りもせずに、ただ環境保護のために一心に活動した方が効果的だったと思っています。

 

ただ、しかし彼はそれを望まなかったと思います。

 

彼はその活動自体にアイデンティティを見いだしていたからです。

 

そうした成熟的な活動を行うほど、ティモシーという自我には調和された時間もありませんでしたし、十分な環境も整っていなかったのだと思います。

 

彼は注目されたがっていたのかもしれません。それもただ自分自身のためだけではなくて、「熊と生活する奇っ怪な男がいる」という話題性を何よりも優先し、それを環境保護に結びつけようとしていたのかもしれません。

 

いろんな目的がないまぜになっていたのだと思います。

 

人間社会に飽き飽きしていたこと、動物と生活することで落ち着きを見いだせたこと、自分に自信が見いだせたこと、そしてその「動物と自分」の世界を壊そうとする勢力に対し牙を剥いたこと、そしてもっと客観的な「環境保護」の観点で考えること。

 

いろいろな視点がないまぜになった上でのああいった行動だったのだと思います。

 

 

 

私は単純に、物怖じすることなくあそこまで熊に接近することは、ただの人間にはできないことだと思います。

 

勇気があるだけではない、なぜあそこまでして熊に密着しようとしたのか、そこに謎が残りますし、いずれにせよ普通ではない、興味深い人間だったと思っています。

 

彼の活動は、熊に対する人間の興味に繋がっていったと思います。また彼をモデルにして、人間と動物の関係性を捉え直そうという動きにも繋がっていくと思います。

 

多くの人は、彼のことを「イカれている」だとか「現実が見えなくなった」と形容します。

 

しかしそれだけでは、彼の映像の全てを説明することはできないと私は思います。

 

彼がアカデミックな環境活動家でなかったことは確かだと思います。持続可能な発展には貢献せずに、刹那的な熱狂で終わってしまう可能性も残されています。

 

ですが、彼は彼にしかできないことをしたと思っています。

 

それが本来彼自身のアイデンティティの確立のためであったにしろ、あるいは高邁な環境保護のためであったにしろ、偉大な行動であったことは変わりありません。

 

 

 

 

この映画自体は、先ほども言ったようにティモシーによる映像がほとんどです。彼は熊を映すのと同じくらい自分のことも映しています。

 

彼自身のいささか幼い宣言や語りも多数聞かされます。

 

またインタビューを受けた人々も、余計な語りを始めてしまう部分もあって、監督の技巧的な部分に疑問を感じたのもいなめません。

 

それを加味すると、面白い映画だとは言えても、傑作とまでは言えないのかな……と思います。

 

 

 

★5満点だとすると、★4くらい……かな。

 

ドキュメンタリーは評価が多少難しいのですが、私は直感的に自分が面白かったかで判断しています。普通の映画の見方と同じですね。

 

ドキュメンタリーの面白さは、「興味深さ」です。

 

普段では知り得ない情報や体験を提供してくれるのがドキュメンタリーですが、見せ方一つでもかなり評価は変わってきます。私は見せ方に多少のこだわりがあって、全体的なストーリーや情報内容よりも、そこを見ることが多いです。

 

以前紹介したドキュメンタリーの数作品も、全部ストーリー内容よりも、見せ方の巧さを評価しています。

 

この映画は内容は面白いのですが、いささか散らかっているような印象がありまして、あとで視聴者が解釈で補強しなくてはならないようなところがあったと感じています。

 

ともあれ、以上になります。ここまで見て下さった方、ありがとうございました。