旅行に出かけるとき、特に海外旅行では「飛行機に乗るとき荷物をどうするか?」というのが悩みのひとつになりますよね。服やお土産なら多少トラブルがあっても何とかなりますが、インスリンや医療物品となると話は別です。
私はこれまで何度も飛行機に乗ってきましたが、その中で「これは絶対に手荷物にすべきだ」と強く思うようになった出来事がいくつもありました。息子も必ずすべてを手荷物にしています。
一方で、「全部は手荷物に入らないから預けている」「荷物の紛失なんて滅多にないから大丈夫」という意見も耳にします。確かにそう思いたくなる気持ちも分かります。でも本当に安心と言えるでしょうか?
ここから先は、私自身が経験したいくつかのエピソードをご紹介します。きっと「手荷物で持つかどうか」の判断材料になると思います。
オーストラリアでの出来事
この夏、私はオーストラリアとニュージーランドを訪れました。荷物は機内持ち込み1つと、スーツケースを1つ預けました。
夜、オーストラリアの空港に到着。入国審査を終えてターンテーブルで荷物を待っていましたが、いつまでたっても出てきません。周囲の人はどんどん荷物を受け取り出ていくのに、私の荷物は見当たりません。
ようやく似たスーツケースが回ってきたのですが、私が付けた赤いタグもなく、一回り小さい。近づいてみると、持ってみても軽い、やはり違うものでした。まさかロストバゲージ?と不安になりターンテーブルを回ってみると、日本人の4〜5人のグループがいて、そこに赤いタグ付きのスーツケースが。声をかけると、女性が「似てたから」と言って私の荷物を持っていたのです。
もし私が気づかず、そのまま空港の外へ持ち出されていたら…。その人がスーツケースの取り違いに気づくのはおそらくホテルで開けようとして鍵が開かず気づく頃。私はその前に航空会社に紛失を報告しなければならなかったでしょう。ニュージーランドへ翌日移動予定だったので、間に合わなければ届けてもらえたかも不明です。トランジットで数時間後に次の便へ乗る予定だったなら、もっと大変なことになっていたはずです。
ちなみに帰国時の羽田空港でも、係員が「荷物取り違えが多発しているので注意を」とプラカードで呼びかけていました。こうしたことは決して珍しくないのです。
ロストバゲージの経験
私が初めて海外旅行にいってから35年くらい。平均的な日本人よりは飛行機に乗った経験は多いかと思います。私はこれまでに2度、完全なロストバゲージを経験しています。
1回目はロンドンからアムステルダム行き。待っても荷物が出てこず、ターンテーブルが止まってしまいました。航空会社に報告すると「見つかり次第ホテルに届ける」とのこと。幸い同じホテルに3泊予定で、ロンドンーアムステルダム間のフライトも多かったため、その日の夜には荷物が届きました。
2回目はロンドンからパリ経由でカメルーンのドゥアラへ出張した時です。朝一番のフライトでロンドンを出発し、パリに到着した後、機材準備の遅れで出発が繰り返し延期され、ゲートも何度も変更に。結局17時ごろようやく出発でき、現地到着は深夜1時を過ぎていました。
しかし荷物を待っていると、スーツケースを運ぶ籠(機体に乗せるのを見たことある方も多いと思います)1台分のスーツケースが出たところで止まり、それ以上出てきません。なんと、ほとんどの荷物が積み込まれず置き去りにされていたのです。翌日の便で届くだろうから夜に空港へ取りに来いと言われ、さらに翌々日の朝にやっと引き取ることができました。中には駐在員のために持って行った日本食材がぎっしり。無事渡せてよかったものの、これがインスリンだったらと思うと背筋が冷えます。
「今まで一度もなくしたことがないから大丈夫」と思っている方もいるかもしれません。しかし海外では薬や物品を現地で簡単に入手できるとは限りません。果たして本当に「大丈夫」と言えるでしょうか。
「手荷物に入りきらない」という声へ
次に聞こえてくるのは「手荷物に入りきらない」という意見でしょう。多くの航空会社では7〜10kg程度の持ち込みが可能です。命に関わるインスリンや医療物品よりも優先して持ち込むべきものがあるでしょうか。その他の物なら現地で調達できることも多いはずです。
長期滞在でどうしても荷物が多くなる場合は、航空会社に相談するのがおすすめです。実際、息子が交換留学でアメリカに行った際には相当な量の物品を持参しましたが、事前に航空会社(赤いマークの会社です)に連絡したところ、追加料金もなく、手荷物として認めてもらえました。当日は係員がついて手荷物検査まで丁寧にサポートしてくれました。
長くなりましたが、結論は変わりません。
命を守る大切なインスリンや医療物品は、絶対に預け荷物に入れず、必ず手荷物で。
もちろん最終的にどうするかは皆さん次第です。ですが――それでも、預けますか?
