その日僕は休みだ。
(お店は無休)
一日中家でゴロゴロしていた。
夜遅くお店から電話が入り僕にどうしても会いたいお客様が来られるとの事。
僕は急いで準備をしお店に向かった。
扉を開けると一番奥の席に着物を着た豪華な女性が二人目に入った。
このボロボロのビルの暗い地下にある狭いお店にこんな綺麗で豪華な女性が座っていると、ちゃっちいお店が余計に際立つ。
見覚えの無い顔だ。
その二人の女性の真ん中にはロマンスグレーな感じの派手な男性が座っている。胸元、両手首、そして指にはキンキラのアクセサリーが光っている。
見覚えの無い顔だ。
何と初めて来たのにヘネシーをキープしてくれた様だ。
男性が僕に気付いた!
『おぅ
ママさんよ~
』ん??
この声…
どっかで…
聞いた



うっそぉぉ





あ、あのひろしさんの声だ





マジでぇぇぇ

まるで別人だ

ミナミの高級クラブのママを二人も連れて現れたのだ

ひろしさんは二人のママに僕の事を怖い位褒めちぎりながら紹介をした。
二人の美女はそれはそれは冷めきった表情で軽く笑い後は無言だった。
ひろしさんと僕は乾杯をした。
ひろしさんは一気に飲み干した。
(僕はまだひろしさんの変身ぶりにまだ放心状態から覚めていなかった
)すると、席を立ち
『おあいそ!』と言った。
ありゃりゃ

飲み方まで格好ええやないの

スタッフが会計した伝票を差し出すと確認もせず、一万円札を数枚渡した。
ツケの分とお礼だからお釣りはいらない大声で、しかも笑える程の "ドヤ顔" 言う。
何がどうなったのか訳がわからなかったが、ありがたくお金を受け取った。
『ママさん頑張れよ!』と捨てゼリフをはいて、何かの映画の主人公になった気分でいるのか肩にジャケットを羽織り『あばよ
』と右手を軽く上げ振り返らず肩で風を切りながら歩いて行った。ホンマに単純な人だ

まるで漫画やん

お店に戻ってひろしさんから受け取ったお金を数えた。
全て新札で向きもきちんと揃えられたお金は一万円札が十枚あった。
勿論もらい過ぎである。
でも…
金額では無く
ひろしさんの心が胸にしみた。
ひろしさん又昔の世界に戻ったのだろうか…
僕は何だかとても良い経験が出来たとしみじみ思えた。
ひろしさん、今度こそ、本当に、さようならやね
