ちょっとコワイ話~9~ | 酒とオカマと男と女

酒とオカマと男と女

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お金も無く寝場所も無く街をさ迷ったと言う。

空腹と寒さも限界に来ていた。

悪い考えが頭の中を巡ったと言う。

助けを求める方法も知らなかったと言う。

万引きや恐喝、強盗…

そんな最悪な方法しか思いつかなかったと言う。

ターゲットを探して電車の高架下を線路に沿って歩いたと言う。

僕はとてつもなく怖くなった。

結局ひろしさんは罪を重ねる事は無かった。

まだ組の上の人の事信じていたから。

――――――――
僕は我に返った。

売上げと釣銭をレジ代わりの引き出しに入れたまんまだったのだ。

引き出しはひろしさんから丸見えの位置にある。

(どうしよう…)

と、ひろしさんがトイレに店を出た。

お店は狭く、隣のお店と共同な為、僕の店の真横にあった。

(逃げようか…)
(何で?)

すぐにひろしさんは戻って来た。

僕は「一曲歌いますか?」とカラオケ本をひろしさんの前に置いた。

ひろしさんは僕の言葉に驚きながらもページをめくり始めた。

その隙に、

僕は引き出しからお金を取り出した。
一万円札一枚と小銭を残して。

ひろしさんが決めた曲をセットしながら「タバコ買って来ますんで歌ってて下さいね。5分以内には戻りますんで!」と、わざと引き出しに残した一万円を見せて小銭だけを取って、店を出た。
間違い無く引き出しの一万円はひろしさんにも見えたはずだ。

地上に出て小走りに店を離れた。

僕は怖くて帰ってもらう事も出来ず、逃げる訳にも行かない。何をされた訳でも無い。二本目からは僕が勝手に出したビールだった。

話に聴き入ってしまってたのである。

もしかすると僕はターゲットなのかも…そう一瞬考えた為に気持ちが焦った。

だから、あえて一万円のある事を教えてお店を出たのだ。

タバコ買って戻る際はわざとゆっくり歩いた。

ひろしさんは引き出しの一万円を盗んで逃げてるはずだ。

盗んだのだからもう来る事は無いだろうし、

とにかく、かかわり合いたく無かった。

お店のある通りは真っ暗だった。

(街灯が数本ついてないだけでこんなに真っ暗になるなんて…)

地下への入口に立って階段の下にある店を覗き込んで、耳を澄ました。

作戦は成功だと確信した。

そして、階段を駆け降りた。

…つづく