H20年10月28日の日本農業新聞では、
円高、ドル安による影響が1面に特集されていました。
ポイントを列挙すると、下の通り。
■景気減退による需要冷え込み
■輸入農産物の値下がり
■飼料穀物も値下がり見込み
■農産物輸出の需要の冷え込み
さて、円が高いということは、輸出しにくく輸入しやすい
結果として加工貿易国家の日本の景気にはマイナスに働く、
というのが一般的な見方です。
景気が冷え込み、消費活動も鈍り、
農産物の需要も冷え込むということです。
さらに円高になると輸入品が安くなります。
消費が冷え込んでいるところに輸入品が安く流入してくれば
日本の農業生産にとっては大きな打撃となります。
一方、穀物飼料の値下がりの見込みは、
国内の畜産農家にとっては朗報となります。
なにしろ、国内の畜産はその飼料の殆どを輸入に頼っていますから。
しかし、一昨年来の穀物高騰の中で、米を飼料にする等、
飼料についても自給率を高めていく動きが活発化してましたが、
この円高がその流れをダメにしてしまわないかと懸念しています。
自給率の低い日本ですが、一部の食糧は輸出されています。
これは日本の農業の強化の為の政策的な取り組みで
まだ規模は各品目数十トンと、ごく一部ではありますが、
主なマーケットは中国や台湾の富裕層、他には欧州や米国など。
しかし、ここにも円高の影響により逆風が吹いています。
にわかに活気付いていた国産農業への注目、自給率向上ムードが、
円高によって暗雲が立ち込めてきてしまったという状況です。
折角いいムードだったのに。
日本の輸出産業や製造業とって円高は致命的な問題ですが、
であるだけに、円高対策も充分に研究されています。
80年代以降、数多の企業が生産拠点を中国や海外に移すことで
円高に対抗してきました。
しかし、農業生産は土地を用いて行なうもの。
ただの土地ではなく、生きた農地が必要です。
水、空気、様々な条件がその土地の農産物を育みます。
円高リスクの回避の為にと海外に生産拠点を移せば
それは既に別の農産物です。
そして、残された農地は荒廃し農地として死にます。
これは、しょうがないことなんでしょうか?
農産物を買うということは、実はその土地への投資です。
輸入農産物を買えば、その分国内の生産地へのお金が流れが止まり、
生産力を低下させることになります。
不動産の話じゃありませんが、まるで不動産のような話です。
このことが、どんな悪影響を引き起こすか。
今日の世界恐慌と言われる状況を目の当たりにしている我々には
容易に想像がつくのではありませんか?
こうした状況が続けばどうなるか?
こうした状況の中でなにができるか。
引き続き考えてゆきたいと思います。