初めてバルセロナを

訪れたのは2009年8月

 

かの有名なガウディの

サグラダファミリア教会を

見たいという思いからだった

 

 



 

 

たまたま手にした

一冊の本がきっかけだった

 

 

ガウディの建築に

ふんだんに取り入れられた

双曲線面の構造を

目の当たりにして

興奮したのを覚えている

 

 

それと同時代に生きた建築家

ル・コルビジェ

 

 

たくさんの装飾が

施されたガウディの建築とは

対照的に


華美な装飾を好まず

家を

「住むための機械」

と表現したコルビジェ

 

そのコルビジェが設計した

建築が日本にもある

 

それが国立西洋美術館

 

 

かつて祖母が

この付近で生け花の展覧会を

開催する際には

 

よくこの

国立西洋美術館のカフェに

連れてこられていた


 

といってもまだ幼稚園かそこら

朧げな記憶でしかない

 

「なんかコンクリだらけの

 だだっ広い感じ」

という程度の感想とともに

 

当然ながら

知る由もなかった

 

国立西洋美術館の建築の価値も

そこにある

松方コレクションの意義も

 

 

明治から昭和を生きた実業家

松方幸次郎氏が

 

人々の心へと訴えかける

アートの力に気付き

 

日本の若い画家たちに

本物を西洋美術を見せたい

という思いで

 

私財を投げ打って収集した

コレクション

 

 

カラー写真はもちろん

モノクロであってさえ

写真を見ること自体が

容易でなかった時代

 

 

「日本の若者に本物を見せたい」

「日本に美術館を作りたい」

という松方氏の熱き思いで

集められた美術品の数々

 

その後の第二次世界大戦を経て

大部分が散逸、

一部は焼失

他はフランス政府に

接収されてしまう

 

 

やがて

多くの人々の努力によって

その一部が日本に

返還されることになったが

 

その受け皿として

1959年に設立されたのが

この国立西洋美術館

 

たかがアート

されどアート

 

時として言葉以上に

人の心にメッセージを

送りつけてくるもの

 

それに突き動かされた人々の

ドラマを描いたのが

「美しき愚か者たちのタブロー」

 

 

「すべては一枚の絵画(タブロー)から始まった」

 

というコピーに惹かれて

手に取った。

 

それが原田マハとの出会い

 

美術館のキュレーターという

異色の前歴を持つ著者が

描く実際の歴史を元にした

ストーリーは読むものを

一気にその世界へ連れて行く。

その当時の松方氏の葛藤、苦悩、

そして、戦後の混乱期に

敗戦国としての扱いを受ける中で、

その松方氏の意思を受け継ぎ、

彼のコレクションを

日本へ取り戻そうと尽力した人々、

そんなドラマがありありと描かれている。

 

そこに登場する名画の数々

 

見たことがある絵は

まざまざとそれが思い出され

 

見たことがない絵でも

あたかもそれを眼前で

見ているかのように

させてくれる

 

活字という媒体のみによる

絵画鑑賞

 

まさに

「アートを読む」

 

 

原田マハ氏は

他にも、数々の画家を題材にした

作品を出している

 

だがその多くは

その画家自身ではなく、

実在の、もしくは架空の

画家を取り巻く人々の視点を

通して、

 

その画家の生き様を

語らせることで

 

よりリアルな世界観を

読むものに与えてくれる

 

とりあげる画家も

誰もが知っているような

有名な画家ばかりだ

 

 

2017年刊行の

「たゆたえども沈まず」

 

 

 

 

これは生前は

絵が一枚しか売れなかったという

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの話

 

 

といっても、もちろん

これを語るのはなんと

当時パリで美術商として

活躍していた日本人

林忠正(実在)の

ビジネスパートナーである人物

 

この人物自体は架空と思われるが

実在の人物と絡めて

書かれることで、

 

あたかも伝記を読んでいるかのような

鮮烈な印象をもたらす

 

 

2016年刊行の

「暗幕のゲルニカ」は

その名の通り

ピカソのゲルニカをめぐるストーリー

 

 

 

 

 

現代と

ゲルニカが描かれた

1930ー40年代との

 

二つの時間軸がパラレルに

描かれるミステリー

 

ファシズムが吹き荒れた

当時のヨーロッパにおいて

 

ピカソがいかにして

絵筆一本で戦いを挑んだか

 

芸術の持つ力を

痛感せずにはおれない作品

 

未だみたことのない

実物のゲルニカを

ぜひみたいという思いに

かられる

 

 

それに先行すること4年

そのピカソも高く評価したとされる

アンリ・ルソーを描いたのが

「楽園のカンヴァス」

 

 

 

 

そのルソーの幻の作品の

真贋判定をめぐるミステリー

 

これもまた

複数の時間軸が存在し

それらが並行に進み

 

最後に一つに

より上げられるという構成

 

 

 

 

短編集も面白い

 

「ジヴェルニーの食卓」は

表題作を含む4つの短編集

 

 

 

 

アンリ・マティス

エドガー・ドガ

ポール・セザンヌ

クロード・モネ

 

と豪華な画家たちを題材に

描かれる

 

 

こうした

印象派を中心とする画家たち以外にも

「アノニム」は

ジャクソン・ポロックの

未発見の作品をめぐる

サスペンス

 

 

 

こちらの舞台は

なんと現代の香港!

 

ビルや街並みの描写など

香港在住にとっては

非常にイメージしやすい

 

 

 

どちらかといえば

近代アートの画家を

テーマとした小説が多い中で

 

「風神雷神」は異彩を放つ

 

 

 

 

 

 

 

この作品のテーマは

国宝「風神雷神図」を描いた

俵屋宗達

 

時は16世紀後半

俵屋宗達と

天正少年使節団、

さらにはカラヴァッジョ

 

小説でありながら、

緻密な情景描写と

著者のアートへの造詣の深さから

 

あたかも史実であるかのように

思わせてくれる

 

 

必ずしも画家にまつわる

作品ばかりではない

 

「風のマジム」は

南大東島で

ラム酒作りに取り組んだ女性の話

 

 

 

 

ちなみにこのラム

極めてクリアな味わいで

ロックでもカクテルにしても行けます

日本国内なら

アマゾンで買えるようです

 

 

 

 

 

 

他にも

「リーチ先生」は

明治から昭和を生きた陶芸家

バーナード・リーチの話

 

 

 

原田マハの作品は

必ずしもアートやものづくりに

関連する話ばかりではないが

 

いずれも読み終わった後に

常に清々しい清涼感を

もたらしてくれる

 

 

やはり

アートが絡んだ作品の方が

より熱量を感じはするが。。

 

 

数々のアートを

「読ませてくれる」

原田マハの作品の数々

 

機会ありましたら

お試しくださいませ

 

 

 台風前のほっと一息

晴れ間が顔をのぞかせた

今日の香港

 

「風のマジム」でも

描かれた

ウチナーモヒートを飲みながら

 

 

 

読むのはこちら

 

 

「本日はお日柄もよく」

 

 

 

 

 

 祝🎊600回🙇