そういえば最近AIの開発に関して、よく「責任」に関する議論が展開されるようになった。
AIは治外法権的にそれぞれの人間のアドバイザーになり、責任を取らないのに方針を決めていく。これでは説明責任を誰も取ることができず、AIに企業の行末を放任することになりかねないと言うことである。
だが、この議論は日本では正直流行らないだろうなと思っている。
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日米の組織論としてよく言われることは、情報管理の方法であると言われる。
日本は組織の中で明確に責任範囲を定めない文化と言われる。ロールが曖昧で、なんでも横断的にできるような人間が評価されるが、予算は役職に紐づくので、部下は曖昧なロールの中で責任を取らない範囲で放任される状況が生まれる。失敗したら暗黙のルールによって制裁されるが、現場起点でのアイデアでうまくいくものがあれば全体に通される場合もある。よくいえば現場主義であり、悪くいえば放任である。
逆に米国はロールがはっきりしているので、アクセスできる情報の種類に濃淡がはっきりしている。だからあらゆるものがSalesforceで管理されるし、部門の末端がミスをしないようなオペレーションをそもそも設計する。ミスが起こった場合は上層の設計ミスが原因であるし、ロールの範囲内では担当している人間によって全てコントロールされる。よくいえば統制であり、悪く言えば硬直である。
上記の一般的な差異を前提にすると、現場にて自由なイノベーションや部門横断のプロジェクトが生まれるのは日本である。AIを活用して業務を効率化しようとした時に自由な発想で勝手に魔改造ができるので日本の組織はAIと相性が良いのではと言うことである。
一方で、自動化したり、省力化したりと言うことにAIを使えないのが日本でもある。AIで業務が大胆に効率化されたところで、そもそもロールと人間が紐づいていないので人間を正当な理由なく切れない。その場で活躍してもらい、新しい領域を担当したり、今までやれなかったことを見るようになる。(こうして人間の仕事は際限なく増えていくのである。)
なので、「責任」を議論されてもいまいちピンとこない。なんだか経営者の意思決定のためのツールの売り手論理のように聞こえてしまう。これは、売り手がアメリカ式の組織をイメージし、実態はまだまだ日本式も多いと言うギャップから生まれている。
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さて、もう一歩抽象度を上げたときに、そもそも責任とはなんだろうか?私たちは何かに責任を持っていたのか。
例えば企業の部長が部門売上に責任を持っていたとして、責任を行使するために部下を酷使することは今の時代は出来ない。出来ないし、別に責任を全うしなかったとして死ぬわけでもない。懲戒免職になるわけでもない。(なっても退職奨励金がもらえることも!)
信頼という形が評価に表れて、数年先の役員人事に影響したりするかもしれない。けれどその程度である。そのプロセスを評価する別の企業に横断すれば、今までのKPIが未達なのかどうかなどさして大きな意味を持たなくなる。
私が言いたいのは、転職が良いという話ではない。
組織での立場は信頼か期待により成り立ち、それぞれの個人は別に組織に対して責任を負っているわけではなくて、信頼を最大化するゲームをプレイしているということだ。ゲームのルールの中で信頼を最大化できるように行動するだけだ。
組織の論理に基づいて責任の所在を押し付けようとしても、のれんに腕押しである。個人が組織と行動を共にするのは、責任というよりはゲームの重力を楽しむことによる。会社からのプレッシャー程度の気持ちで個人は業務にあたることができる。
子育てなどもそうだ。親の子どもに対する責任というのは存在せず、子どもが自由意志に基づいて行動するのを補助するように親の行動原理・生き甲斐がそうさせているだけだとも言える。子どもが成長するのを楽しめるから子どもを産むという選択をするのであり、選択の結果に対してゲームのルールに沿って生きていく。責任はない。
上記の考え方は世代によって濃淡があることは理解する。40代以上にこの話をしたら眉唾を顰めて、こいつは楽観主義のプータローだと取り合わないことだろう。
だが、可能性の一端としてはあるのである。
私の立場はこうだ。個人は責任を負うべきことなどこの世には存在せず、従うべきルールのみが存在すると。
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AIが責任を負えるのか?という議論に対しては、やらせてみればいいというのが私の立場だし、これは日本人的なのでは、と思うのである。やらせてみて思ったより全然簡単に目標に到達するのであればAIを使った主人の手柄だし、何か誤作動を起こした時はAIを使った主人がケツを拭くしかない。
AIが責任を負えるのか?という問い自体が、AIが自律的に誤作動を起こし、会社を崩壊させるのではというSF幻想に基づいていると思われる。それは使っている側の指示の仕方が悪いんでしょう。