いずれにしても、戦争が起きるためには、武力が称揚される環境が必要である。そして武力の称揚は、それがヒトラー・ゲッペルスにより簡単に国民に浸透し、日本では開国というトリガーが自動的に臥薪嘗胆と結びついてしまったように、その火種を起こすのは簡単なのである。
坂の上の雲は十分素晴らしい小説だが、あの本が手放しで称揚されるあたり、武力というものは中立なファクターとして未だ日本人に受け入れられる可能性があることを示すようなものだろう。今も含め、明治時代以降の日本という国のアイデンティティーを気にし続ける国粋主義に陥っているし、どうにかして日本という国を他国の脅威から守り続けたいと願っていることは付記して置くべきだろう。(一方で平和ボケという指摘もあるけども。)
その意味で、今回の本は、日本の国力は文民である官僚が底上げ、そして作り上げて行くものであることを再認識させてくれる。そういう意味で、政治は羅針盤、やじろべいのようなバランスを取るものなのだろう。日本は何が起こっても戦争をするべきではないという硬い意思を、徹底して示したのが広田弘毅であり、彼の実務的な努力を持って、後世に残すべきだと思われる。