生活保護費横領事件判決の詳細 | だばなか大介オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本共産党河内長野市議会議員 だばなか大介

平成27年1月16日

生活保護費業務上横領事件の判決概要

日時 平成27年1月15日(木)午前10時30分から同40分
法廷 大阪地方裁判所堺支部 2階 202号法廷
事件番号 平成25年(わ)第795号等
被告人 宮本昌浩(弁護人:加藤知徳弁護士)
罪名 業務上横領(刑法第253条)
係属 第1刑事部2係
裁判官 重田純子

【判決の主文】

1 被告人を懲役3年に処する。
2 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
3 この裁判確定の日から5年間、その刑の執行を猶予する。

【刑罰に処する理由】

被告人は、生活保護費追加支給分の資金前渡口座の保管等の業務に従事していたが、平成21年8月7日から平成22年11月4日までの間に市役所内に設置されたATMから259回にわたり、合計8261万129円(起訴総額と同じ)を出金し、自己の用途に費消する目的で着服し、もってそれぞれ横領したものである。

【刑罰を選択した理由】

量刑理由としては、259回にわたり合計8261万129円を横領した事案で、多額の公金横領であり、結果は重大。市政の停滞や信頼の喪失など、生活保護業務のみならず、市政全般に多大の悪影響を与えており、その点も看過できない。
犯行態様も、ケースワーカーに書き損じに備えるためとの嘘の説明をし金額の記載のない領収書に受給者の押印をもらうよう指示をしたり、生活福祉課に保管していた印鑑を無断で使用するなどして、不正出金に見合う偽の領収書を作成するとともに、生活保護業務のシステム担当者として有していたアクセス権限を悪用して、システム上でも不正な処理をして事件の発覚を免れていたものであり、手口は巧妙で、計画性も認められる。
被告人は、このような方法で約1年3ヶ月もの長期間、極めて多数回にわたり、横領を繰り返したのであり、常習性は顕著で、悪質な犯行である。
被告人は,動機原因について、生活保護業務に携わるようになり多忙を極める中、資金前渡金を誤出金するミスを重ねた。自己の評価が下がらないよう、誤出金に見合う領収書を作成し、ミスを隠蔽した。
そうするうち,資金前渡金を自由に出金することで,仕事によるストレスや、徹底した倹約による私生活上のストレス等が解消されると感じるようになり、ストレス解消を目的として長期間にわたり不正出金を繰り返したなどと供述しており、極めて身勝手というぽかない。
市が被告人に生活保護業務関連のシステム担当と経理担当とを長期間兼務させたことや、適切な管理・監査体制が確立されていなかったことが被害拡大の一因であるとしても、生活保護業務全般に精通していた被告人が、管理体制の不備を突いて犯行したものであり、被害額、常習性等に照らせば被告人の刑事責任は重く、実刑の選択もあり得るところである。
しかし、他方で、被告人に有利な事情をみると、被告人は横領した現金を現金のまま、あるいは預貯金、投資信託、株式などの金融商品に換えて保管していたところ、市との合意に基づきそれらを解約して被害弁償資金として市に預託しており、今後本件犯行による被害額のほか、起訴されていない余罪についても被害額を確定した上で、遅延損害金等を合わせた全額を弁済できる見込みである。
 確かに、検察官が指摘するとおり、本件犯行が市政全般に及ぼした悪影響は軽視できず、単に金額が返還されただけでは補いきれない損失があったと言える。
 しかし、被害額は多額であるものの、本件犯行により市の財政状況が深刻な事態に陥ったというような事情は認められず、被害弁済により経済的被害が回復されることは、財産犯である本件において、やはり量刑上重視すべきである。
また被告人は、一貫して本件犯行を認めて反省の態度を示しており、市、市職員及び市民に対する謝罪の弁を述べるとともに、支えてくれた家族のためにも更生したい旨述べていること、前科前歴はなく、これまで社会人としてまじめに生活をしてきたこと、本件犯行が新聞等で報道され、当然のことながら市を懲戒免職とされるなど、一定の社会的制裁を受けたこと、長期間身柄を拘束されたことなどの被告人のために有利に汲むべき事情も認められる。
以上によれば,本件は重大な事案であり、被告人の刑事責任は重いが、被害弁済が見込まれるほか、前記の被告人に有利な事情を十分に斟酌すれば,今回は社会内で更生する機会を設けるのが相当であり、主文の刑を定めることとした。

【裁判官の説諭】

執行期間中は、実刑などで執行猶予が取り消されるので、十分注意をするように。
また、執行猶予期間中だけでなく、その後も、本件犯行により市や市民の方々、市の職員の方々など、沢山の方々に被害を与えたということを決して忘れないでください。
そして、何度も犯行を止めるきっかけがあったはずなのに、結果として長期間にわたりこのような犯行を繰り返したことを十分に自覚して重く受け止めてください。
そして、市との約束どおり、きちんと被害弁済をして、そしてご家族のためにも必ず更生してください。