FtMの陰茎形成手術は非常にコスパが悪い。


調べたことがある人は分かると思いますが、必要な期間、金額、それに対する出来栄え。GID当事者であっても釣り合っていないと考える人も多いでしょう。

むしろ釣り合っていないからやめようと納得できる方が良かったと私も思うことがあります。


しかも、陰茎形成手術を行う人の大半が理由として挙げる立ちションへの憧れはそこまでありません。

選択肢がないことへの苛立ちはありますが、この後立ちションができるであろうことが楽しみで仕方ないといった心持ちではありません。

自分でも明確な目的がない割に人生としては回り道だなあと思っています。


しかし、この手術を「無意味」「奇怪」と何も知らずに適当に言われるのは心外です。

そのあたりも含めてお話できたらと思います。



FtMとMtF、全てを引っくるめた中で圧倒的にお金かかる傾向にあるし面倒なことが多いのがこの陰茎形成手術だと思います。

もちろんMtFの造膣も並大抵じゃない痛みや苦労があるのは知識として存じています。

ただ、技術的な難易度として、FtMのステージⅠやMtFのSRS全般を請け負ってる病院は日本含めそれなりに数があるのに、FtMの陰茎形成手術を行っている病院が少ないあたり差があるのではないかと。


そして、FtMの陰茎形成手術はただただ奇怪なものと考えられている印象も強くて、「ちんこなんて付けてどうするんだよ」と言われてることが多いと感じています。

戸籍変更に際して不要な条件だからこそ、やる方がバカだとFtM当事者や関係者にも本気で言われることもある。


陰茎形成手術は安くても200万円程度はかかる(胸オペや内摘は別料金)し、目に見える大きい傷が残り、元も子もない言い方をすればただの肉でできた放尿用ホースです。補助具を使わずに性行為をしたければ、インプラントを入れる必要もあります。


大変でクオリティが高いとは言えない手術なのは私らも分かっていますが、外野の人たちがそれを承知の上で行った陰茎形成の写真を出して「ひどい改造手術!!」「気持ち悪い🤮」と槍玉に挙げられることすらある始末で。

アンチトランスジェンダーの主張に写真が使われているのを見たことが何度かあり、そんな危険性も出てくるので私は写真は上げません。本当に必要な人に情報を届けたい気持ちはあるのですがすみませんね……

パス度が低いトランス女性(そもそもただの女装男の写真が多い気はするけど、女性に戻るために努力している方の写真を利用するのは許しがたいです)の写真と同様に、反対活動にあたって一般人が受け入れにくい写真をあえて使って不快感を抱かせようとするのは迷惑極まりない。


しかも前腕や大腿部を使用した陰茎形成手術って、純男性で事故で陰茎を失ったりして、そもそも陰茎自体の材料がない場合の再建でも使われることがある手法(全く同じではないとは思いますが、他人からの移植以外だと腕や足を材料にすることはあるみたいです)で、FtMの“改造手術”に限った話ではないからSRSに対する批判のみに留まってないんですよね。

言ってる本人が純男性なら自分が、女性ならパートナーや肉親など身近にいる大切な男性が男性器を失ってこの手法の手術を提示されたら「非人道的な改造手術」って思うのかよって話ですよね。

生まれつきの有無の差はあれど、こっちの温度感としては同じなんですよ。

共感はできないと思いますが、私たちは「女性だけど男性になりたい」のではなく、「男性なのになぜか女性だから戻したい」なのです。



ちなみに私は何年かは陰茎形成手術を行うか迷っていました。

その最大の理由として、どう頑張っても隠しきれない傷が残るというものがありましたが、陰茎を失ったもしくは生まれつき非常にミニマムな場合にも使われる手法だと知ってから心理的なハードルが下がりました。

仲良くもない人に色々聞かれた場合に言い訳ができるという安心感は大きいです。


もちろん陰茎形成を行いたいと思わなければGIDじゃない!とは全然考えていません。

例えば純男性でも事故で陰茎を失って、「何百万かけて腕か足から肉巻きホースを作ることはできるよ。大きい傷が残るし見た目も近くないし勃起もしないけど。」と言われたら、ちょっとやめておきます…となる人はいるでしょうし。

特にこの手術に関しては、違和感がないのと手術を行わないのはイコールだとは全く思いません。


陰茎形成手術は現在でも手探りな印象がとても強いです。少し前に手術を行った人の話を聞くと手法が変わっていたり、本当に発展途上です。

例えば、私は太ももからの手術を予定していますが、以前は太ももの脂肪の厚さに規定がなく、太めの人だとものすごく太くなってしまうこともあったそうで。

私のタイミング(2023年のガモンクリニック)だと、摘んだ時に皮膚の幅が1.5cm以下でないといけませんでした。満たしていない場合、脂肪吸引を行うか、太ももからの手術は諦めるかです。

これって、考えてみれば成人してすぐのタイミングで手術をしていたら、恐らく太い陰茎にされていたか、腕からにしていたかどちらかになっていたはずんですよね。

早くやればいいってものでもないし、かといって遅すぎると健康上の理由で断られるリスクも上がるし、半端な時期だとそれはそれで仕事におけるキャリアの大事な時期をぶった切ることになるし、難しいですよね。


何はともあれ、迷っている内はやらないほうが賢明だと私は思います。

やらないと精神的におかしくなると感じたら相談するのがいいのではないかなと。

もちろん手術を行った大体の人はそうだと思いますし、その決意を「無意味」「気持ち悪い」と一蹴する声が減るといいですね。



陰茎形成手術とは話がズレますが、少し近い話題なのでついでにトイレの話について。

FtMひいてはGIDのことを分かってない男が「女(FtM)が男としてやっていくなんて舐めてる」「なんであんな汚い男子トイレに入ろうと思うのか」「ちんこなんてあっても邪魔だよ😅」と悪びれずに書いてるのを見かけるたびに、トランスジェンダーが話題に取り上げられようと性同一性障害の理解が進むことはないのだろうと感じています。

単純に「男子トイレに入りたい変わった女」だと思われてるんだろうなあと。


そもそも私だって男子トイレ汚いし入りたくないです。

みんなどの便器でも雑に小便撒き散らしててどこもかしこも汚いから嫌です本当に。まあまあ綺麗なトイレでも床がベタベタしてキッッツい。個室は座れや。

個室で立ちションしたいならせめて便座上げてからしろ。座る部分に小便跳ねてんだよ。

小便器周りも結局ベチャベチャ撒き散らして付近が超絶ベタベタして悪夢みたいな環境だし。

ちんこ触って、水でサッと流しただけの知らん人間が触った扉の取手とか誰が触りたいんですか??????

こんなクソ汚い男子トイレに入りたくて仕方ないわけないだろ。

ほんと男子トイレに入りたい女の存在に鼻を膨らませてるみたいで気持ち悪いな。悪いけどお前の隣に既に埋没してるFtMがいても気が付いてないだけだよ。

それでもそっちが自分が入らないといけないトイレだから入ってるんですよ。お前らは男子トイレが汚いからって理由で女子トイレ入るのか?という話で。

(パス度や戸籍の関係で、入って法的に問題が生じる、白い目や好奇の視線を向けられるかもしれない事情を鑑みなければ)精神的には多くのGID当事者はこんな温度感なのではないでしょうか。


私は陰茎形成を目指してるので、立ちションしたい前提でよくお話されるんですけど…別に立ちションはそんなにしたくはないんですよね……小便器周りベタベタがちだし、自分にも尿が跳ね返ってくるし周りが汚くなるし……

本当にただただ、あるはずのものがない違和感と、外見がなんやかんやで女性器の名残があるのが許せないだけなんですよ。

将来、介護を受けないといけなくなったとして、今の体を晒すのは絶対に嫌です。

年取って右も左も分からなくなった状態とかならまだしも、もし意識がクリアな時に何かしらの事情で体が動かなくなったとしたら。そう考えるとゾッとします。



まあ、勝手に適当な批判をするなとは思うんですけど、やっぱり推奨はあまりしません。

当然エピテーゼくっつけてる方が見た目もいいし。陰茎形成手術をするお金でお高めのものでも10個くらい作れるし。

前段階の尿道延長するだけでも尿は出にくくなります。

私は特に出にくいのかもしれませんが、まあ、無理な角度になっているので多かれ少なかれ出にくくはなると思います。めちゃくちゃ尿意を感じてても、勢いよくは出なくて微妙な感じです。

そうはならない人もいるのかもしれませんが、尿道延長をするとはこういうリスクを負うということです。

冷静に考えるとステージ2以降って本当にリスクに対するリターンが少ない。生物ってメスが基本でできてるのを痛く実感します。


それくらい分かってるし、立ちションへのこだわりもさほどないけど、今の外性器にとてつもない嫌悪感があって、普段から気になりすぎて辛いわけで。

私は男になりたい!!って思ってるわけじゃないから、この後の手術も楽しみでは特にないですしね。

なんか、まあ、上手くいけば大体本来の人間の形になれるんだなくらいに思ってます。


前も言ってると思うけど、性自認を確実に女性にできる治療法が確立されているなら私はそちらを選んでいたと思います。性別を超えたいなんて少しも思っていません。まともに生きるために超えたくもない壁を何故か超える必要があって、“好き好んで性別を変えた人”として見られないといけない世の中です。

私の人生を自分ごとで生きたいだけなのに、体が自分のものだと感じられないからずっと自分の人生を生きている気がしない。

そのためには必要な手術だと思ったから、若い時代のキャリアも貯金も犠牲にして陰茎形成手術をすることに決めました。



確かにFtMは埋没しやすいし、出来の良いエピテーゼなどもあり、手術を最後まで行わなくても生きやすい場合が多いです。

私もそれなりに普通に暮らしているけど、まだずっと苦しいままです。

埋没できていようとすごく苦しいのに「FtMはすぐ埋没できて、世間にも受け入れられやすいし、楽でいいよな」なんて言われているのを見ることもあるし、それに対し反論しきれないのが悲しいです。

何度でも言うけど、私たちは「女だけど男として生きている」わけではなく、「男なのに女の体に押し込められてる」から、パスさえできれば気楽に生きられるわけではないんです。


GIDの苦しみは生きてる限り続きます。治療によって軽減はできるけど、ゴールなんてない。どれだけ社会で普通に受け入れられていても、生きてるだけで辛さはありつづけます。

でも当事者や関係者ですら性同一性障害の何たるかを分かってくれないことが多くて、辛さを相談することすらもう諦めています。

私は表面的にすんなり普通に生きられてしまってるから、分かってもらう努力なんてしても仕方ないんですよね。

この悩みは終わりのない袋小路だって、自分が性同一性障害であると自覚した時から分かっていましたとも。



色々脱線しましたが、相変わらずテープかぶれや乾燥で痒くて仕方ないし、転職を考えるに際して手術あるの嫌〜〜と思っている人の今の考えでした。


トランスジェンダーか悩んでる人とか、性同一性障害で手術するか悩んでる人とか、そういった人が身近にいる人とか、逆に既に一通り手術終えてる人とか様々な人が見ていると思いますが…まあ諸々参考程度にお願いしますね。

でも、埋没してなおしんどいと感じてる話って意外と見ないし、それぞれ悩みがあるんだなと知っていただけたらと。

当然、治療は少なく済む方がいいです。

そのためには思い詰めないのも大事だと私は考えています。 私は普段隠しているネガティブな感情をここにぶちまけて、楽しいことはほとんど書いていません。


特に今後を考えている当事者の方は引っ張られすぎないようにしてくださいね🫡