以前もこの話題を取り上げ

同性婚を認めたり、医療や公衆浴場,トイレなどの身体的特徴として性別の情報が必要ではない局面で性別の情報を求める(表に見えるようにする)機会を減らす、性別らしさのステレオタイプをなくしていき、トランスジェンダーが生きやすい環境整備がまずは必要という意見は変わりません。



しかし、前回の記事ではトランスジェンダーとトランスセクシャル(性同一性障害)を切り分けずに考えていたこともあり、その視点から改めて書かせていただけたらと思います。

そもそも特例法は生まれた体で生きるのがどうしても苦しくて手術をした人たちの救済措置だと私は捉えています。
成り立ちなどを追っても、発端は手術済みで社会的に埋没している人たちのために成立した法律だったかと。
だから、自発的に手術を不要としているトランスジェンダー(≠性同一性障害)に向けた法律ではないという解釈です。
性同一性障害の当事者としては、「手術しなくても精神的に問題ない」ということが理解できません。
なぜなら、性同一性障害は自分の体に違和感を抱いている状態であるはずだからです。

トランスセクシャルである私たちもトランスジェンダーでないわけではないですが、トランスジェンダーだがトランスセクシャルではないという層は存在します。
ここでは狭義でのトランスジェンダーと表現します。

そして狭義でのトランスジェンダーとトランスセクシャル(性同一性障害)では以下のような違いがあると思っています。

狭義でのトランスジェンダーは「自分は男(女)だけど心は女(男)だから、異性として扱ってほしい」
トランスセクシャル(性同一性障害)は「自分は女(男)なのに体が男(女)だから、体を自分の性別にしたい」


恐らく中間に属する人もいるでしょう。
しかし、今私が特例法の適用外ではないかと考えているのはこの狭義でのトランスジェンダーの方たちなので、一旦議論しないこととします。

病気などの理由で手術が受けられないから、手術なしの状態で申し立てをしていたなら理解できますが
選択的な未手術であれば、特例法が適用される性同一性障害ではないと私は思っています。
生殖不可にすることが人権侵害という意見も分かりますが、じゃあ(FTMであれば)妊娠しても構わないということでしょうか?人工授精や代理母を利用したとしても、自分の体の性別の遺伝子を使って、父母になりたいのですか?
ちょっと私には分からないです。遺伝的であっても私は“母”にはなりたくないです。

私の後者の考えは極端かもしれませんが、性同一性障害のFTMであれば妊娠したくないのは共通だと思いますし、そもそも自分に子宮や卵巣があるのが許せないという考えでしょう。
自分に異性の性器があっても許容できるなら、トランスジェンダーではあったとしても性同一性障害ではないと私は思います。

ここまで性同一性障害であるなら手術を望んで然るべきみたいな書き方をしましたが
手術自体にリスクは付きものですし、迷うくらいならしない方がいいと思っています。
実際、今私は手術に臨むにあたって1ヶ月以上ホルモン注射を打っていません(普段は3週に1度)が、とにかく頭が痛いし目眩もしています。個人差はありますが、一生薬に頼り続けないと不調に陥る体になる可能性があるということです。


少し話は逸れましたが、「異性として生きたい」から戸籍は変えたい、でも(身体的に可能かは関係なく)手術までは望まないといった狭義でのトランスジェンダーが特例法を適用できてしまうようになるのは、やはり望ましくないと私は感じます。

※補足
身体的な理由で手術が不可能な性同一性障害の方への救済措置はあった方がいいとは思っています。
再度言いますが、あくまで身体的な違和があまりない方への安易な適用が可能になりかねないことへの懸念です。

今までの私の苦労とかはどうでもいいです。例え手術要件がなくても私は手術していたので。
ただ、性同一性障害の人たちと声を上げている狭義でのトランスジェンダーの方たちと同じ考え、感覚だと思われることを憂慮しています。

性同一性障害で悩む人たちは、性別を超えた生き方をしたいと望んでいるわけではなく、自らの体に苦しんでいます。
それなのに、性自認が体と一致しないことを「個性」「異性になりたい人」と捉えられるのが普通になったらたまったものではないです。
大手術が必要な病気のことを「個性」と言いますか?

別の話ですが…最近話題に上がりがちな発達障害でも似たような現象が起きていますよね。
本当に支援や治療がないと生活が困難な発達障害の方が、診断のない自称発達障害の人たちの大きい声に埋もれることがあるといったような。


私としては性同一性障害を障害とするなというのもしっくり来ませんし(蔑称として障害を用いるのが望ましくないのはそうだが、実際実生活に支障が来されていたので障害で間違いないと思う)、性別を個性と捉えているトランスジェンダーとの線引きをしっかりしてほしいと思うのが、正直な意見です。

どうもスッキリしないので、書かせていただきました。
性同一性障害の当事者の一人が感じていることでした。