詩人 山之口 貘
「思ひ出」
枯芝みたいなそのあごひげよ
まがりくねつたその生き方よ
おもへば僕によく似た詩だ
るんぺんしては
本屋の荷造り人
るんぺんしては
暖炉屋
るんぺんしては
お灸屋
るんぺんしては
おわい屋と
この世の鼻を小馬鹿にしたりこの世のこころを泥んこにしたりして
詩は、
その日その日を生きながらへて来た
おもへば僕によく似た詩だ
やがてどこから見つけて来たものか
詩は結婚生活をくわへて来た
あゝ
おもへばなにからなにまでも僕によく似た詩があるもんだ
ひとくちごとに光つては消えるせつないごはんの粒々のやうに
詩の唇に光つては消える
茨城うまれの女房よ
沖縄うまれの良人よ
沖縄出身の詩人である。
山之口 貘(やまのくち ばく、1903年(明治36年)9月11日 - 1963年(昭和38年)7月19日)は、沖縄県那覇区(那覇市)東町大門前出身の詩人である。本名は、山口 重三郎(やまぐち じゅうさぶろう)。197編の詩を書き4冊の詩集を出した。
上京後、職を転々としながら放浪生活を送る。金子光晴の知己を得て詩誌「歴程」に参加。生活苦を風刺的にユーモアを交えてうたった。第1詩集『思弁の苑』(1938年)のほか、『鮪に鰯』(1964年)など。
