東京夜光「悪魔と永遠」13日に全公演を終えました。ご来場いただいたみなさま、応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。

PCR検査を無事に通ったこと自体が奇跡のようでしたが、大雪だろうが開ける幕も、客席が空っぽでは閉めるしかありません。
そうでなくとも高いチケットを買っていただき、足を運んでくださったこと、うれしかった。ありがとうございました。

演劇にとっての「成功」が何かわたしにはわかりませんが、経済のためならそもそも演劇をやらない方が良さそうですし、東京夜光にとっては初めて本多劇場に進出することが、やっぱり大きなことだったと思います。

千秋楽で丸山くんが話していたような本多劇場に通った思い出もなく、新劇の世界で歩んできたわたしは、みんなのなかでも憧れが薄かったとは思いますが、劇場建設中に民藝の音響スタッフも訪ねて…、なんて話を聞くとその過去のなかに入り込むようでわくわくして、
なにより舞台から客席まで、広く近いあの空間は、秘密の小屋のようで船のなかのようでスノードームのようで。

あの空間に入ったひとにしかあの世界は言葉にされえない。演劇はいつだってそうですが、今はもう手に入れられない時間、同席していたひとにしか触れられないものを生み出したことが、今のわたしには貴く思えます。


作品全体のなかで、特に女性として疑問に思うことはなるべく演出家に伝えたつもりで、もちろんすべてが反映されたわけではありませんが、伝えることは今のわたしにとって大切なことでした。
あの舞台が誰かを不必要に傷付けることがなかったよう願います。そして誰かを不必要に傷つけることにも利用されませんように。
あの舞台が誰かにとって、生きる励みになったならさいわいです。


今は目の前に広がる時間と、徐々に片付いていく部屋を眺めています。つぎの芝居に繋がっていくまでのこの時間がわたしは好きです。たくさん絵を観るつもりです。


最後に、
わたしが直接伺っただけでも、コロナに関連したキャンセルが何件もありました。今体調を崩したり、不安ななかにいらっしゃる方々が良い方へ向かってゆかれることを、心から願っております。
どうか、みなさまの健康が守られますように。


2022年2月23日
笹本志穂