通学路に、イチジク畑があった。
足を踏み入れたら、『わがままな巨人』のおじいさんが出て来そうな、憧れと畏れが混じった場所。
木になったイチジクの実は、おいしそうとも思えなかった。熟すと、赤い実にカラスが群がる。落ちた実の腐った臭い。毎年目にするこの果物を、わたしは口にしたことがなかった。
それから少し大きくなって、わたしはパックの中で整列したイチジクと出会う。それはどうやら高価らしく、甘く、おいしくて、わたしの期待を裏切った。
先日、旅先からのお土産をいただき、袋を覗くと、思いがけなく二つの果実がころんとして、わたしを見ていた。
向田邦子の「いちじく」が思い出された。確か、著者は原稿の締め切りが差し迫るなか、ブランデーでいちじくのコンポートを作るのだ。
いつか来客があったとき、うちにはコルク抜きが無くて、買ってきた赤ワインがお預けになったことがある。それを勝手に開けて、いただいたいちじくをことことと煮た。
向田邦子と違い、お酒を飲まないわたしには、何のためらいもない。
生でも充分おいしいいちじくだったが、最後にレモンを加えて仕上げたコンポートは、贅沢な一品となった。
山種美術館の速水御舟展で、天仙果を描いた作品があった。
天仙果とは、見る限りどうやらいちじくのようだ。記憶ではグロテスクであったその葉も実も、今や魅力的で、愛着を持って見つめた。
スーパーに並ぶイチジクに、わたしはいつも惹かれ、そしてやはり買わない。
いつだってイチジクは、手を伸ばせば取れる、しかし伸ばす気はしなかった果物だから。
いちじくとチーズのパン、いちじくのタルトなど。いつの間に垢抜けて、手の届かないものになってしまっただろう。
足を踏み入れたら、『わがままな巨人』のおじいさんが出て来そうな、憧れと畏れが混じった場所。
木になったイチジクの実は、おいしそうとも思えなかった。熟すと、赤い実にカラスが群がる。落ちた実の腐った臭い。毎年目にするこの果物を、わたしは口にしたことがなかった。
それから少し大きくなって、わたしはパックの中で整列したイチジクと出会う。それはどうやら高価らしく、甘く、おいしくて、わたしの期待を裏切った。
先日、旅先からのお土産をいただき、袋を覗くと、思いがけなく二つの果実がころんとして、わたしを見ていた。
向田邦子の「いちじく」が思い出された。確か、著者は原稿の締め切りが差し迫るなか、ブランデーでいちじくのコンポートを作るのだ。
いつか来客があったとき、うちにはコルク抜きが無くて、買ってきた赤ワインがお預けになったことがある。それを勝手に開けて、いただいたいちじくをことことと煮た。
向田邦子と違い、お酒を飲まないわたしには、何のためらいもない。
生でも充分おいしいいちじくだったが、最後にレモンを加えて仕上げたコンポートは、贅沢な一品となった。
山種美術館の速水御舟展で、天仙果を描いた作品があった。
天仙果とは、見る限りどうやらいちじくのようだ。記憶ではグロテスクであったその葉も実も、今や魅力的で、愛着を持って見つめた。
スーパーに並ぶイチジクに、わたしはいつも惹かれ、そしてやはり買わない。
いつだってイチジクは、手を伸ばせば取れる、しかし伸ばす気はしなかった果物だから。
いちじくとチーズのパン、いちじくのタルトなど。いつの間に垢抜けて、手の届かないものになってしまっただろう。