メリエスに映画館で出会えるなんて!

3Dメガネを外しながらため息が出た。

「戦艦ポチョムキン」「市民ケーン」「勝手にしやがれ」…何が特別なのか分からなかった映画論の授業。メリエスも、そんな風にして知った。

女の先生がどこかしゃれていて、外国人の血、というより魔法使いの血が入っていそうだった。映画から抜け出してきたような、ミステリアスな匂いがした。

つまりわたしは、授業中、確かに前を向き、そういった関係のないことを考えていた。

リュミエール兄弟とか、組み合わせる画によって人間の表情が違って見えるとか。興味を持ちながらも、それがどう今に繋がっていくのか、わからなかったのだと思う。たまに思う。日本史にしろ何にしろ、まず現代から見ないと学ぶ意味が分からないのではないか、って。人間だって、その人がいて、過去が意味を持つ、気がする。

3Dで描かれる映画の過去、いや、始まり。わたしは3Dが好きではないが、この映画で初めてその価値を感じた。人間の威圧感や、同じ空気を吸っている感じ。映画というものの「今」までの生きざまを見た。


美しい画や、英国俳優揃いなのも楽しいし、駅の埃っぽさだとか、主人公が盗むのがクロワッサンとミルクであるとか、パリらしいのもかわいい。でも何より、映画館でメリエスやリュミエールを観る機会を与えてくれるところが、素晴らしいと思う。

映画を愛するスコセッシ少年が素直に作った映画。そんな感じがした。

review
ヒューゴの不思議な発明
マーティン・スコセッシ