この時期になると思い出しますが
歯医者さんで治療中に
セーターの毛玉を迂闊にむしったせいで
人間不信になりかけたことがありました。
あれは、昨年の冬。
かかりつけの歯医者さんで治療中
全神経を集中して、私は戦っていました。
まず、激痛の麻酔注射。
顔を紙くずみたいにクシャクシャにして
必死で耐えたあと、
鼻がとれそうな振動のドリル。
わたしの頭の中では
羅生門の前で奪衣婆が走り抜け
地獄の鬼たちが蠢いた後、
冬のシベリアで凍ったパンを食べて
歯がかけたロシアの男性がため息をついている
暗いショートムービーが
脳内ミニシアターで上映されていた。
自分で浮かべたイメージとはいえ
羅生門とシベリアの凍ったパンの
二本立ては、かなりきつく
「はい、痛かったですね...笑
もう、詰めていきますのでね...」
と先生が笑いを堪えているところを見ると
多分、とんでもない形相になっていたと
思われて恥ずかしくなる。
でも、とにかく助かった!
✨
先生は、歯にセメントを詰めていて
滑らかな作業、痛みはもうない。
ホッとしたわたしは
穏やかな顔をして無意識に
自分の着ているセーターの毛玉をむしった。
あれ?と思い
ハッとした。
…なんで、むしったん⁉︎
…どうするん!?これ!
ざっくりしたセーターだったので
硬い、でかい毛玉だった。
先生の目をすり抜け、
うまいこと捨てるには
あまりにもでかすぎる。
やばいわ、、どうしよう。
私の脳は、むしった毛玉の処理方法を
全力でさぐり出した。
なんでこんなでかいん…
イタタタ!と痛がるフリをして
どさくさに紛れてさっと床に捨てたろか。
いや、でもな…
もう山場は超えてるから
どのタイミングで痛がるねんと思われるわ。
それどころか
数分後に痛みを感じるなんて
ステゴサウルス並みの小さい脳をしていると
思われる可能性すらある。
(*ステゴサウルスはあまりに脳が小さいので
神経が鈍く痛みを感じる時間差がすごいのです。
しっぽをかまれてから10分後に痛がる)
アホやと思われたら、困るわ。
次回から 私の行動は
歯医者さん側からしたら
アホからの予約電話がかかってきて、
アホが時間通りにきて
アホがアホみたいに口を開ける。
という視線になる。
痛がる演技は、なし。
じゃあ寝たふりして、
手をだらんと下げた時に
さりげなく床に捨てたろか。
…でも、あかんわ。
さっきまでギンギンに起きてたのに
急に熟睡するなんて
七面鳥かと思われるわ。
(*七面鳥は首を曲げて羽の中に入れて
ゆさゆさ揺すると3秒で寝ます。)
食べたろか〜
どうしよう。
ぽいっと床に捨てるのは良心が痛む。
スカートのポケットに入れたらいいやん✨
明るい気持ちで
毛玉をポケットに入れようとして
恐ろしい考えがよぎった。
毛玉むしるところ
先生に見られてた可能性ないか…?
もし見られてたとしたら、終わってる!
この人、毛玉むしった。
むしった毛玉、どうするんだろう。
とわたしの行動をさっきから
気にしながら治療しているかもしれない。
恐ろしい!
いま、毛玉をポケットに入れたりなんかしたら
次回から
毛玉むしってポケットに入れたくせに
待合室で歯の絵本読んで
毛玉むしってポケットに入れたくせに
保険で治療しようとして
毛玉むしってポケットに入れたくせに
は〜ありがとうございましたとか言うんや
て思われる。
じゃあさ!
毛玉、もう一回
セーターに戻したらいいんちゃうん✨
あかんわ!怖すぎる!
ほんで忘れてたけど
歯科助手さんもおるねん!
先生セーフでもこの人が見てるかもや。
毛玉をむしってもっかいそれを
セーターに戻したりする変な奴が
ホワイトニングに興味を持ったり
毛玉をむしってもっかいそれを…
きりない!!!笑
結局、気がついた時には
捨てるタイミングもなく
診療が終わるまで
ずっと毛玉を手に持っていました。
大変な時間でしたが、素晴らしい経験でした。
✨
歯医者さんの床に
自分のセーターからむしった巨大な毛玉を
平気で捨てるような人間には
なりたくないですもの。
✨
そのおかげで、堂々と
今もその歯医者さんに通っているよ!
いつ完治するねん!笑