ダジャレ大国ニッポン(仮) -3ページ目

ダジャレ大国ニッポン(仮)

ダジャレの向こう側へ…

【アニマル】の「ア」に丸がついている。

その下には【長州力】と書いてあり、「長」に丸がついている。
さらにその下は【天龍】、丸が付いてるのは「天」の文字。
往年のプロレスラーの名前が記され、その頭文字に丸が付いている。
それ以外のルールが見つからないが、公衆トイレの壁の落書きとだけあって何かきっとくだらない秘密があるのだろうと、用を足し終えてすでに20分が経過しているにも関わらず、未だにブリーフは足元に降りたままである。

ふと視線をプロレスラーの落書きから少し外すと新たな落書きを見つけた。
【シコースキー】の「コ」に丸がついている。
今度はプロ野球選手。
しかも、丸が付いている部分は頭文字ではない。
今まで私が考えていたルールが全て崩壊した。
また一から考え直しである。

こうなったら何が何でもルールを見つけ出したい。
私はトイレ中を見まわし、ヒントの捜索に取りかかった。
するとタンクに今にも消えそうな筆圧の弱い文字列を見つけた。
【やしきたかじん】と書いてあり、「た」に丸がついている。
追うたびに謎が深まる著名人と丸の共通点にそろそろ頭がクラクラしてきている。
まるで暗く出口の無い森をずっと彷徨っている恐怖に苛まれたような感覚である。
一旦落ち着きを取り戻そうと、私は見つけた言葉たちを音読してみた。

「アニマル…長州力…天龍…シコースキー…やしきたかじん…」

閃いた。
鳥の後を何となく追っていったら、だんだん太陽光の射す量が多くなってきて、森の出口に近付いていって…といった感覚に似ている気がする。
解決の糸口とは、やはり冷静さと辛抱と時の運なのだと思う。
私は気付いたのだ。
知力も体力もさほど必要無い。
福留功男は嘘つきだ。
そして、著名人につけられた丸がアクセントを意味することも。
大したことのない謎に長い間苦しめられていた悔しさもあるが、腹痛から解放されるその時よりもそれはそれは快感であった。

私は急いでカバンからサインペンを取り出し、興奮で震える手を抑えながら壁に【B'z】と書き、「B」に丸をつける。
真っ白なブリーフと真っ黒なホットパンツを履いて、トイレを後にし、レコーディングスタジオへと向かった。