ダジャレ大国ニッポン(仮) -4ページ目

ダジャレ大国ニッポン(仮)

ダジャレの向こう側へ…



「それ、レモンのいれもん?」
私は恐る恐る聞いた。


今日は息子のサッカークラブ
の試合観戦に主婦友達の沢田さんと
市民グラウンドに来ているのだが

沢田さんが
ハーフタイムにとりだした
レモンの砂糖漬けのいれもんを見て
私は目を疑った。

タッパーはタッパーだが
問題はその蓋だ。
マジックで
大きな黒い字でこう書いてあった。



「歌舞伎ロックス 我が命」


私はハッとした。

そして、グッときた。

まるで
田原のとしちゃんのようである。


主婦友達といっても
子供どうしが同じクラブの割に
沢田さんとはあまり面識がなかった。

「あら ごきげんよう」

今時小堺一機さんしか使わないような言葉で挨拶してくれる沢田さんは
いかにも
上品な奥様 といった感じで
近寄りがたかったからだ。

その沢田さんが今
にこやかに微笑みながら
歌舞伎ロックス 我が命と書かれた
タッパを取り出してきたのだ。

何度も言うが、手書きで。
マジックで手書き。

ひい、ふう、
ひい、ふう、みい、よう!

なんという、刺激的な
レモンのいれもんなんだろう。

ブルドックのように
上目ずかいで固まっている私に

「ええ、学生時代から使ってる
タッパーなの。お恥ずかしいわ。」

恥ずかしそうに微笑んで
沢田さんは答えた。

そしてそよ風のように
ハーフタイムに戻ってきた
息子さんやみんなに
レモンの砂糖ずけを配っていた。

かっこいいな、沢田さん。

私は、自分がもってきた
レモンのいれもんを隠した。

三匹のネコが積み木で遊んでいて
そのうちの一匹が
積み木から落ちそうになっている
絵柄の入れ物。
小さな字で上のほうに
wanpakunekochanと書かれている。

なにが、わんぱくだ。

沢田さんの
歌舞伎ロックスのレモンのいれもんに
比べたら
こんなレモンのいれもんは
わんぱくでもなんでもない。

シャズナの追っかけをしていた私は
どこにいったの?

私は思い切って
そして爽やかに
戻ってきた沢田さんに言った。

「今度、ランチでもどうかな?」

沢田さんは嬉しそうに
でも激しく何度も頷いた。

















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