巨人ドラフト2011年2位の今村信貴投手を分析して見よう その2!
今回は球種を中心に分析して見たいと思います。

そもそもその2になってしまった最大の理由は変化球。見ていてとにかく違和感が凄い。それは何なのかをフォームから躍起になって探した結果が前回の長さ(笑)。感じた部分についてドンドン遠慮なくコメントしていきたいと思います!


【球種】
ストレート、カーブ、スライダー、フォークを投げるようです。それぞれを見ていきます。

<ストレート>
136~146キロ(未確認ですが甲子園後に148キロを記録したそうです)
高校生左腕として見た場合、間違いなくプロ仕様のストレートを投げています。ただ、スタミナの問題なのかあまり140キロを超えるような剛球がこない。力を入れたときのみプロ仕様のボールが来る感じです。その辺、常時140キロを軽く超えて打者を圧倒したドラフト1位の松本竜より1ランク落ちる印象です。


私は常時のスピードを重視し、MAXは無理をして投げた結果のスピードと考えているので140出るか出ないかな位が現状の力と判断します。今は短い回も投げさせて本気で投げる感覚を忘れさせず、先発を中心に二軍で投げることが必要な段階なんだと感じます。


力を入れると抜ける頻度が高かったストレート。ボールは綺麗な縦回転のため、リリースの強い左ピッチャー特有のシュートしながら逃げていく高めのボールにはなりません。意図しない高めはほぼ棒球。ただ、タイミングが合い、指に掛かれば糸を引くように外角低目へ決まる。この落差を何とかしたい。まずは威力を維持しての精度です。間違いなくストレートが生命線なので。


ストライクを欲しがると二流の投手で終わるでしょう。ストレートのコントロールは高校生ドラフト上位では普通以下。内外の投げわけが出来ますが、コントロールでも松本竜に劣っているというのが私の評価です。


ただ、キレは非常に良さそうで、低めに決まるボールを打者が結構見逃します。見逃し三振を狙える球質なのではないかと思います。そして球持ちと間が非常に良い為、タイミングを合わせるのが難しい。打ち損じを見ると、打者は差し込まれ傾向。ボールの伸びはスピードの印象より来ているタイプです。打ちにくいストレートとして今後も期待できる球種でしょう。進化の可能性も十分に残されており、角度も付いてくればストレートで押すポテンシャルを感じさせる素材であることは間違いありません。


<カーブ>
100~110キロくらいのカーブ。
緩急を重視しハンガー型(横変化)ではなくドロップ型の縦変化。…なんですが、スピードの割りにブレーキが掛かっているわけでも、落ちてきているわけでもない。高校生ではまあまあかなというカーブです。切るも、すっぽ抜くも出来ていません。これだけフォームが良いので、正直おもいっきり期待していたのですが、理解に苦しむ弱いカーブ。これはプロで通用しないでしょう。進化をさせるか、別の球種で緩急を狙う必要性があります。プロの指導を受けても、改善の余地がないのであれば、別の球種を考える方が早いかもしれません。


<スライダー>
110~120キロ。
ストレートとほぼ同じタイミングと腕の使い方で投げられるボール。…なんですが、スピードが遅い! MAX120キロと書きましたが、スピードガンの表示の問題であり、実際はもっと遅く見えます。横に滑るように変化するのですが、遅いなら曲がり始めたら大きなすべりを見せないと難しい。これなら頭に入れておかなくても、プロの打者は対応できてしまう可能性が高い。本来であればストレートと錯覚させて振らせるのが目的のボール。遅い場合はすぐ変化球とばれてしまうので、その上で変化点が遅いこと。どちらに変化するか分からない(分かりづらい)選択肢を用意する必要がある。それが球種としても実現できていません。シュート系が無い。思ったほどリリースが強くないことも気になります。


で、フォームを穴が開くほど見てみると、変化球の方がトップが浅く見える。タイミングで見ると変化球は上体の切り替えしが僅かに早い。それが腕の使い方で余裕を生んでしまう。車のアクセルでいう所の「遊び」と言えば良いのでしょうか。これが発生してしまい、肩の回旋にしっかりと腕が乗らず、結果としてリリースが弱く見えます。球速にばらつきがあるのも、胸の張りに弱さとムラがあるから。フォームの後ろは半径が狭くコンパクトなのに、前は大きく動く。なので、肩の回旋の力をかなり上手く腕に乗せなくては変化球が死んでしまう。下手にフォームの間がある分、本人感覚も外から見ている人も問題点が分かりづらい。これは変化球全てに言える要素です。


<フォーク>
110キロ~115キロ。
ダメです。プロでは全く使えません。腕の振りはフォークを投げられる流れを持っているため非常に残念です。手首から押し出すようにして投げています。これでは球種として使用不可能です。その後に投げるストレートに影響が出かねない。現状は使用を禁止するべきです。


今村のフォームを考えると、逆に柔らかく使うくらいが良い投手です。その場合は、しっかり腕が振れていれば、落ちなくてもチェンジアップの役割になってくれるのに・・・。


変化球は多少手首の形を決めて投げる方が良いパターンもあります。それでスライダーも十分投げられます。腕の振りが良ければボールはシッカリと動いてくれます。しかしこの押し出しの形はダメ。今村の良さを消してしまい、怪我の可能性すら出てきます。…何でしょう。変化球の全体的なガッカリ感。一言で言えば「弱い!」です。こんなに素晴らしいフォームを持っているのに。


「分析その一」の項目で述べましたが、今村はイメージしすぎるのかもしれません。変化球を投げる!…と。曲げようとしてリリースが弱くなるのであれば何となく分かります。ゴルフやテニスを経験している人はニュアンスで通じると思います。ゴルフであればフック・スライスを意識しすぎて直ぐ曲がりまくる。テニスであればスライスを打っても切りすぎてドロップショットになったり(笑)。初心者にはありがちで極端な例ではあります。どちらも共通しているのはフルショットしているのに、効率よくボールに力を与えられておらず同じ結果になることです。


そういった延長上の問題であれば、逆に変化球をストレート化すれば良いと思います。全部同じ投げ方。ストレートもカーブもスライダーも全部同じ意識。ストレート投げたら勝手に変化した…くらいの感覚で良いのではと思います。変にイメージしない。


また、カーブが使えないのであれば腕の振りは良いのでチェンジアップの習得も目指して欲しい。今村はフォロースルーが大きいためカナリお勧めの球種です。後はシュート系がないのでツーシームも考えて欲しい。この2種類は肘への負担が少ない球種で、まだ若い今村が練習するにはもってこい。且つフォームや投球術においてもマッチングするボールと考えます。


球種が少ないため、まずは信頼できる変化球を一つ作り、緩急を考えながら空振りが取れる変化球も磨いて欲しいと思います。


<コントロール>
既に散々書いた気もするのですが、一応触れたいと思います。
ストレートはコースの投げわけは出来るものの、よく抜ける。投げミスも多い。高いボールは棒球が多い。
低めにコントロールされると素晴らしいキレのボールが行きます。高めのボールも意図して威力のあるボールが投げられると投球の幅が広がります。精度と高低をテーマに苦手分野を克服して欲しいです。


変化球は全般的に甘いです。簡単にストライクを取りに行ってしまうため、カウント的には攻めているのですが、アバウトなのですぐに苦しくなってきます。こちらも意図してボール球に出来るコントロールが必要になります。特に現状は変化球の威力が弱いため、コントロールと投球術の重要性が高い投手と言えます。


プロでは簡単に見極められてしまうレベル。急がば回れで体幹トレーニングと(助走なし&あり)30メートル位のキャッチボール(変化球交え)をしてみると面白いと思います。変化球は届かせるのが物凄く難しくて、段々強いリリースのコツを掴めるのではと。また、ブルペンではアピールを二の次にしコントロール重視の練習をして欲しいと思います。例えば9回2アウト1点差フルカウントと状況を想像してからの1球ピッチング。そういった意識付けの違いが1年後、3年後に大きな差となってきます。


<投球術>
松本竜と同レベル(笑)。
いったれ~~!ですよ。真っ直ぐ真っ直ぐ! 打たれても強気にインコース。どんどんインコース。
困ったらアウトロー。球種もフォークは殆ど投げないため、カーブとスライダーをアクセント程度に投げる。ガンガンストレートで押す。そのためのカーブでありスライダー。テンポも良い…というか良すぎ。ポンポン投げすぎ(笑)。


これを投球術と呼んではいけない! と言うくらいある意味で気持ちの良い投手です。まさにThis is 高校野球! 度胸と言うか、心意気は買いたいですね。


逆にこの真っ直ぐさが、打者の対応を簡単にしてよく粘られます。今村が負けるときは大敗が多いのですが、粘られて根負けしてストレート・カーブを打たれるパターンがほとんど。ストレートの出来次第となります。今村自身に「崩す」「かわす」「誘う」などの選択肢が投球術として確立されていないため、今後は投球の術をシッカリと自分で考えて欲しいと思います。


<その他の基本技術>
クイックは早く1.1秒前後を記録。
牽制は普通以上かな。
フィールディングは問題なし。


クイックの1.1秒は既にプロレベルの高速タイムです。後は精度を上げるだけ。非常に良い。


牽制については実際に生の試合で見ないと分からない部分が多いので、普通以上としています。左投手は余りクイックな牽制が難しいため、目で抑えるなどの心理戦になります。そういった部分で抑えているかと言えば、ピッチャー・ランナー+野手が同時に見えないと分からない。しかしながら、意識は十分に向いていると見えるのでランナーは走りにくい投手ぐらいには感じているのではないでしょうか。クイックも早いし。


現状一軍不動の捕手・阿部は安定して1.9秒くらい。楽に2秒を切るタイムで二塁へ送球が出来ています。なので、巨人投手のクイック目標は1.2秒以内。それができれば、二人合わせて約3.1秒になるので、余程遅い変化球やコントロールミス・捕手のミスが発生しない限り刺せる確率は高くなる。今村はまず完璧なスタートを切らせない意識がある。クイックも早い。ランナーに対しての対応は良いと言えるでしょう。


フィールディングですが、試合前の練習映像が内野手と見間違える動きをしていました。第6の内野手として十分動けるのではないでしょうか。


ここの項目は高校生として見て十分な内容だと思います。プロでも直ぐに高いレベルのものが身につくセンスを感じます。


<まとめ>
とにかくフォームの美しさに反した、結果(ボール)の精度の悪さ。それが何なのかを追求するのに非常に分析で苦労した選手。逆に言うと土台は非常に高いレベルにある。あと少しの切欠で化けるだけの土台を十分に感じます。


ドラフト2位で指名されるだけの理由。それはハッキリ「素材の良さ」の一点です。質の高いフォーム。肩と肘の柔らかさ。球持ちの良さ。投手として必要なスキルの習得。MAX時のストレートの威力。こういった部分にスカウトは評価を1段階上げたのだと思います。


個人的にはドラフト3位か4位かな~と感じる投手。何故かというと変化球の弱さ。精神面の物足りなさ。育成方針の難しさを感じてしまうからです。変化球はもういいですよね(笑)。精神面については高い意識で野球に向かっているのか疑問に思うシーンが多い。仕入れた情報・映像からは練習で特別高い意識を感じる内容はありませんでした。高校生左腕にありがちな「みんなと練習をしていたら実力がみについた」タイプに見えてしょうがないのです。


まあ彼ほど悪くは無いと思っていますが、何年か前のドラフト2位宮本を思い出します。何年か前の社会人ドラフト2位の上野貴久も同じ印象でした。そういえば完成度は高くともチャンスを全く与えられなかった社会人ドラフト2位古川・・・。巨人のドラフト2位左腕は何かあるのでしょうか(苦笑)。


話を元に戻しまして…。
プロで活躍するために必要なことを考えながら、高校生活を過ごしていればコントロール・変化球や投球術の部分がどれだけ重要か分かるはずです。その部分こそが逆に疎かであり、牽制やクイック、フィールディングなどの基本スキルは教えられれば身につきます。つまり教えられたことしか出来ないとも考えられます。その場合プロでは大きなハンデを背負っていると同義で、大成は難しい。


コントロール、変化球、投球術は教えたからといって必ずしも結果には結びつきません。同じ事を伝えても結果に個人差が出る。プロの世界は常に工夫をして、自分のオリジナルを模索していく世界です。理解の浅い技術は対応されたときに応用が効かず自分で修正できない。トップの形成などを見ていると、チェン(または良く似た一流選手)を参考にしているのではないかと思います。形は素晴らしい。しかし、その後の流れが私の評価を一変させています。


教わることも真似をすることも重要です。あまりにも高い世界は全体を見るのではなく、点を見ることで理解がはじまります。しかし、理解した点に囚われすぎても、本来あるべき形を見失う。今村に感じる違和感はそんな印象です。本質を知らず、具現化する能力に特化している。実戦性の高いフォームながら、実戦力が皆無といって良い投球内容がそれを物語っています。



ここで初めて2012年の今村の成績に目を向けてみます(2012年のフォームは見てません)。
去年二軍でノーヒットノーランをして注目されつつありますが、二軍の成績は必ずしも褒められる数字ではありません。四球の多さ(四球率4.17)や失点率(4.39)の高さ。防御率(2.63)の良さに隠れて、今村の問題点である制球と波の大きさは全く改善されていないと感じます。そして、決め手のないことを証明する奪三振率(2.63)。低すぎます。ストレートと特に変化球の進化は数字から伝わってきません。


少なくとも精神面を度外視した部分。「高さなのか前後なのか重点がハッキリしない位置エネルギーのフォーム」について改善が進んでいるのか。実戦の中で工夫を続けているのか大いに疑問です。ここは精神より技術論なので、1年プロでやっていて変化を数字で見れなかったのは残念です。非常に土台が良いだけに!去年はプロの練習に慣れて終わってしまったのではないでしょうか。課題はそのまま放置に感じます。


数字から感じる「かわす・打たせて取る」ピッチングを始めるなら、まず自分の武器がプロでは何なのかハッキリ掴んでから行うべきです。まだ早い! 高校時代を見ると現状の武器は間違っても投球術ではないし、1年で身に付くとも思いません。結果を必要以上に求めてしまい、勝負する・チャレンジする戦いを18歳の若さで(楽な道に)逃げたと感じてしまいます。


まだまだ二軍の選手。打たせて取るだけでなく三振も取れる選択肢がなくては、一軍の先発は見えてきません。時間は掛かるかもしれませんが、器を大きくして欲しい! このままではこじんまりとした投手になってしまい、一軍に登板できても定着は遠き道となります。彼が目指す先は「内海」「杉内」の後継者なのです。素材は十分であり、その可能性を期待されている以上、超える意識を強く持ってほしい!


今村は球種が少ないのでリリーバー向きかな?と思いつつも・・・これほどの素材を目にして、先発か中継ぎの属性に悩むのがそもそもオカシイ。と、途中から考えるようになり、先発として足りない部分を考えると想いがぶわ~~っと文章に乗ってしまいました。その1では完成に3日(家に帰ってきても仕事してる気分でした…)も時間をかけましたが、その2は実質1時間。勢いで非常に厳しい書きようになり、不快な想いをさせてしまったことと思います。見苦しい文章になりましたこと、我慢して読んで下さった皆様には深くお詫び申し上げます(今村ファンの方ごめんなさい)。


検証していて感じたのはプロで十分通用する土台と素材の良さ。そしてまだ戦力としてみるには粗過ぎで結果よりも内容を問われる段階の投手という印象です。今シーズン一軍デビューが出来たらかなり早い進化を実現したと言えます。個人的には大幅なスケールアップを期待したいので、来年でもいいかな! なんて思ってます。


フォームの動画は見ていないのですが、2013年キャンプでのリリース写真をちらっとみたことはあります。これを見る限り、低すぎた重心が随分と良い高さへ修正できていると感じました。
ボールは見てないので断言が難しいですが、ひとまず順調に成長中なのだと思います。間違いない素材なので、完成形の形が見えるまでは二軍で大きく育てて欲しい。そして、いきの長い選手になってもらいたいと思います。一軍で是非また分析をしたい選手。期待して待ちたいです。


非常に長い文章にお付き合い頂き、皆様ありがとうございました。
それでは失礼いたします。