コロナ禍の渋谷を舞台にしている。



原案が永井荷風ということで気になった。


ネットで主演の高橋ユキノさんのインタビューが載っていた。


“R15で裸になる事はわかってましたか”という問いに。

“脚本を読みましたから”

そう肝の座った答えをしていた。


そしてこの映画を観ようと思ったのは永井荷風をどう現代的に解釈するかであって、裸ではない。


(いや。ちょっとあったかもしれない💦)



渋谷はかなり歩き慣れている。過去に。

だがこの道は初めてだ。

時間制のホテルが並ぶ。少しいかがわしい。


迷って映画館に電話して案内してもらった。



名前はよく聞くユーロスペース。



初めての訪問。

金沢のシネモンドとも少し違うラインナップ。



なんの映画かやからないが沢山の向日葵。



ポスターは落書きかと思ったがキャストやスタッフのサインみたいだね。


まだまだ上映には時間がある。




道玄坂のスタバでアイスコーヒー。

この通りも工事している。

渋谷もかなり様変わりしたなあ。



琴音は学生だがあまりお金はない。

同棲していた男に家財を持ち逃げされる。

家賃も払えず街をうろつく。


自販機の横に座ってると女性に缶コーヒーを差し出される。

ラブホに女友だち4人でいるから来ないかと。


ラブホに入るが他の友だちは見当たらない。

シャワーを浴びている隙に女にバッグも服も何もかも盗まれる。


タオルを巻いた姿で他の部屋のドアを叩いてまわるが、どこも返事はない。


ある部屋に入ろうとする2人を見つける。



必ず返すからお金を貸してと必死に頼む。


3Pできる?と男は連れの女に言う。

ええ〜笑、と答える女は恋人ではない。


女にドアの隙間から手招きされて。


琴音は入る。



場面は出会い系(?)に変わる。

「パリ、テキサス」のようにマジックミラーのようだ。


しかしあの映画と違って会話をかわす訳ではない。

彼女たちは品定めされているのだ。



女の子たちはスマホに見入る。

内心の声が吹き出しに出る。


(来るな)(キモい)などなど。



男たちは女の子を選んで連れ出す。

お店は場所の提供だけの建前だろう。

お店を出た後はパパ活。

お金を稼ぐ為には差し出さねばならない。



琴音のヘッドフォンは自分の世界の防衛かもしれない。

マメに通う男もいるが琴音は稼ぐ為に掛け持ちもする。


したたかであらねばならない。


少し気持ちを寄せる若い男が現れても長くは続かない。

男は琴音の“仕事”を忘れてはいない。



店には様々な事情の女の子がいる。

ホストに貢ぐため、借金があるためなど。

その中に聖書の言葉を紙に書き記す大学の学費稼ぎの女の子がいた。さくらという名。

店の中では会話は禁じられているが何となく親密になってゆく。

店では2人ともどこか浮いている。


そして琴音もまた聖書の言葉が響いている。


平穏に日々は続くように思われた。


以前に琴音の客に思い込む客がいた。

死にたいという。

ぶっきらぼうに励ます彼女に男は、

「また会ってくれる?」と聞く。


道を歩いている琴音。

前に相手した客が声を掛けてくる。

無視していると下りの階段で背後から蹴飛ばす。

琴音は頭を切り、店を休む。


死にたいと言っていた客がやってくるが琴音はいない。

客はさくらを指名する。


客は風船を屋上から飛ばしたいと言う。

さくらも屋上についてゆくのだった…



風船は飛び去ってゆく。



映画の説明では、

“体目的だけの男たちを相手に奔放さと逞しさを持って生き抜いてゆく女性たち”

という事だった。


永井荷風の小説もそんな風に描いていたと思う。

だがこの映画を観た後の後味はそうではなかった。

思い出したのは溝口健二。

「祇園の姉妹」だった。


溝口の映画では諍いもある姉妹だったが、

ラストでは抱き合って、男社会の理不尽さに怒りの言葉を投げつけていた。

「負けるもんか!」と。


そんな要素を持つ映画だったと思う。


傑作ではないだろう。

だが凡作でもないと感じられた。



渋谷の駅前の交差点の最前列に立つと。

なんだか後ろから攻撃がありそうな感覚にとらわれて怖くなった。


女性が性犯罪を恐れる怖さは、もしかしたら少しだけこんな感覚かもしれないなどと初めて思った。


さくらが書いた聖書の言葉は思い出せない。

少しボクの心にも染みた気がした。




【以下余談】



東京駅でまたラーメンストリートへ。

しかしどちらも行列ができていて新幹線に間に合いそうもない。


ふと。

富山駅前にある「白えび亭」が目に入った。

東京店があったのか!



スムーズに店に入って特製の刺身醤油を眺める。



寿司屋さんでは「今年は不漁で」と別の品になってた白えび刺身をいただく。


わずかに醤油があるかなしか。

その程度が白えびの味を壊さない。


懐かしく美味しい。

(不漁だというのは本当です)


店を出ると。



広島の「電光石火」もあるではないか!


呉市に行ってこうの史代さんの原画展を観たいなあ。



ホームには盛岡行きのはやぶさが入っていた。


なにもかも放り出して飛び乗れたらいいのだけど。


(そんなふうに思ったことはないでしょうか?)