朝ドラ「ブギウギ」の趣里さんが全く別の顔を見せる。


パンフレットは買うが上映前には読まない。

だから映画が始まってしばらくの間、

どの時代でどこの場所を描いているのかわからなかった。

勅使河原宏「砂の女」のような架空の地なのかと。


だがそうではなかった。

(とはいえ戦後の貧窮した街の闇市そば。

そこの焼け残った居酒屋とくれば、

或いは日本のどこででも普遍の地かもね)




いつものシネモンドへ。



作品紹介ディスプレイはいつも入念で緻密。

どなたが制作してるのだろう?



塚本晋也監督到着前。

サインは未だ入っていない。



冒頭に趣里さんの白い脚がはだけている。

少しドキっとして。


渚白い足出し


尾崎放哉の句が浮かぶ。

少しエロティック。


だが脚を露出する状態が続く。

これは彼女の常態であるようだ。

とすれば。

何かの糸が切れているかと思われた。



日本酒を持ち込んでくる中年男性が現れ、

彼女に迫る。

顔を背けながら彼女は抗わない。


どうやら彼女は私娼であるらしい。


お酒を呑ませてからことに及ぶ。

そんな居酒屋。

(戦後には幾らでもあっただろう)



元教員の復員兵(河野宏紀)がお金を握りしめて現れる。

一夜をともに過ごす。


そして次の日も「お金はまとめて」

そう言って居続ける。

盗みを続けているらしい少年(塚尾桜雅)も居続ける。


まるで家族のような日が何日か。


復員兵は夜にうなされる。

少年もうなされる。


何かの辛い過去を暗示させる。


ある日。

復員兵はトラウマから暴力的になり、

半焼けの家から出る。

少年はどこからか銃を手に入れていた。




2人だけになる。

彼女は少年に犯罪をしないように願う。




ある日。

少年は闇市のテキ屋(森山未來)から仕事をもらったと言い、彼女は危ないからと止めるが少年は出ていく。


テキ屋もまた復員兵であり心に傷を負っていた。

そのトラウマを晴らそうと少年を利用しようとしながら逡巡し続ける。

サカナを獲ったりして。


(ネタバレ部分を飛ばして)


彼女に原爆症が現れる。

帰ってきた少年を受け付けようとしない。

彼女の絶望。



少年は闇市に向かう。

拒絶されても突き飛ばされても皿洗いを止めようとしない。

何度蹴飛ばされても。


少年は立ち尽くす。

何かを見据えるように。



トークイベントではもうサインが入ってますね。


そうそう。

上映の前にシネモンドから挨拶があった。

「余震がありましたら上映を中止し避難誘導します」と。

丁寧な対応だと思う。



「野火」

「斬、」

に続く作品。

エンタメ要素はほぼない。


初めにシネモンドさんからの質問に答えて。

観客からの質問に答える。


ある若い女性。

「絶望の映画だと思います。

私の友人で奥能登出身なんですが震災で絶望してるんです。

どのように希望を見出せば良いですか?」


塚本晋也監督。

「難しい質問ですね。

逆質問させてください。

あなたならどう見つけますか?」


女性。

「…答えることができないんです」


シネモンド側が他の観客に問いを投げかける。

「浄土真宗では『どうしようもない』が答えです」と僧侶だという男性。


(あゝ確かに似たような言葉は書いてあった。

受け入れるしかないと)


塚本晋也監督。

「少年が希望なんです」と仰る。


足掻いて足掻いて生きるしかないのか。


塚本さんはきな臭くなって「野火」を撮ったと言う。

そして現在はさらに危なくなってきたからこの映画を撮ったのだと言う。


その危機意識は観客たちにもあるように感じられた。


(映画の演技の中で舞のような動作がある。

ダンサーでもあるらしい。

森山氏がそうだし或いは趣里さんもか?)


戦争が終わってもPTSDなり原爆症なりと戦争は続くのだ。

そう映画は言っていると思われた。


他にも核心を突くような質問があった。

でもまあ覚えてないや。




チラシの中にあった。


金平さんが来るのか。

覗いてみるかな。



塚本監督のサインはイラストのようだ。