ちょっと前なら覚えちゃいるが


などと宇崎竜童にならないように。

10月下旬の金沢での催し。



時間が幾らかあったので、

久しぶりに近代文学館を訪ねた。

かつての四高で重要文化財だったかな。




ケチくさいことに館内撮影不可。

廊下だけ勝手に撮る。

金沢三文豪を中心に展示されている。

(泉鏡花と室生犀星と徳田秋声)

石川県出身やゆかりの作家の展示も幾らかあった。

鶴彬も狭いコーナーだけどあった。

食通の吉田健一も書かれてます。


十数年前に来た時より見やすくなってますね。



中央公園を抜けて。



勝手知ったる教育会館へ。



今回も澤登さんが弁士なのだ。

(ギターとフルートの生演奏付き)



喫茶店の横の黒板。

よく変わります。

誰が描くのか笛吹童子♪


ボクは一番前の席をゲット。

挨拶の後、

小津安二郎の「大学は出たけれど」



1929年の作品。

世界恐慌の年だし当然不況である。

今より遥かに少ない大卒でも就職は難しかった。

しかし故郷の母親には就職したと嘘をつく。

母親は喜んで婚約者(田中絹代)とともに上京する。

そのうち母親は帰り、婚約者と2人暮らし。

(良いのか?この時代)

そのうちに彼女も察する。

生活費のためカフェで働き始める。



それを知った男はやめさせようとする、

しかし根本は自分の問題である。

(カフェって戦後直ぐだけでなく戦前から怪しげだったのかなあ)



彼は意を決する。

ある会社からは雑用係ならと言われ大卒のプライドで断っていた。

その会社に向かい、雑用係でも何でもしますと深々と頭を下げるのだった…


本来は70分の映画だったが紛失し、

現存する10数分の上映。

とこかの家の倉庫からフィルムが出てこないものか。



そして溝口健二の「折り鶴お千」



泉鏡花の原作を映画化した。

(11月4日は鏡花の誕生日。150歳)

電線トラブルで遅れる電車を待つ神田万世橋駅のプラットフォーム。

そこにひとりの紳士が自分の過去を振り返っていた。


神田明神の近く。

悪徳商人たちが暮らす家があり、彼らに喰いものにされるお千という女性がいる。

そこにお千に連れられた未だあとけなさの残る宗吉がいた。



宗吉は下働きで酷使されながら着る服は一枚しかなく寒さに震えている。

そんな宗吉にお千は細かな心遣いをしてくれるのだった。



大きな悪事で大金を手にした彼ら。

宗吉にも幾らか渡るが、汚れた金は受け取れないと返そうとする。

悪口雑言と暴力の嵐。


宗吉は神田明神の森で剃刀自殺をしようとする。

そこへお千が現れ自殺を思いとどまらせる。

「逃げよう。一緒に暮らそう」



宗吉は好きな学問の道に励む。

お千は幸せそうに見つめる。

そんな穏やかな日々が続いた。


しかしだんだんとお金が尽きてゆく。

宗吉に立派な医者になってほしいお千。



隣りの老婆の勧めが続いた。

お千は身を売って生活費を稼ぐ。


しばらくはそれで良かった。

だが客の勘違いで窃盗の疑いをかけられ、

また売春の罪にも問われ、

お千は宗吉の目の前で警官に引き立てられる。

折り鶴を宗吉に託して。



「お医者さんはいませんか❗️」

駅員の声にハッと我に帰る宗吉。

倒れたという急病人を見にゆくと、

それは紛れもなく大恩あるお千だった。

今では大病院の部長となっている宗吉は自分の病院にお千を運び入れるのだが、



長年の苦労が重なったのだろう。

お千は極度の心神喪失状態にあり宗吉とも気づかない。


宗吉はかけがえのない女性のために懸命な治療をするのだったが…



溝口健二監督の泉鏡花原作を観るのは2度目。

「滝の白糸」も素晴らしかった。


どちらも若者の学問のために身を捨てる女性を描いてます。

(滝の白糸像は主計町茶屋街辺りにあります)

でもどこか誇らしげ。

自分が決めたことだからでしょう。

「高野聖」は怪異を描くけど男を動物に変化させる聖なる女性でもある。

溝口健二の方も「祇園の姉妹」では、

男に騙されながらも負けるものかという言葉が発せられる。

(もちろん差別社会の中でだけど)


男女同権の社会は日本でいつ達成されるものやら。

女性たちはもっと声を上げるべきです。



そのあとフルーツシェイク。

ではなく。



ソフトクリームをいただいて。



金沢駅のあんとへ、

日本酒バー。



手取川や農口がなかったので天狗舞を。



純米吟醸ではある。



ちょいとおつまみも付いてるのでした♪


ほろ酔いで帰ろう。



【病院日記】

本来なら退院している筈の日。

しかし人間は機械ではないので予定通りにはいかない。

そろそろ退院していいですと言われた翌朝。

左目のの眼圧が30超え❗️

それが落ち着きつつある頃、

今度は安定していた右目の眼圧が30を越えるのであった❗️


3日の上白石萌音さんの声が遠のき、

4日の野村萬斎さんの中島敦「山月記」をどう舞うか楽しみにしていた舞台が消え去っていった…


琴詩酒の友

皆我を抛つ

雪月花の時に

最も君を憶ふ