東電から出された6ヶ月から9ヶ月で安定化させるという「工程表」が単なる願望に過ぎないことが明らかになってきている。


何故か。


現在、原発事故安定化の工程表を作れるはずがないからである。

事故の対処をなす上で次の2点が最重要課題である。

①圧力容器内の燃料棒がどうなっているか。

②圧力容器及びその外側の格納容器が封じ込め機能を維持しているか。破損程度がどの程度か。


しかしこの2点に関して状況はつかめていない。したがって安定化への処方箋である「工程表」など作れるはずはないのである。


更に上記2点がコントロールできていないということは、原発事故は最悪期を脱したとはいえないということである。





残念ながら、予想どうり最も安定的と評価されていた1号機についての作業が立ち往生である。

格納容器(燃料棒のある圧力容器の外側の容器)の外側を循環水で満たし安定的に冷却しようとした。


しかし1万トンも注入しても圧力容器は満水にならないどころか燃料棒がむき出しの水位であることが分かった。更に圧力容器の外の格納容器にも水がたまらず圧力容器、格納容器いずれからも水が漏れていることが分かった。


汚染水を大量に格納容器外に出したということである。建て屋内地下では3000トンの汚染水が確認された。

しかも2000ミリシーベルトという観測値としては最高の値が観測された。(以前なら新聞1面トップに出たはずである)


これは何を意味するか?

先に示した①②の状況がつかめていない以上予測された事態なのである。


燃料棒は解け落ちて(メルトダウン)圧力容器の底にたまっているらしいと発表された。それらが圧力容器を溶かして格納容器にまで達しているのかについては『ないと思う』ということである。


この事態を正確に表現すれば次のようになる。

・燃料棒および圧力容器、更に格納容器の状態は対処の処方箋を描けるほどには把握できていない。はっきりしていることは燃料棒が解け出ていることである。

・圧力容器、および格納容器はどうなっている分からないが、いずれにも穴があいていることは確かである。

・冷却のため穴の開いた原子炉に注水を続ける必要性があり、それは放射性物質による汚染水を外部に出すことになるというジレンマを抱えている。

・予定されていた「水棺」(格納容器内を水で満たし内側の圧力容器と燃料棒を冷却する)は1からの見直しが必要である。


以上が1号機の状況の正確な表現である.


要するに「工程表」は実行できる根拠がない願望の羅列だということである。

再度言えば次の点が把握できていない以上対処と時間みとうしを立てらてられるはずはないのである。

①圧力容器内の燃料棒がどうなっているか。

②圧力容器及びその外側の格納容器が封じ込め機能を維持しているか。破損程度がどの程度か。



3月に示した指摘を再度示す。

「この圧力容器内の燃料棒がコントロールされる具体的みとうしが生まれて初めて、事態は最悪期を脱して解決に向かっているということができる。」


まだ最悪期を脱しているとはいえないのである。ご本尊の状況が(対処の処方箋を描けるほどに)分からない以上、これから更に事態が悪化する可能性もあると考えるべきということである。



3号機の温度上昇がとまらない。再臨界(核分裂を再開すること)を防ぐためホウ酸を投じると報じられた。1号機、2号機にも投じるという。東電が『再臨界』の現実的可能性を再度意識せざるを得なくなったのである。



最悪に事態とは

再臨界(現在機能していると思われている核分裂を抑える制御棒が機能しなくなる暴走)および圧力容器または格納容器が水素爆発で破壊される(高濃度放射性物質のばらまき)ことである。



現在進められている作業途中に再臨界や容器爆発があれば、作業員は全て撤退し、再び周辺住民の避難に重点が置かれることになるだろう。


再臨界の可能性はきわめて低いという専門家の指摘がある。

確かに現在の炉内の温度等を考えれば可能性は低いということであろう。しかしその予測にもいくつもの前提がある。


現在把握しているデータをもたらしているしている計器は正常に作動していること


燃料棒は燃え落ちて圧力容器の底でわずかな水でも冷やされる状態にあること。

しかし燃料棒が全て燃え落ちているかどうかは分かっていないし、冷やされているといっても一様に安定的に冷却されているかなどはわかっていない。


要するに再臨界の可能性はきわめて低いという見立てはいくつもの”たら、れば”を積み重ねてのものである。

再臨界のないことを願うということと、その可能性を冷静に判断することは両立されなければならない。



更に流出汚染水の増加を止めるには冷却水を減らさなくてはならない。

しかも冷却が不十分であれば、容器内の温度上昇や水蒸気爆発(温度上昇により燃料棒の皮膜がとけて反応で酸素が発生し、水素と酸素での水蒸気爆発が生じる)の可能性が高まる。

「ざるに水」という状態でも注水を続けざるを得ないジレンマ状態である。


循環型の冷却装置を設置する作業を進めるには2000ミリシーベルト(作業は20分もできない)という高濃度汚染が障害となっている。



情報分析のプロである新聞が何故正確に事態の危険レベルの質を伝えないのか不思議である。

・欧州は「インフレ2パーセント以下目標』が4月は2.8パーセント上昇。

6月更なる金利引き上げの可能性。ギリシャ危機も続く。

→インフレ懸念を際優先する姿勢堅持。



・ドルは2010年世界で最安値を更新した。格付け会社に長期国債の評価はネガティブと評価された.

実質上緩やかにドル切り下げを行っている状況である。

失業率は9パーセント近くで一進一退の高止まり状態。

住宅価格は下げ止まらない。

政府の金融支援の焦げ付き懸念も再度浮上してきた。


FRB[米国中央銀行]はこれまでの金融商品の購入という異状手段は6月で終了するが、緩和的金融政策(低金利での市場への資金供給)は維持すると表明。


→米国のドル垂れ流し(低金利でのドル放出)への国際的批判(中国など新興国だけでなくEUも批判)が高まる中これ以上の景気てこ入れのための異状手段は取れなくなってきている。

かといって経済が自律的回復を見せない中、金利を上げることもできない。

「中途半端な対応で事態の好転を期待する」という姿勢である。



・中国は自動車販売の伸びが鈍化し、国有鉄鋼大手の宝鋼集団は五月出荷鋼板価格を5パーセント下げた。同業の首鋼集団喪生産抑制を視野に入れたと報じられた。


中国のジレンマは深まっている。

不動産バブルとインフレ対策として金利を上げねばならず(これから更に数回の引き上げが必要と言われている)、しかし金利引き上げは景気を抑制することになる。

国内景気の鈍化傾向がはっきりする中で、更に金利を上げ続けなくてはならないジレンマは更に深くなっている。


しかも国民の不満対応として大幅な賃上げ政策を取っている[取らなければ共産党批判が高まる]。賃上げは当然インフレ要因となる。


中国に関しての新たな懸念。

報道によれば恩家宝首相が

「中国でうそを言う勢力が二つ現れている。」と述べた。

首相に影響力を与えるうるのは「共産党内の恩家宝以外の別のグループまたは軍部」しかない。

更に米国が”中国では最近軍に対して文民統制が取れているのか懸念している”という趣旨の内容が報じられた。


最近のヒステリックで国際的非難を考慮しない、民主活動家の強制連行等の動きを見ると、軍部と共産党の一部が一人歩きし始めている可能性も考えられる。


・ではこのインフレの本格化の引き金を引くのは何か。

最も確率が高いのは、

温暖化に伴う洪水、干ばつ、台風規模の拡大を典型とする世界の異状気象→農業被害→食糧不足、価格上昇[投機マネーによる増幅]

ー食糧価格上昇が温暖化に伴う構造的要因という共通認識が浸透し、大規模な資金シフトが起こる。


食糧インフレが構造的という認識が進み金利上昇、一部でスタグフレーション(不景気下のインフレ)。


例年並みの異常気象でも、インフレ対処[金利引き上げ]と景気刺激[金利引き下げ]のバランスを取ることができなくなり、景気悪化はさけられないと思われる。


・日本の経済運営はまさにNARROW PATH(狭い道)である。

これが日本国債暴落を避けうる最後の改革の機会となると思われる。

おそらくもう一回はない。

(ここからは次回です)



新興国の成長鈍化の兆し(これも主要因はインフレ)と世界的インフレ傾向が現在の経済トレンドを形成している。


ウオッチすべきは①中国景気の停滞、不動産バブル崩壊②米国景気の自律回復のレベル③日本のラストチヤンスとしての構造改革が進展するか。失敗すれば国債の暴落の現実的可能性生じる。



・格付け会社S&P米国国債引き下げ方向の評価。


・EUと中国等新興国は景気よりインフレ対応を優先して金利引き上げ。

主要国でインフレ対応より景気刺激を優先して金融緩和政策をとり続けているのは米国と日本。


・米国が6月に金融緩和策を終焉させるのかどうかに市場は注目。

確率は5分5分か。

米国でも景気の立ち直りは緩やかだが、インフレ対応はその比重を高めつつある。


・新興国のインフレ対応に伴う金利上昇により、景気の鈍化傾向が明確になりつつある。中国はインフレ率は5パーセント(目標4パーセント)をこえ、ベトナムは17パーセントを越えた。


(分析)

中国では銀行金利が物価上昇率に追いつかず、銀行に預ければ資産が目減りする状況であり、実物商品が買いあさられている。それが更にインフレをもたらすという悪循環である。


更に『ジャスミン革命』の影響を抑えるため内陸部の所得を増やす必要があり、政府主導で賃金の半ば強制的上昇が続いている。中国では人件費上昇と資源高がインフレ要因となっている.


更に中国の政治経済の危機はステージを変えつつあると思われる。

最近の中国共産党のヒステリックな思想、宗教、人権運動弾圧は共産党の強さの反映ではなく、『共産党の恐怖の表れ』である。


中国で起こっていること。中国が更なる経済発展を維持するには、一段の市場原理の徹底が必要である。


市場原理の徹底の最大の障害は中国共産党の特権であることが見えてきつつある。経済発展の障害は歴史の力で取り除かれる。共産党幹部はそれを感じてとって恐怖心を抱いているのである。


思想弾圧強化と賃金上昇という「あめとムチ」で「共産党の危機」を乗り越えようとしている。


金利の引き上げと賃金上昇は目先景気抑制要因である。現在7パーセント成長を目指しているが、7パーセントを切るようなことになれば失業者があふれる。


政府は広範な失業者を生み出すことを最も懸念している。

綱渡りの政策運営を行っているわけである。


綱渡りが成功するか否かを決定づける鍵は『インフレ』である。


(続く)