以前
「なぜ、バロック・オペラが嫌いなのですか?」と質問されたことがあり、腰を抜かしてしまいました。私はバロック・オペラだけ聴き続けても構わないぐらい、このジャンルが好きなので。イタリアやフランスだけでなく、ドイツ語だとテレマン大好き(《ミリヴァイス》とか)。スペイン語の初期の作品も大好きです。英語は勿論パーセルの作品で。

私がオペラに興味を持ち始めたころ、ラモーの大々的な復活劇が始まっていて、ジェシー・ノーマンのフェードル(《イポリートとアリシ》)など、映像で何十回と観たものです(フランスでテレビ放送された映像のヴィデオテープを日本に送ってもらって)。you tubeで検索されたら出てくる映像かもしれません。ドレスの色調もそれは上品で!

また、ラモーのオペラDVDの曲目解説もたくさんやらせてもらいました。涙が出るほど嬉しかったです。優れた映像を、じっくりと解説出来るので。

NHK-FMの『海外オペラアワー』(今では『オペラ・ファンタスティカ』)でも、ずいぶん、バロックものを担当させてもらいました。モンテヴェルディの《ウリッセ》、リュリの《アティス》、ロッシの《オルフェオ》、カヴァッリの《ジャゾーネ》、ヴィヴァルディの《オルランド・フリオーソ》、ヘンデルの《アリオダンテ》etc.

最近ではこの放送枠でヴィンチの《小舟に乗った恋人たち》を解説しました。手書き譜を読みながら解説文を書いたので、非常に時間がかかりましたが、出演者たちの活気がみなぎった歌に励まされたものです。

この《小舟》もそうですが、バロックものの場合、「何かしらの版ひとつで良いから、楽譜が手に入るだけ、まだまし」と思いながら解説を書くことになります。そこが19世紀以降の作品とは違いますね。「何かしらの版ひとつ」というのは、バロック期の作曲家たちは自分で書いた楽譜とコピイストの写譜を携行しつつ、各地の歌劇場に呼ばれて公演をしていたので、初演時とは違う歌手の能力を活かした「別アリア」を書くことが多く、結果として、異稿が多いのです。それを全部揃えるのは無理ですから、一つでも楽譜が手に入れば、それをもとに解説をやらせて頂くということです。

なお、楽譜があっても大変な作品もありました。ラモーの《ゾロアストル》の批判校訂版の楽譜を作った人は、「昔と今ではピッチが1音分違うから、校訂版の楽譜を1音ずらして、耳に聴こえる音程と目で読む音程を同一化させよう!」と考え、本当にそうしてしまったからです。天下の奇版と言っても良いかもしれません。こちらとしては、音がずれることに慣れているだけに、ずれてないことを却って不思議にも思いました。笑い話のような本当の話です。


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北陸地方の震災の義援金について、新しいお知らせが出ていました。

https://www.jrc.or.jp/domestic_rescue/2024notoearthquake.html

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WCARS(一般社団法人国際総合芸術研究会)のブログです。ご参考まで。
https://ameblo.jp/2022wcars/