以前、パリのプチ・パレで「オペラ・コミック座の歴史展」が開催されていて、偶然、その時期に滞在していたので、行って、図録も買ってきました。

ビゼー、ドビュッシー、ブリュノーなどの自筆譜を眺められたのは、本当に貴重な体験でした。ビゼーは読みやすかったです。かっちり書いてありました(が、赤鉛筆でばっさり消したりも)。

手書きの譜面といっても、「作曲者の自筆稿」と「コピイストの書写の譜面」があります。

コピイストの書写の譜面の一例を、手持ちの資料からご紹介。



こちらは、以前、日生劇場さんから頼まれた曲目解説の際に、参照した筆写譜です。
19世紀のものだから、まだまし。18世紀になるともっと大変。ぐっちゃぐっチャと揺れたような音符の書き方をしていたりします。

でも、コピイストは専門家だからやはり綺麗ですね。

ただし、このページは、序曲の一部なので、歌詞は載せられていません。私が参照したページは「歌詞がどうなっているか?」も知る必要があったので、レチタティーヴォの部分をしっかりと確認して原稿化しました。

ちなみに、こういう手書き譜で、作曲家の自筆であれ、コピイストの書き写しであれ、「歌詞」が乗っかると、結構なミスが出ます。もしくは、「読みにくい、ほぼ読めない」事態も。

ヴェルディはわりと、歌詞の書き写しの際に混乱したようで、そういう箇所はクリティカル・エディションの楽譜を買うと、校訂者の手で詳しく説明されています。

チェチーリア・バルトリ、フィリップ・ジャルスキー、ナタリー・シュトゥッツマンといった名歌手たちが、「世界初録音」のアリアをたくさん音源化していたりしますが、彼らがそれを出来るのも、こういう「手書きの譜面」を自分でじっくり読みこんで、良い曲を拾い出すという、とてつもなく煩瑣というか大変な仕事を自宅でやっているからなのです。もちろん、指揮者や音楽学者の協力も時々はあるそうですが、私が彼ら彼女らから聞いたのは、「とにかく自分で見つけ出す」という姿勢でした。

バルトリさん曰く「カストラートの為のアリアって、譜面を眺めてその場で口ずさんでゆくだけで分かるんですよ。女声の為の曲とは違って、全般的に『音域が高いの』ね。もう、本当に、すぐ実感するの。『たっかいなー!』って」

ソプラノのコロラトゥーラで超高音域が連発される曲とは違って、「全体的に高い」のがカストラートのための曲作りのようです。ご参考までに。



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北陸地方の震災の義援金について、新しいお知らせが出ていました。

https://www.jrc.or.jp/domestic_rescue/2024notoearthquake.html

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WCARS(一般社団法人国際総合芸術研究会)のブログです。ご参考まで。
https://ameblo.jp/2022wcars/