このほど、サン=サーンスのオペラで世界初録音の一組が出て、日本語版の解説を書かせて貰いました。

ご依頼があったとき、「楽譜は持っているから。締切日までスケジュールは・・・」と5秒ほど考えて、お引き受けしました。届いた音源サンプルと楽譜を照らし合わせて、演奏の素晴らしさに心痺れました。悲劇が非常にスピーディーに、まっしぐらに展開してゆくのです。そこが悲しい一作です。

楽譜が手元にないと、曲目解説は書けないのです。以前、日本語オペラの世界初演の際など、プログラム解説を頼まれて、締切日の前日に第3幕の楽譜が届いたことがありました。ひと晩で読んで、原稿完成です。「締め切り日までに第3幕が来なければ、第2幕までしか解説出来ない」と思いながら、「こんなスリリングなこと、19世紀も20世紀もあっただろうし・・・」と感じていました。

さて、



この2冊の楽譜のうち、左側が所蔵番号010番、右側が所蔵番号011番。今回、世界初録音となったのは、右側の一冊でした。

所蔵番号011番ということは、何十年も前に買った楽譜です。欧米のどこかで手に入れたのです。

楽譜を持っていないとオペラ研究家の仕事はできないので、いつ、その仕事が来るか分からないまま、楽譜を買い続けることになりますが、この011番や010番(こちらはまだ、蘇演されていなくて、音源や映像のソースも見当たりません。そのうち世界初録音になるかもしれません)に関しては、今の仕事を始める前、サラリーマン時代の初期ぐらいに買ったのだと思います。番号が若すぎるから。でも、買っておいて何十年ぶりで、遂に役に立ちました。

ところで、この011番の解説依頼を頂いて、とても貴重な経験と反省をしました。

数か月前、朝日カルチャーセンターさんの講演会で、コントラルトという女声の一番低いパートの話になったとき、「フランスからは、たまにコントラルトが出るんですが・・・ナタリー・シュトゥッツマンさんを代表格に・・・フランス・オペラで『コントラルト』の声域指定をしたオペラの役柄をいますぐ思い出せないんです。数少ない声種だから、指定すると歌える人が出てこないということなのか、フランス人がコントラルトにあまりこだわっていないのか、そんなに好きでもないのか?・・・」

こんな風に解説させて貰った講演会から数日後、今回の、世界初録音の音源の解説依頼を受けました。

それで楽譜を久々に開いてみたら、なんと、コントラルトの声域指定が載っているわけですよ。すっかり忘れていました。



こんな風に、「もっと勉強しろ」と言われることが毎日です。何か勘違いや曖昧なことを発言したりすると、すぐ、それを正すような情報が入ってきます。

今回の場合は、「もっと勉強しろ!」とサン=サーンスの魂から発破をかけられたのかもしれません。

次の出張時には、今日たまたま仕事をしたカルメル会修道女たちの墓所、それから今回のサン=サーンスの墓所は、最優先で花を供えるつもりです。両方とも、これまで何度も墓参してきました。仕事があるたびに報告に行くわけです。

でも、日本語で話しかけているから、魂には届いていないかもしれません。供える花はさすがに、万国共通で分かるでしょうが。

そうそう、プーランクの墓にも。

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北陸地方の震災の義援金について、新しいお知らせが出ていました。

https://www.jrc.or.jp/domestic_rescue/2024notoearthquake.html

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WCARS(一般社団法人国際総合芸術研究会)のブログです。ご参考まで。
https://ameblo.jp/2022wcars/