《蝶々夫人》のピアノ伴奏ハイライト上演に伺ったら、主演のソプラノさんとピアニストさんが格別の出来栄えを示してくれました。

私は、その会場ではなるべく後ろに座らせて頂くよう、広報の方にお願いをしています。声の響きをしっかり聴きとるには、その方が良いと思いました。つまりは、あまり大きくない会場です。

しかしながら、この日の主演者さんの歌声は、こちらの耳が痛くなるほどに迫力あるもの。

ピアノの表現力にもびっくりさせられました。なんの疑問も感じないのです。これまで何度も聴いてきたピアニストさんですが、今日はまた一段と集中されていました。

カーテンコールに出てこられたピアニストさんは涙ぐんでおられました。

それだけ全力投球されたからこそ、あの出来栄え、とこちらも納得です。

ソプラノさんの方は、以前インタヴューさせて貰った折に、「スポーツ少女でした」という話を詳しく伺いました。

なればこそだろうか?声の体力がずば抜けていました。

発音の点で、私が毎回注目するあるポイントもしっかりとその通り歌われていました。

帰り道、

「心、かな?」

と一瞬、独り言が口をついてでました。

心もしくは意欲、責任感、姿勢・・・

いろんなことを思いながら、帰宅しました。

そういえば・・・以前、ある高名な方が「ルネ・フレミングと、他の歌手のどこが違うのでしょうか?」という質問をされ、私は鸚鵡返しに「心、だと思います」と答えたのです。

25年ぶりにロッシーニの《アルミーダ》に挑んで映像を遺すって、ファイト、闘志以外の何物でもないですね、そういうお話をさせて頂きました。

ルネ・フレミングについては、発音が甘いとよく言われます。だから、歌曲の現場では辛口の批評を受けることが多い。

私も、歌曲ではないですが、彼女が歌ったケルビーニの《メデ》のディルセ役のアリアを聴いたとき、「言葉が全然聴き取れない」ことに啞然としたものです。

でも、そのディルセのアリアはものすごく難しいもので、声のテクニックの面では、抜群の出来栄えになっていました。「あの軟らかい声でこのコロラトゥーラの精度!」と思ったものです。油を水のように操ると言えば良いか?以前もこのブログでその歌を紹介しました(ちなみに、こういう曲をピアノ伴奏したら、背筋もシャキッと伸びますね)。



ところで、先ほど名前を出したロッシーニの《アルミーダ》ですが、全曲を歌い切ることは至難の業です。アリアや重唱を上手く歌える歌手さんは居ても、全曲を舞台で歌い切るための「声の体力」を保持できない場合が多いのです。

そのオペラで、フレミングは2回、成功を収めました。続けて2回の成功ではなく、25年の時を隔てて。

たぶん、彼女は引退後、もっと評価されるかもしれない。

一方、今日の《蝶々夫人》を歌ったソプラノさんには、これからの長いキャリアが望めそうだから、なおさら、声の力を消耗することなく、歌い続けて欲しいと願います。



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北陸地方の震災の義援金について、新しいお知らせが出ていました。

https://www.jrc.or.jp/domestic_rescue/2024notoearthquake.html

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WCARS(一般社団法人国際総合芸術研究会)のブログです。ご参考まで。
https://ameblo.jp/2022wcars/